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2016/04/26

<モンキー>とクラーベ

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O.V. ライトの『エイト・メン・アンド・フォー・ウィミン』の10曲目「モンキー・ドッグ」。これのリズムはどう聴いてもいわゆるボ・ディドリー・ビートすなわち3−2クラーベなのだが、O.V. の残した録音でこんなのは他にないはず。

 

 

 

O.V. といわずいわゆるサザン・ソウル歌手の歌った曲でこういうボ・ディドリー・ビートを使ったものって他にあるのだろうか?僕はソウル・ミュージックの世界にはかなり疎いから知らないだけで他にもきっとあるんだろうね。「モンキー・ドッグ」は曲調全体もややふざけたユーモラスな感じだ。

 

 

「モンキー・ドッグ」というタイトルは、チャック・ベリーの「トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス」やスモーキー・ロビンスン&ザ・ミラクルズの「ミッキーズ・モンキー」やルーファス・トーマスの「キャン・ユア・モンキー・ドゥー・ザ・ドッグ」などを個人的には連想させるもの。

 

 

このうちチャック・ベリーの1956年チェス録音の「トゥー・マッチ・モンキー・ビジネス」は全然ボ・ディドリー・ビートではなく普通のロックンロール・ナンバーだ。この曲は初期ビートルズもカヴァーしていて『ライヴ・アット・ザ・BBC』に収録されている。それも普通のロックンロール。

 

 

スモーキー・ロビンスン&ザ・ミラクルズの「ミッキーズ・モンキー」を書いたのは例のモータウンの有名ソングライター・チーム、ホランド・ドジャー・ホランドで、ミラクルズがタムラに1963年に録音している。これはボ・ディドリー・ビートだ。

 

 

 

ルーファス・トーマスの「キャン・ユア・モンキー・ドゥー・ザ・ドッグ」はスタックスに1964年にレコーディングされたファンキー・ソウル。ボ・ディドリー・ビートとも言いにくい感じだけど、でもかなりラテン・フィーリングを感じる仕上り。

 

 

 

ルーファス・トーマスには有名な「ウォーキング・ザ・ドッグ」が1963年にあるし、69年には「ドゥー・ザ・ファンキー・チキン」があったりして、どっちもファンキーでユーモラスでちょっとふざけたようなフィーリングだよね。ドッグとかモンキーとかチキンとか全部そんな曲に付けられている。

 

 

ルーファス・トーマスは最初から最後までそういうのが持味の人だったからなんとも思わないけれど、O.V ライトなどサザン・ソウル歌手はやはりシリアスな感じがしていたから、そういう人の歌った曲に「モンキー・ドッグ」なんていうタイトルの曲があってユーモラスでボ・ディドリー・ビートなのは僕には意外。

 

 

以前米英大衆音楽におけるクラーベ(ボ・ディドリー)のリズムについて書いた際にも触れておいたけれど(https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-e7d0.html)、アメリカ黒人音楽でこのビートが使われるようになったのは1940年代末〜50年代初頭で、その後急速に全米に拡散して使われている。

 

 

だから1967年のO.V. ライトの曲にこのビートが使われていても不思議ではないはず。こういうラテンなビートやふざけたようなユーモラスな曲調とは無縁の人だと思っていけれど、そんなことはないというほどにボ・ディドリー・ビートはアメリカ大衆音楽の世界に浸透しているんだろう。

 

 

元々ドラッグ関係のスラングである<モンキー>といえば、ビートルズの『ホワイト・アルバム』に「エヴリバディズ・ガット・サムシング・トゥ・ハイド・イクセプト・ミー・アンド・マイ・モンキー」があるよね。雑多で多様な曲が入っているこのアルバムのなかでもやや異色で派手な曲だ。

 

 

あるいはローリング・ストーンズの1969年『レット・イット・ブリード』に「モンキー・マン」があって、こっちは別にユーモラスでもなければ彼らにとって異色でもない普通のロック・ナンバーだけれど、聴直してみたら歌詞内容はやはりドラッグと関係があるようなものだなあ。

 

 

