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2016/04/18

異次元のフレーズ発想力〜ジェフ・ベック

Truth

 

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ジェフのベック(「ベック」だけだと1990年代にデビューした『メロウ・ゴールド』や『オディレイ』の人がいるので紛らわしい)の独立後のソロ・アルバムでは、嫌いだという人もいるらしいんだけど、僕はやっぱり『ブロウ・バイ・ブロウ』が一番好きだなあ。『ワイアード』よりも断然こっちだ。

 

 

『ブロウ・バイ・ブロウ』は1974年録音75年発売。セカンド・ソロ・アルバムということになっているけれど、ファーストなんじゃないの?これ以前にソロ・アルバムが一つあるのか?と思って調べてみたら68年の『トゥルース』がそうらしい。でもそれはジェフ・ベック・グループじゃないのか?

 

 

1968年の『トゥルース』はヴォーカルがロッド・ステュアートでベースがロニー・ウッドだから、やっぱりこれはジェフ・ベック・グループだよなあと思ってさらに調べてみると、ジェフ・ベック・グループとして正式発足したのは次作69年の『ベック・オラ』かららしい。でもメンバーは事実上同じだよね。

 

 

メンバーもドラマー以外は全員同じだし、内容的にもどっちもほぼ完全にブルース・ロックで、だから僕にとっては『トゥルース』はやはりジェフ・ベック・グループの第一作目なんだなあ。まあどうでもいいようなことだけど。それら『トゥルース』と『ベック・オラ』では僕は前者が好みだ。

 

 

フル・アルバムとしてはヤードバーズ脱退後初の作品である『トゥルース』。これは昔は本当によく聴いた。大好きなレッド・ツェッペリンのファーストと印象的にほぼ全く同じで、実際どっちにもマディ・ウォーターズの「ユー・シュック・ミー」(ウィリー・ディクスン作曲)が入っているからなあ。

 

 

ジェフ・ベック『トゥルース』の録音は1968年5月。ツェッペリンのファーストの方は同年9/10月録音。リリースも『トゥルース』の方が先だけど、同じ曲をやっているのは全くの偶然らしい。ジミー・ペイジが「ユー・シュック・ミー」をチョイスした時ジェフ・ベックが録音したとは知らず、後でかぶったと知ったようだ。

 

 

それでジミー・ペイジはしまった!と後悔したらしいんだけど、後の祭りだったようだ。でもこういうことは、当時のUKブルーズ・ロック勢はだいたいみんなシカゴ・ブルーズをベースにしていて、マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフなどのナンバーをたくさんやっていたから、偶然というよりある種の必然だった。

 

 

もっともその「知らなかったんだ」「偶然だったんだ」というペイジの言葉は信じがたい面もある。というのも録音が約半年早いジェフ・ベック・ヴァージョンの「ユー・シュック・ミー」でもオルガンを弾いているのはジョン・ポール・ジョーンズだからだ。

 

 

ってことはツェッペリンでこれをやろうとペイジが思い付いた時は確かに偶然だったんだろうけど、メンバーにそれを告げていざ録音となった際には、ジョン・ポール・ジョーンズはエッ?と思ったはずで、だからペイジになにか言ったんじゃないかなあ。だからこれは知らなかったということに「しておきたい」ということなんだろう。

 

 

僕は高校生の頃からの熱心なツェッペリン・リスナーなもんだから、やはり思い入れがあるのは彼らのファーストの方だけど、今聴直してみるとジェフ・ベックの『トゥルース』の方がほんのちょっぴり好きかもしれない。取っ散らかっているような気がするし、ヴォーカリストの技量も似たようなもんだろうけど、ギタリストの腕とコクみたいなものが違うもんね。

 

 

それにジェフ・ベックの『トゥルース』はブルーズ・ロックばかりでもなく、A面ラストに「オール・マン・リヴァー」やB面トップに「グリーンスリーヴズ」や三曲目に「ベックズ・ボレロ」なんかがあって、それらも昔はどこがいいのか分らなかったけど、今聴くとなかなか面白いように感じるんだなあ。

