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2016/06/27

ディラン一座の賑やかで楽しい興行

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以前書いたように、ボブ・ディランの一連のブートレグ・シリーズで出たライヴ音源で一番壮絶なのは1966年の『ロイヤル・アルバート・ホール』だろうけど、一番楽しくてよく聴くのは75年録音の『ザ・ローリング・サンダー・レヴュー』だ。これはまるでおもちゃ箱をひっくり返したような楽しさ。

 

 

<ローリング・サンダー・レヴュー>と呼ばれる1975年と76年のボブ・ディラン一座(まさに「一座」という言葉がピッタリ)によるライヴ・ツアーは昔からよく知られていて、かつてはそのライヴ・ツアーの76年セカンド・レグから、一枚物の『ハード・レイン』だけがリリースされていた。

 

 

『ハード・レイン』も楽しくて好きなんだけど、ローリング・サンダー・レヴューは伝説のようになっていて、いろんなミュージシャンがツアーに帯同し、バンドというより先に書いたようにまさに一座とでも呼ぶべき雰囲気の集団が賑やかな演奏を繰広げていたらしいと聞いていたからなあ。

 

 

なにかブートレグでは聴けたのかもしれないが、ボブ・ディラン関係のブートというのはザ・バンドとやった例の1967年の一連の地下室セッションと、その前年のやはりザ・バンド(ドラマーだけ違うけど)を従えての『ロイヤル・アルバート・ホール』しか興味がなくて僕は持っていなかった。

 

 

それら『ベースメント・テープス』も『ロイヤル・アルバート・ホール』も、今ではディランのブートレグ・シリーズの一環として公式リリースされているので、ブートは用無しになっている。そしてブート(があったのかどうか知らないが)では聴いていないローリング・サンダー・レビューも公式に出たというわけだ。

 

 

『ライヴ 1975:ザ・ローリング・サンダー・レヴュー』がブートレグ・シリーズの第五弾としてCD二枚組で公式リリースされたのは2002年のこと。これは本当に賑やかで楽しかった。一曲目「トゥナイト・アイル・ビー・ステイング・ウィズ・ユー」の出だしのいきなりのディランの声の張りが素晴しい。

 

 

このライヴ盤でのディランは本当によく声が出ている。僕は彼の公式ライヴ盤で聴いていないものもあるんだけど、僕が聴いたなかでは彼の声に一番張りと伸びがあると思うのが『ローリング・サンダー・レヴュー』だなあ。ああいう歌い方の人だからそんなに朗々とコブシを廻すことはしないんだけどね。

 

 

二曲目の「イット・エイント・ミー、ベイブ」では、リズムがちょっと面白い。ドラマーはハウウィー・ワイエスなんだけど、チャカチャカとなんだかちょっとラテン風のドラミングで、これ、1964年の『アナザー・サイド・オヴ・ボブ・ディラン』の収録曲が同じ曲かと思うほどの変貌ぶりだ。

 

 

どう聴いても断然1975年ヴァージョンの方が楽しくていいよね。出だしのちょっとチャーミングなフレイジングのエレキ・ギターを弾いているのは誰なんだろう?複数のエレキ・ギタリストが参加しているし、現に「イット・エイント・ミー、ベイブ」でも何本か聞えるし、僕の耳では判断できないんだなあ。

 

 

複数のエレキ・ギターの絡みも『ローリング・サンダー・レヴュー』の聴き所の一つだよね。クレジットされているのはT・ボーン・バーネット、ロジャー・マッギン、ミック・ロンスンの三人。三人ともいまだに僕はそれほどしっかりとは聴いていないからなあ。さらにスティール・ギター奏者もいる。

 

 

デイヴィッド・マンスフィールドの弾くそのペダル・スティール・ギターもなかなか面白い(彼はドブロ・リゾネイター・ギターやマンドリンも弾く)。ディランの音楽にペダル・スティールが入る時は必ずカントリー・テイストだ。アルバム中一番印象的なのが「アイ・シャル・ビー・リリースト」。

 

 

一枚目ラストの「アイ・シャル・ビー・リリースト」はディランとジョーン・バエズのデュエットで、二人がアクースティック・ギターで弾き語るだけでなく、それにベースとドラムスが付き、さらに誰だか分らないエレキ・ギターと、さらにデイヴィッド・マンスフィールドのペダル・スティールが入る。

 

 

そのペダル・スティールが絡む「アイ・シャル・ビー・リリースト」がチャーミングなんだよね。完全にカントリー・ナンバーになっていて、ザ・バンドの『ビッグ・ピンク』で聴けるような重たい感じ(あれも好きだが)ではなく一種の爽快な軽みがあっていい。歌詞内容は重い曲なんだけどね。

