« 『サージェント・ペパーズ』は持上げられすぎだ | トップページ | マイルスとプリンスの知られざる関係 »

2016/04/07

White Beauty?

Sunrise_album

 

Mi0000051233









こんなブログ・タイトルだし、毎日の記事内容も殆どが黒人音楽関連だし、熱心な中村とうよう信者だし、僕はカントリーとかブルーグラスとかのアメリカ白人音楽は、とうようさん同様に嫌いなんじゃないかと思われていそうだよね。

 

 

実はそんなに嫌いでもなく、カントリーやブルーグラスなどもまあまあ聴くのだ。というかそういうのを聴かないとロックなどのことはよく理解できないんだろうと思う。つまり僕の場合はロックを積極的にどんどん聴くようになって、そうするとその中に白人音楽の要素がかなりあることに気が付いた。

 

 

例えばエルヴィス・プレスリーの初期サン・レーベルへの録音集。現在ではCD二枚組でコンプリートな形で聴けるけれど、あれなんか相当にヒルビリー(この言葉はもう使われないらしいのだが)の要素があることは黒人音楽ばかり聴いているリスナーでも分ることだろう。

 

 

サン時代のエルヴィスの最高傑作であろう「ザッツ・オール・ライト」もウッド・ベースのスラップが聞えるし、リズムを刻むのはアクースティック・ギターで、ドラマーなし、エレキ・ギターのソロはあるけれど実に素朴なヒルビリー・サウンドだよねえ。曲の形式はブルーズだから黒人音楽的というかそもそもアーサー・クルダップのカヴァーだ。

 

 

 

R&B歌手ワイノニー・ハリスの「グッド・ロッキン・トゥナイト」もサン時代にカヴァー録音(というかサン時代は全部カヴァーなんだけど)しているけれど、エルヴィスのをワイノニーのヴァージョンと聴き比べればもう真っ白けで、これでどこが「黒人みたいにR&Bを歌える白人歌手」なのか。

 

 

ワイノニー・ハリス→ https://www.youtube.com/watch?v=Xo9auUfitVA

 

 

 

全然違うよね。エルヴィスの歌い方は1954年時点での白人歌手としてはブラック・フィーリングがあるんだろうけれど、バックのサウンドはもう全然真っ白け。

 

 

サン時代のエルヴィスはどれもこれもこんな感じで歌っているのは全部黒人R&Bナンバーでエルヴィスの歌い方だけがちょっぴり黒いかなと思うだけで、サウンド全体は全然黒くない。それでもこれがさっき貼ったワイノニー・ハリスみたいなサウンドだったら売れなかったんだろうからね。

 

 

しかし1956年にメジャーのRCAに移籍すると、より黒さが増しているように感じるからよく分らない。というのはメジャー・レーベルの方がより多くの一般白人聴衆にアピールすべく腐心するはずだから。サン・レーベルはメンフィスのインディペンデントだ。

 

 

RCA移籍後第一作の「ハートブレイク・ホテル」などは強烈なエコーがかかっているせいもあってブルージーに聞えるせいか、もうどこをどう切取っても黒人音楽だとしか思えない。  これなら黒人音楽ファンにも好かれそうだよね。

 

 

 

実際以前お付合いのあった白人音楽大嫌いで熱烈な黒人音楽ファンの友人男性は、エルヴィスは「ハートブレイク・ホテル」だけならいいと言っていたもんね。しかしながらRCA移籍後で一番いいというかこの年しか聴けないとすら思う1956年録音でもかなりカントリーっぽいフィーリングは聞取れる。

 

 

ヒルビリーからの造語でロカビリーと呼ばれるそんな初期エルヴィスのカントリー・ミュージック要素に導かれいろいろとアメリカ白人音楽も聴くようになると、これが結構楽しいんだよね。手許にハンク・ウィリアムズの『オリジナル・シングルズ・コレクション』という三枚組ボックスがあって愛聴盤だ。

 

 

ハンク・ウィリアムズのその三枚組ボックスは米ナッシュヴィルのCDショップで見つけて買って帰ったもの。もちろん日本でだって普通に売っていただろうけれど、ナッシュヴィルで見つけて買ったというのがなにかこう因縁めいていていいじゃないか(←アホ)。

 

 

だってナッシュヴィルはカントリーなどアメリカ白人音楽のメッカだもん。18年ほど前に僕が旅行した時も食事をしたレストランではカントリー・ミュージックの生演奏バンドが入っていることが多かったし、そうでなくても街中を歩いていてもよくそんな音楽がどこからともなく聞えてきたもんね。

