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2016/05/08

激アツなツイン・サックスの奔流

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どっちも1970年代のマイルス・デイヴィス・バンドで活躍し、僕はそれで名前と演奏を知った二人の師弟関係のサックス奏者デイヴ・リーブマンとスティーヴ・グロスマン。彼らの良さが一番分りやすいのはおそらくエルヴィン・ジョーンズの二枚組ライヴ・アルバム『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』だろうなあ。

 

 

この二人のサックス奏者、リーブマンが師匠格なわけだけど、マイルス・バンドにはなぜかグロスマンの方が先に起用されている。1969年11月〜70年6月まで。リーブマンのマイルス・バンド在籍は72年6月から74年6月まで。このうちグロスマンの方のプレイは全然どうってことない。

 

 

グロスマンのマイルス・バンドでの演奏が聴けるスタジオ・アルバムは『ジャック・ジョンスン』と『ゲット・アップ・ウィズ・イット』の「ホンキー・トンク」一曲だけで、あとは一連のフィルモアものなどのライヴ・アルバムだ。それら全て当時はソプラノしか吹いていないが、まあダメだね。

 

 

フィルモアなどでのライヴ現場では実は結構テナー・サックスも吹いていたことが現在では完全盤で明らかになっているけど、それもちょっとなあ。テオ・マセロが編集で全面的にグロスマンのテナーをカットしてしまったのも納得できる内容でしかないもん。

 

 

その1970年当時のグロスマンは発展途上というかまだまだだったと思うのだ。なぜ先輩であるデイヴ・リーブマンの方を先にマイルスが雇わなかったのかちょっと不思議なんだけど、おそらくこれは先にリーブマンの方に声を掛けたんじゃないかと思う。参加できない理由があってグロスマンを推薦したのかも。

 

 

それが証拠に実際1972年にリーブマンを雇っているわけだ。マイルスは一度気に入った人はその時すぐに雇うのが不可能でも、なかなか諦めずしつこく追掛けて結局数年後に雇うということの多い人。有名どころでは1964年に雇ったウェイン・ショーターもその三年ほど前から声を掛けていた。

 

 

その当時のショーターはアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズに在籍していて、マイルスのご執心を知ったブレイキーが「マイルスはオレのところのサックス奏者を盗もうとしているぞ!」と警戒する発言をしている。だから1972年のリーブマンも似たようなものだったんだろう。

 

 

果して1972〜74年のマイルス・バンドでのリーブマンの演奏は素晴しく、といっても正規盤では彼の本領発揮の演奏が聴けるものが少ないんだけどね。『ゲット・アップ・ウィズ・イット』の「ヒー・ラヴド・ヒム・マッドリー」「カリプソ・フレリモ」でのフルートと『ダーク・メイガス』だけ。

 

 

リーブマンのマイルス・バンドでの初録音は『オン・ザ・コーナー』の一部になった1972年録音のセッション。だけどそこではまだまだという感じだなあ。リアルタイムでのマイルス正規盤でのリーブマンはそれら三つで全部だけど、ブートレグでなら73〜74年のライヴ演奏がかなりたくさんある。

 

 

1973年以後のマイルス・バンドではかなりいいリーブマン。というか69年からマイルスが死ぬ91年までの電化ファンク路線でのサックス奏者で唯一マシだと僕の耳に聞えるのはリーブマンだけで、彼以外はマイルス・ファンクにリード奏者は全く必要ないと思うほど。もっと長く在籍していたらなあ。

 

 

マイルス関係の話がちょっと長くなった。そういうリーブマンとグロスマンという師弟関係二人のサックス奏者が同時に聴け、しかも1972年9月録音という二人にとっても一番活きのいい時期のライヴ録音であるエルヴィン・ジョーンズの『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』は本当にいい。

 

 

エルヴィンの『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』ではリーブマンがテナーとソプラノ、グロスマンがテナーだけ。そして一部でフルートが聞え、それはクレジットはないがリーブマンに間違いない。双方が同時にテナーで絡み合う部分は、僕の耳ではどっちがどっちなのか判別がほぼ不可能。

 

 

そういうツイン・サックスの絡み合いというのも『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』の聴き所の一つだね。しかもこのライヴ盤はサックス二人+ジーン・パーラのウッド・ベース+ドラムスのエルヴィンというピアノ・レス・カルテット編成だから、余計にサックス二人のカラフルな絡みが面白く聞える。

 

 

サックス二人の音は右チャンネルと左チャンネルに振分けられているのでどっちがどっちなのか明記されていたら大いに助かったんだけど、まあしょうがないね。リーブマンが1946年、グロスマンが51年生まれだから、二人ともリアルタイムでコルトレーンを聴いている完全なるジョン・コルトレーン派。

 

 

生まれ年など知らなくたって『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』での吹奏ぶりを聴けば、二人とも完全なるコルトレーン・スタイルの持主であることは誰の耳にも明らかだろう。しかもそのコルトレーンのバンドで長年活躍したエルヴィンのバンドで吹くわけだから、ますます似ているように聞える。

 

 

あっ、待てよ、一曲目の「ファンシー・フリー」では右チャンネルからテナー、左チャンネルからソプラノが聞えるので、ソプラノを吹いているのはリーブマンだけというCD裏ジャケット記載のクレジットを信用すると、じゃあその後同じ左チャンネルから聞えるテナーもリーブマンなのだろうか?