 

 

関係ないかもしれないが、いろいろある「アイ・シャル・ビー・リリースト」のなかで僕が一番好きなのが、例のボブ・ディラン30周年記念コンサート収録盤にあるクリッシー・ハインドがやったヴァージョン。カッコイイんだよなあ。

 

 

 

「アイ・シャル・ビー・リリースト」に至るまでに、一枚目終盤でアクースティック・セクションがあって、七曲目の「ミスター・タンブリン・マン」「シンプル・トゥウィスト・オヴ・フェイト」「ブロウイン・イン・ザ・ウィンド」「ママ、ユー・ビーン・オン・マイ・マインド」。どれもほぼ古い曲ばかり。

 

 

「シンプル・トゥウィスト・オヴ・フェイト」だけ1975年の『血の轍』からの曲だけど、それ以外は全部10年以上前のいわゆるフォーク時代の曲ばかり。このうち「ママ、ユー・ビーン・オン・マイ・マインド」は91年リリースの『ブートレグ・シリーズ Vo.1-3』で初めて世に出た曲だね。

 

 

その「ママ・ユー・ビーン・オン・マイ・マインド」も「アイ・シャル・ビー・リリースト」同様リズム・セクション+ペダル・スティールの伴奏付きで、ジョーン・バエズとのデュエット。これもカントリー・テイストで楽しくていいなあ。「ブロウイン・イン・ザ・ウィンド」以後の三曲は全部二人のデュエット。

 

 

それらリズム・セクションとペダル・スティールの伴奏が付いてカントリー風で楽しい、完全に変貌した過去曲二曲のバエズとのデュエット再演が、僕にとっては一枚目のクライマックスだなあ。そのアクースティック・セクションの前にスカーレット・リヴェラのヴァイオリンが入る二曲があるけどね。

 

 

スカーレット・リヴェラのヴァイオリンは二枚目でも入り、その二枚目の「オー・シスター」「ハリケーン」「コーヒーをもう一杯」「セイラ」の四曲の方がもっといいし、それら四曲こそが二枚目と言わずこの『ローリング・サンダー・レヴュー』二枚組では最大のクライマックスに間違いない。

 

 

それら四曲に入る前に二枚目でもアクースティック・セクションがあって、古い曲を弾き語りで披露している。そのなかではやはり『血の轍』からの曲である「タングルド・アップ・イン・ブルー」が新しい曲だけど、これもリズム・セクション付きだったのを、ディラン一人の弾き語りでやっている。

 

 

 

再びジョーン・バエズが登場し彼女とのデュエットで、しかもやはりペダル・スティールの伴奏が入る「ザ・ウォーター・イズ・ワイド」。これはスコットランド由来の古い伝承フォーク・ナンバー。いろんな人がやっているけれど、ここではペダル・スティールがやはりいいフィーリングを出している。

 

 

いよいよクライマックスである「オー・シスター」ではじまるセクションに入る前に、「プロテスト・ソングをやってくれ!」というヤジが聞える。ディランは「じゃあ君向けの曲じゃないね」と言って「オー・シスター」をはじめちゃうんだなあ。しかし1975年のアメリカでもまだこんなヤジが飛ぶんだねえ。

 

 

「オー・シスター」からの「セイラ」までの四曲は全部『欲望』からのレパートリー。『ローリング・サンダー・レヴュー』収録の1975年11月のライヴの前に既にスタジオ録音は終えていたらしいが、リリースはその翌年76年のセカンド・レグとの間だったということになる。『欲望』も大好きなアルバム。

 

 

1970年代ディランのスタジオ作では、熱心なディラン・ファンはみんな75年の『血の轍』を最高傑作に推すし、僕もその評価には全くなんの異論もないんだけど、僕にとっては次作76年の『欲望』の方が楽しいんだなあ。スカーレット・リヴェラが弾くヴァイオリンがなんとも魅惑的だしねえ。

 

 

『ローリング・サンダー・レビュー』でも、『欲望』からの数曲ではスカーレット・リヴェラがディランのヴォーカルと並んで主役級の大活躍。聴いていて楽しくてたまらない。特に七曲目の「ハリケーン」と続く「コーヒーをもう一杯」はいいなあ。『欲望』のスタジオ・ヴァージョンよりもいいんじゃないかなあ。

 

 

 

スカーレット・リヴェラが弾く『欲望』セクションが終ると、『ローリング・サンダー・レヴュー』は再び過去曲二つ「ジャスト・ライク・ア・ウーマン」「天国の扉」で幕引きとなる。後者ではやはりペダル・スティールも入ってそれがいい雰囲気だ。ディラン一座の賑やかな興行を締め括るには相応しい雰囲気だね。

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