僕が持っている音源で「モンキー」という言葉が曲名や歌詞に入るもので一番録音が早いものは、おそらくジミー&ママ・ヤンシーの「モンキー・ウーマン・ブルーズ」だ。もちろんかのブギウギ・ピアニストと女性ブルーズ歌手との共演だけど、何年の録音なのか書いてないし調べても分らないのが残念。

 

 

あるいは同じくブギウギ・ピアニストのクリップル・クラレンス・ロフトンの「モンキー・マン・ブルーズ」も持っていて、音だけ聴くとこっちの方がジミー・&ママ・ヤンシーの「モンキー・ウーマン・ブルーズ」よりも録音が古いような感じだけど、こっちも録音年などのデータが分らないんだなあ。

 

 

それらブギウギ・ピアニスト(と歌手)による二曲を聴直すと、どっちもドラッグというよりも直接的にはセックスに関係しているような歌詞内容だ。でもセックスとドラッグは大衆音楽の世界では密接な関係があるものだから、直接的にはセックスにしか言及していなくともドラッグにも関係していたかも。

 

 

キャプテン・ビーフハートの1980年作『ドク・アット・ザ・レイダー・ステイション』にも「メイキング・ラヴ・トゥ・ア・ヴァンパイア・ウィズ・ア・モンキー・オン・マイ・ニー」があり、曲名通りそのままセックスに関係した内容だね。ドラッグとどう関係あるのかは聴直してもちょっと分らない。

 

 

ローラ・ニーロがラベルとやった1971年の『ゴナ・テイク・ア・ミラクル』にもカーティス・メイフィールドが書いた「ザ・モンキー・タイム」(メイジャー・ランス)があって、これはセックスとかドラッグというのではなく単なるダンスの名称だ。「ダンシング・イン・ザ・ストリート」とのメドレー。

 

 

話が全然逸れるけれど『ゴナ・テイク・ア・ミラクル』は、ローラ・ニーロのアルバムのなかでは僕の最も好きな一枚。だって黒人リズム&ブルーズ・ナンバーばっかりカヴァーしていてグルーヴィーだし、持っている2002年のリイシューCDには大好きなキャロル・キングの「アップ・オン・ザ・ルーフ」もある。

 

 

ああいう『ゴナ・テイク・ア・ミラクル』みたいなアルバムなら普段はローラ・ニーロ不感症の僕でも楽しく聴ける。いろんな方々が素晴しいというローラ・ニーロは同じコロンビア所属だったマイルス・デイヴィスだって褒めているんだけど、これ以外のアルバムはどう聴いても僕にはちょっとなあ。

 

 

話を戻してイースト・ロサンジェルスのチカーノ・ロック・バンド、ロス・ロボスに「アイ・ワナ・ビー・ライク・ユー(ザ・モンキー・ソング」)」とか、スティーリー・ダンに「モンキー・イン・ユア・ソウル」とか、トラヴェリング・ウィルベリーズに「トゥウィーター・アンド・ザ・モンキー・マン」とかある。

 

 

それらもやはり全部ダンスの名称として<モンキー>を曲名に入れ、歌詞のなかにも出てくるような感じだ。ドラッグやセックスとどう関係があるのか聴直しても分らないけれど、全部ダンサブルな曲調だからやはりダンスの方なんだろうね。いわゆるモンキー・ダンスとは関係ないような。

 

 

また2015年に四枚組アンソロジーが出たのでそれを買って聴きまくったガーナのハイライフ・キング、E.T. メンサーにも「ザ・トゥリー・アンド・ザ・モンキー」という曲があるんだけど、これは別にドラッグでもセックスでもダンスでもないようだ。単に木に猿が登っているというだけかなあ。

 

 

また曲名に入ってなくても<モンキー>が歌詞に出てくる曲なら凄く多いからイチイチ挙げていくとキリがないというか憶えてなんかいられない。僕が瞬時に思い出すのはレッド・ツェッペリンの『プレゼンス』B面一曲目の「ノーバディーズ・フォールト・バット・マイン」に出てくる。

 

 

そんなこんなでE.T. メンサーを除き英語圏大衆音楽ではドラッグだったりセックスだったりダンスだったりする<モンキー>。ファンキーで激しくハードなダンサブルな曲調のものばかりだから、最初に書いたようにこれがボ・ディドリー(クラーベ)・ビートと結合しても全然不思議じゃないよね。

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