 

 

ザ・カントリー・ミュージック・ホール・オブ・フェイムにも行って楽しかった。そんなこんなでどうして行ったのかよく憶えていないナッシュヴィルでかなりカントリー・ミュージックに興味を持って、名前だけはよく知っていたハンク・ウィリアムズのCDボックスも買ってのめり込むようになった。

 

 

以前ストリング・チーズ・インシデントというブルーグラス系ジャム・バンドの話をしたことがある。彼らに興味を持ったのはその時書いたようにウェザー・リポートの「バードランド」を何度も繰返し録音しているからだけど、CDを通して聴くと彼らの超高度な演奏力に引込まれてしまったんだなあ。

 

 

カントリー(とちょっと違うらしいブルーグラスも含め)はアメリカ人の心の歌だという説がある。演歌が日本の心だとかいうのと同じくこの手の表現は信用しないことにしているんだけれど(大好きなものもたくさんある演歌はごく最近成立したもので「伝統文化」なんかじゃない)、カントリー・ミュージックは少なくともアメリカ大衆音楽の世界で抜きがたいエッセンスであることは確か。

 

 

カントリーがロックの重要な母胎にもなったというだけではない。ロックは白人音楽なんだろうけれど黒人音楽の粋みたいなソウル・ミュージックにだって白人音楽の要素が溶け込んでいるもんね。サザン・ソウル歌手キャンディ・ステイトンの代表曲「スタンド・バイ・ユア・マン」は元はカントリー・ナンバー。

 

 

あるいはメンフィスのサザン・サウンドの代表的なスタジオであるリック・ホールのフェイム・スタジオのミュージシャンだって全員白人で、彼らが多くの黒人サザン・ソウル歌手の伴奏をやった。もちろんある時期からのいわゆるフェイム・ギャングには黒人ミュージシャンが何人も加わっているけれどね。

 

 

こういうのは黒人音楽視点からの白人音楽ということだけど、白人カントリー・ミュージックそれ自体楽しい。アクースティック・ギター+ペダル・スティール・ギター+フィドル程度でドラムレス編成で歌うことが多く、ハンク・ウィリアムズの録音集だってだいたい全部そう。

 

 

ペダル・スティール・ギターの音を聴くと和田弘とマヒナスターズなどを連想する日本人が多いように思うけれど、僕が連想するのはセイクリッド・スティール以外では、ローリング・ストーンズの例えば「ファー・アウェイ・アイズ」などのカントリー・ナンバーでロン・ウッドが弾くペダル・スティールだなあ。

 

 

ボブ・ディランだってペダル・スティールやヴァイオリンをよく使っているよね。ディランの音楽にも相当な質・量のカントリー・ミュージックが混じり込んでいる。彼はよくナッシュヴィルで当地のミュージシャンを起用して録音するし『ナッシュヴィル・スカイライン』みたいなカントリー・アルバムだってあるし。

 

 

ハンク・ウィリアムズには「モーニン・ザ・ブルーズ」(Moanin’ The Blues)という曲があって、曲形式はブルーズでもなんでないしフィーリングとしても特にブルーズは感じないんだけれど、歌い方がちょっと面白いんだよね。

 

 

 

「ホンキー・トンク・ブルーズ」というタイトルの曲だってあるよ。これもブルーズではないけれどハンクの歌い方がやはり「モーニン・ザ・ブルーズ」みたいなちょっと声が裏返って震わせるような感じでちょっと面白いんだよね。

 

 

 

またハンクは「ジャンバラヤ」という曲のオリジネイター。ケイジャン料理について歌った曲(ジャンバラヤという料理は僕もガンボとともにニューオーリンズでよく食べた)だから、プロフェッサー・ロングヘアはじめニューオーリンズの黒人ミュージシャンもよくやっている。

 

 

 

しかしこんな記事タイトルをつけて白人音楽も好きだとかなんだかんだ言いながら、ハンク・ウィリアムズとかストリング・チーズ・インシデントとかの黒いフィーリングのあるのが好きなのか僕は(苦笑)。もちろんブラック・ミュージックに比べたら全然聴いていないのは確かだが。

« 『サージェント・ペパーズ』は持上げられすぎだ | トップページ | マイルスとプリンスの知られざる関係 »

音楽(その他)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: White Beauty?:

« 『サージェント・ペパーズ』は持上げられすぎだ | トップページ | マイルスとプリンスの知られざる関係 »

フォト
2023年11月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
無料ブログはココログ