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2016/04/25

考え直せよベイビー

Unknown

 

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「リシンシダー・ベイビー」というブルーズ・ナンバーはエルヴィス・プレスリーで憶えた。エルヴィス・ヴァージョンではテナー・サックスがフィーチャーされていて、僕好みのいい感じだなあ。今聴いても大好きだ。

 

 

 

このロウエル・フルスン・ナンバー、上で貼ったのは1960年の『エルヴィス・イズ・バック!』のヴァージョンで、一般に知られているエルヴィス・ヴァージョンでは一番早い時期の録音。でもエルヴィスはこれ以前にサン・スタジオで1956年に録音しているらしい。それは発売されているのか?

 

 

1956年のサン・スタジオ・ヴァージョンの「リコンシダー・ベイビー」は、カール・パーキンス、ジェリー・リー・ルイスらいわゆるミリオン・ダラー・カルテットでジャム・セッションしたものらしい。う〜ん、凄く聴きたいぞ。もし発売されてるのであればどなたか教えていただきたい。

 

 

エルヴィスは1960年に「リコンシダー・ベイビー」を録音したあとの60〜70年代に、ライヴではかなり頻繁にこのブルーズ・ナンバーを歌っている。YouTubeでちょっと見てみただけでもいろいろと上がっている。これもなかなかいいね。

 

 

 

僕はエルヴィスの1960年『エルヴィス・イズ・バック!』でこのブルーズ・ナンバーを聴いたのではない。同じヴァージョンだけど、最初に聴いたのは『ウィ・ラヴ・エルヴィス』というベスト盤CDボックスでだった。どういうわけかそれが手許にちょっとしか残っていないので、もう詳しいことは分らない。

 

 

記憶がもう曖昧なんだけど、渋谷東急プラザ内にあった新星堂で買った『ウィ・ラヴ・エルヴィス』。確かCD三枚組が三つだったような。すなわち全部でCD九枚。ネットで調べてもなぜだか情報が全然出てこないので実態を確かめることができないけれど、日本のファンが選んだベスト曲集というものだったはず。

 

 

そしてその『ウィ・ラヴ・エルヴィス』ボックス・セットがCDで初めて買ったエルヴィスだったのは間違いない。記憶ではサン時代の録音も入っていたような気がする。CDで全九枚だから結構たくさんいろいろと聴けて楽しくて、これでエルヴィスという歌手の魅力をおそらく初めて理解した。

 

 

ベスト盤ボックスなんかと思われるかもしれないが、エルヴィスという人はデビューから亡くなるまで一曲単位で音楽を考えていた人で、LPアルバムを出すようになってからもシングル盤をたくさん発売しているしね。そうでなくたって『ウィ・ラヴ・エルヴィス』で惚れたという僕の実感は抜きがたい。

 

 

そういう個人的な思い出話はともかく、「リコンシダー・ベイビー」はもちろんロウエル・フルスンの1954年チェッカー(チェス)録音がオリジナルのロウエル自身が書いたブルーズ・ナンバー。ロウエルの書いたオリジナル・ブルーズ・ナンバーではおそらく最も有名なものだ。

 

 

 

どうです、最高だよね。CDでは二枚組の『ザ・コンプリート・チェス・マスターズ』の一曲目に入っているのを僕は愛聴している。その二枚組には「アイム・グラッド・ユー・リコンシダード」という続きものみたいな曲もあって笑う。

 

 

「リコンシダー・ベイビー」は1954年の発売後ビルボードのR&Bチャートで三位まで上昇しチャート内に15週とどまるという大ヒットになったので、それで続編をというおそらく会社側からの要求だったんだろう。あるいはロウエル自身の希望だったのか分らないが、それで創ったのが「考え直してくれてうれしいよ」だったんだね。

 

 

それくらいヒットした「リコンシダー・ベイビー」だからエルヴィスだけでなく実に多くの音楽家が取上げてカヴァーしている。ロバート・Jr・ロックウッド、ボビー・ブランド、リトル・ミルトン、マジック・サム、アイク&ティナ・ターナー、フレディ・キングといった米黒人ブルーズ〜R&B歌手はもちろん、エリック・クラプトンもやっている。

 

 

クラプトンの「リコンシダー・ベイビー」はあの悪評高い1994年のブルーズ・アルバム『フロム・ザ・クレイドル』にあるもの。ギターはロウエル・フルスンのオリジナルをソックリそのままカヴァーしている。例によってのクラプトンのガナリ声は感心しない。絶対エルヴィスの方がイイよね。

 

 

 

ロウエル・フルスンというブルーズマンについては僕はあまり熱心には聴いていないし、現在持っているCDも前述の『ザ・コンプリート・チェス・マスターズ』以外は、Pヴァイン盤『トランプ』とそれを含む『ザ・コンプリート・ケント・レコーディングズ 1964-1968』四枚組だけだ。

 

 

チェッカー(チェス)時代は1950年代でケント時代の前。ロウエル・フルスンはだいたい常に西海岸を拠点に活動していた人だけど、例の「リコンシダー・ベイビー」をチェッカーに吹込んだのはなぜかダラスでだった。この曲に入っているサックスはレイ・チャールズのバンドから借りたらしい。

 

 

サックスといえば以前書いたモダン・ジャズ・テナー奏者スタンリー・タレンタインはロウエル・フルスンのバンドで活動をはじめている。道理でタレンタインは泥臭いブルーズが得意なわけだよね。ロウエル・フルスンがサックス奏者を借りたレイ・チャールズだって1940年代にフルスンのバンドに参加している。

 

 

一般的にはロウエル・フルスンはケント時代のイメージが強い人なんだろう。特に僕がなぜだかこれだけ単独盤を持っている『トランプ』(と『ソウル』との2in1)なんかやっぱり最高だよねえ。特に一曲目のアルバム・タイトル曲はファンク・ナンバーに聞えるくらいだ。

 

 

 

リズムがこれはもうファンクなんじゃないの?1967年録音だからファンクをやっていても全然おかしくないもんね。ロウエル・フルスンの歌も歌というより語り・喋りみたいな感じでなかなか面白いよねえ。かなりモダンな感じだ。まあこれ一曲だけなんだけど。

 

 

こういうロウエル・フルスンの「トランプ」を聴くと、ブルーズとファンクは親子関係というかほぼ不可分一体というか音楽の本質としては全く同じようなもんだと分るよね。いまさらなにを当り前のことを書いているんだと言われそうだけど、ブルーズもファンクも大好きな僕には最高の一曲だ。

 

 

こういうロウエル・フルスンこそ最高だと実感はするものの、個人的な好みだけなら僕はチェッカー(チェス)時代の録音集の方が好きでよく聴くんだよね。大好きな「リコンシダー・ベイビー」を聴きたいという理由の他に、やはり僕はこういう生粋のブルーズ・ミュージックが好きなのかなあ?

 

 

そんなことを言っていると1999年に亡くなったロウエル・フルスンに、なにを言っているんだケント時代だってラウンダー時代だってそれ以外だってオレの吹込んだブルーズはファンキーで全部いいじゃないか、ちゃんと聴け、考え直せよベイビーと、草葉の陰から言われちゃうかもしれないけれどさ。

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