 

 

ネット上の情報ではグロスマンもソプラノを吹いているという記載もあるんだけどなあ。まあいいや。アナウンスメントに続きはじまるその一曲目の「ファンシー・フリー」がなんだかちょっとラテン風なリズムで、エルヴィンがそんな叩き方をしていてなかなか面白い。特にスネアのリム・ショットが印象的。

 

 

 

「ファンシー・フリー」は21分もある長尺曲で、テーマをサックス二人の絡みで演奏したあとは、ソプラノ・ソロ(リーブマン?)、テナー・ソロと続く。二人の背後でラテン調で複雑なリズムを叩出しているエルヴィンのドラミングが素晴しい。一人のドラマーで創るポリリズムでは最高峰だね。

 

 

一人のドラマーが単独で叩出すポリリズムではエルヴィンが最高峰だというのはファンや専門家の間でもほぼ意見が一致していて、おそらく1960年代のコルトレーンもそれを痛感していたんだろう、それである時期以後エルヴィンに加えラシッド・アリを雇い、ツイン・ドラムス体制にしているもんね。

 

 

コルトレーンの場合その後エルヴィンが辞めてラシッド・アリ一人になるけれど、同時にライヴ・ステージでは、コルトレーン自身がサックスを吹いていない時には小物打楽器を手にしていたようだしね。コルトレーンが死んでしばらくしてみんなドラマー以外にパーカッショニストを雇うようになる。

 

 

コルトレーンの死後約二年1969年8月録音のマイルスの『ビッチズ・ブルー』にはドラマーもパーカッショニストも複数参加していて、リズムの革新であると同時に、ある意味コルトレーン的60年代(フリー・)ジャズの総決算・総括みたいな意味合いもあるようなアルバムなんだよね。

 

 

六曲目のクルト・ワイル・ナンバー「マイ・シップ」。これはCD二枚目三曲目のビリー・ホリデイ・ヴァージョンでも有名なフランク・シナトラ・ナンバー「アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー」と並び、このアルバムで二つだけのスタンダードな有名曲。リーブマンがフルートを吹く。

 

 

僕の場合「マイ・シップ」はマイルス+ギル・エヴァンスの『マイルス・アヘッド』で知った曲で、あそこでもマイルスのフリューゲル・ホーンがこの上なく美しかったけど、エルヴィンの『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』でのリーブマンのフルート吹奏も大変に美しく、それにグロスマンのテナーが絡む。

 

 

 

もう一曲のスタンダード曲「アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー」はテナーによる演奏。左チャンネルから聞えるので、前述の僕の推測が当っているとするとリーブマンか?最初無伴奏でしばらくテナー吹奏があり、その後リズム・セクションが入ってくる。ここではもう一人のサックスは絡まない。

 

 

 

「アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー」、リーブマンだという僕の推測が当っているとすれば、彼によるテナー・バラード演奏では白眉の一曲だね。最初原曲通りしっとりと出たかと思うと、途中からかなり熱を帯びてきて、若干フリーでアヴァンギャルドな雰囲気での演奏になるのも面白い。

 

 

いずれにしてもエルヴィンの誕生日である9月9日に演奏・録音された1972年の『ライヴ・アット・ザ・ライトハウス』。エルヴィンのポリリズミックなドラミングといい、激アツすぎるツイン・サックスの奔流ぶりといい、これ以上ない二枚組ジャズ・ライヴ・アルバムだね。合計二時間以上もたっぷり聴けるし言うことないよ。

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コメント

私も好きで、たまにこのCD聴きますが、グロスマンとリーブマンの区別が付きませんでした。ソプラノサックスを吹いているのがリーブマンであれば、私が好きなフレーズを連発するのは、リーブマンの方ですね。すっきりしました、ありがとうございます。

TTさん、そうは言ってもCDジャケット裏にソプラノはリーブマンだけと書いてあるから、そしてソプラノは左チャンネルからしか聞えないので、従って同じ左から聞えるテナーもリーブマンなんだろうと見当を付けているだけです。一部ネット上の情報ではグロスマンもソプラノを吹いているという記述もあるので分りませんよ。はっきり言ってスタイルだけからだと、同じテナーを吹いている時のこの二人は全然判別できないですね。

それはそうと、リーブマンとグロスマンが同時起用されている一番面白いアルバムは菊地雅章の『ススト」 ですね。

菊地雅章の「ススト」は良いですね。出だしが、なんとなくマイルスの「オン・ザ・コーナ−」に似てますよね。日野輝正のトランペットが良い味出してる記憶があります。またじっくり聴いてみます。

そうです、あれはモロ『オン・ザ・コーナー』なんです。日野皓正がコルネット(トランペットではありません、まあ同じようなもんですが)を吹のはアルバム・ラストの「ニュー・ネイティヴ」ですね。僕もあれが一番好きです。

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