 

 

それら三曲のうち「ベックズ・ボレロ」は『トゥルース』本体の録音よりも二年も前に録音されていて、シングル盤で発売されているギター・インストルメンタル。元々ヤードバーズ在籍時代にアイデアがあって、その頃既にレコーディング・セッションがはじまっていたらしい。モーリス・ラヴェルの有名な「ボレロ」によく似ている。キューバの歌曲スタイルの一つボレーロとは関係ない。

 

 

また「オール・マン・リヴァー」は僕らジャズ・ファンならよく知っている、ジェローム・カーンが1927年に書いた古い曲。いろんなジャズ系のポップ・ヴォーカリストがその頃からたくさん録音している。大学生の頃はビング・クロスビーで愛聴していた。今は一枚もCDでは買っていない歌手だけどね。

 

 

「オール・マン・リヴァー」はジャズ系の歌手だけでなく本当にいろんな人が歌っていて、そのなかにはレイ・チャールズやスクリーミング・ジェイ・ホーキンスなどもいたりするんだけど、この曲の話をはじめるとこれまた長くなってしまい、ジェフ・ベックとなんの関係もなくなるのでやめておく。

 

 

もう一曲「グリーンスリーヴズ」はお馴染み英国の伝承バラッドで、この名のブロードサイド・バラッドは16世紀から存在する。これも実にいろんなミュージシャンがやっていて、ジャズマンによるものだとジョン・コルトレーンのヴァージョンなども有名なはず。実を言うとさほど好きな曲ではない。

 

 

そんな具合で今聴くとかなり面白い『トゥルース』なんだけど、これの面白さがブルーズ・ロック的側面以外は分らなかった時代には、やはり最初に書いたように『ブロウ・バイ・ブロウ』こそがジェフ・ベックでは最大の愛聴盤だったし、先に聴いたのもそっちだった。『ブロウ・バイ・ブロウ』はロック好きの弟がレコードを買ってきたもの。

 

 

その弟が買ってきた日本盤のタイトルは『ギター殺人者の凱旋』になっていた。原題が『Blow By Blow』だからなんだこりゃ?と思ったんだけど、後で知ったらアメリカでのこのアルバムの宣伝文句 “The Return of Axe Murderer” を直訳したものだった。

 

 

念のために書いておくと ”axe” とはギターの隠喩でしばしば使われる。だから “Axe Murderer” は「ギター殺人者」になるわけだけど、大学生の頃はこの隠喩を知らなかったので、どうして斧がギターになるんだ?と頭の中にハテナ・マークしか浮んでなかったんだなあ。恥ずかしい。

 

 

さてそのロック好きの弟が買ってきた『ギター殺人者の凱旋』。この時だけなぜだか弟がジャズ・ファンである兄の僕と一緒にまずは最初に聴きたいと言出して、それでリヴィングのオーディオ装置の前で並んでレコードをかけたのだった。今考えたらこれはジャズ・ロック作品ともされるせいだったからなのかもしれない。

 

 

でも一回目は弟と一緒に並んで聴いた『ブロウ・バイ・ブロウ』には、当時の僕はジャズ・ロックというかジャズ的なニュアンスはほぼ全く感じなかった。今聴いても薄いように思う。普通のいや一流のロック・ギター・インストルメンタルじゃないかなあ。その時から愛聴盤なのでなにか感じているのかもしれないが。

 

 

弟と一緒に聴いた時は、僕はジェフ・ベックの名前はジミー・ペイジ関連で知っていただけ。ヤードバーズ時代のギタリストとしてのペイジの前任者で、なんでもエリック・クラプトンの後任としてペイジに声がかかったらしいが、彼が無理だったのでジェフ・ベックを推薦したとかなんとかそんな話だけ。

 

 

だから演奏そのものは全く聴いたことがなかったので、『ブロウ・バイ・ブロウ』がジェフ・ベック初体験で、だからこれはビックリしたなんてもんじゃなかったんだなあ。なんて上手いギタリストなんだと。全曲インストルメンタルだから、彼のギター・ヴァチュオーゾぶりが非常によく分るよね。

 

 

ギターのフレイジングの多彩さといい、様々なエフェクターを用いてのサウンド・カラーリングの変化といい、どの曲も素晴しいの一言。おそらく『ブロウ・バイ・ブロウ』中それが一番よく分るのが、A面ラストの「スキャターブレイン」だろうなあ。おそらく僕以外のファンも同意見なんじゃないだろうか。

 

 

ある時期以後現在までのジェフ・ベックは、どういう理由からか知らないがピックを使わず指で弦を弾くようになっているのだが、「スキャターブレイン」をやる時だけは今でもピックを使うらしい。そうじゃなかったらいくら達人ジェフ・ベックでも弾きにくいだろうことは素人の僕でも分る。

 

 

B面一曲目の「哀しみの恋人達」(コーズ・ウィーヴ・エンディッド・アズ・ラヴァーズ)もかなり好き。スティーヴィー・ワンダーの書いた曲。スティーヴィーが元々はジェフ・ベックのために書いた「迷信」をモータウンに反対されジェフ・ベックが当時録音できなかったのが、これを提供した遠因らしい。

 

 

しかし「悲しみの恋人達」、最初のテーマ演奏時に一瞬クリーン・トーンにしてすぐにまた戻すんだけど、あれ一体なんのためにやっているんだろうなあ?昔からあれだけが『ブロウ・バイ・ブロウ』のなかで必然性が感じられないプレイで、不思議なんだよなあ。

 

 

書いたようにこのレコードを最初は弟と一緒に聴いたのだが、その時アルバム・ジャケットを見て僕はB面二曲目の「セロニアス」というのがいいかもしれないぞと言うと、弟は「兄ちゃん、知らんのになんでそんなこと分るんや?」と訝しがったが、単にあのジャズ・ピアニストの名前を連想しただけだった。

 

 

聴いてみたらその「セロニアス」がなかなかいいので、弟の僕を見る目が少し変ったみたいだけど、ホントなんの根拠もない単なる連想だったので(苦笑)。ジェフ・ベックの曲の方は「Thelonius」、ジャズ・ピアニストの方は Thelonious とスペリングも違うから、もちろん見当外れだ。

 

 

その「セロニアス」ではスティーヴィー・ワンダーがクラヴィネットを弾いている。当時も今もどこにも名前がクレジットされていないのはどうしてなんだろう?そのクラヴィネットのおかげもあってかなかなかファンキーで好きなのだ。その他ビートルズ・ナンバーのレゲエ・アレンジもある。

 

 

フィル・チェンのベースもイイ。例のロッド・ステュアートの「ホット・レッグズ」のベースの人だから相当に好きだし、またマックス・ミドルトンのキーボード、特にフェンダー・ローズも大好き。次作『ワイアード』でも弾いているけど、あれには僕にはイマイチなヤン・ハマーもいるからなあ。

 

 

また『ブロウ・バイ・ブロウ』は今年亡くなったジョージ・マーティンのプロデュース。何曲かでストリングスなどをアレンジ・指揮してもいて、特にアルバム・ラスト「ダイアモンド・ダスト」での仕事ぶりは見事だ。ともかくやはりジェフ・ベックというギタリストのフレイジング発想力は群を抜いているね。

 

 

例の1983年のARMSチャリティー・ライヴ・コンサートでは、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジのヤードバーズ三人衆が、コンサート・ラストの「タルサ・タイム」と「レイラ」で勢揃いして三人が代る代る弾くんだけど、ジェフ・ベックだけがなんじゃこりゃ?一体全体どこからこんなフレーズが湧出てくるんだ?というような異次元のプレイぶりで一人突出しているもんなあ。

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