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2016/06/26

コルトレーンのモンク・コンボ修業時代

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ユニークなオリジナル・ナンバーをたくさん書いたセロニアス・モンク。そのなかで僕が一番好きなのは「ルビー、マイ・ディア」と「クレパスキュール・ウィズ・ネリー」の二曲。前者は以前も書いたように初期ブルーノート録音に既にあるもので1947年に初録音。その後も繰返し録音している。

 

 

「クレパスキュール・ウィズ・ネリー」(ネリーとはモンクの妻の名)の方はいつ頃できた曲なのか分らない。ネリーとは1949年に結婚しているのでその前後なんだろうとしか推測できない。この曲の初録音は1957年6月で、同年にリリースされたリヴァーサイド盤『モンクス・ミュージック』に収録されている。

 

 

『モンクス・ミュージック』には「クレパスキュール・ウィズ・ネリー」だけでなく「ルビー、マイ・ディア」も入っているからかなり好きなアルバムなんだよね。コールマン・ホーキンス、ジョン・コルトレーンという二人のテナー・サックス奏者も参加しているし、ジジ・グライスのアルトも入る。

 

 

『モンクス・ミュージック』の「ルビー、マイ・ディア」ではコールマン・ホーキンスのテナーがフィーチャーされている。大好きなテナー奏者だもんなあ。ジャズ・テナー奏者としてジャズ初期から活躍する最古参の一人であるホークは、ビバップ以後のモダン時代にも対応した稀な一人だった。

 

 

ちなみにモンクのプロ活動の第一歩は1940年代半ばのコールマン・ホーキンス・コンボでのものだった。だからモンクにとってのホークは恩人であって、『モンクス・ミュージック』でホークを使ったのは、モダン時代にも対応しているという理由以外に恩返しの意味もあったのかもしれない。

 

 

「ルビー、マイ・ディア」は美しいバラードでトラディショナルな雰囲気だから、ホークが吹くのにはピッタリな一曲だ。音源を貼って紹介したいんだけどYouTubeで探してもそのヴァージョンは上がっていないみたいだなあ。残念。モンクがやった他のヴァージョンならいくつも上がってはいるんだけど。

 

 

『モンクス・ミュージック』の「クレパスキュール・ウィズ・ネリー」の方はしばらくモンクのピアノ演奏が続いた後ホーン群のアンサンブルが出る。ホーン奏者はアレンジされたアンサンブルを奏でるだけでソロは吹かず、もっぱらモンクのピアノだけがソロを弾く。ホーン奏者が入ったモンクのコンボ録音にはそういうのがかなりある。

 

 

『モンクス・ミュージック』の現行CDには「クレパスキュール・ウィズ・ネリー」の別テイクも入っている。それは「テイク 4/5」と記されていて、アナログ・オリジナル盤から収録されているマスター・テイクが「テイク 6」となっている。大好きな曲だから二つ聴けて楽しいけれど、どっちもあまり変らないなあ。

 

 

『モンクス・ミュージック』に参加しているジョン・コルトレーンは、1957年にマイルス・デイヴィスがファースト・クインテットを解散した後58年に再び参加するまで、モンクのコンボにレギュラー参加していた。この当時のライヴ録音は聴けるアルバムが少ない。僕の知る限りでは二つしかない。

 

 

一つは従来からあった『コンプリート・ライヴ・アット・ザ・ファイヴ・スポット・1958 ・ウィズ・ジョン・コルトレーン』。もう一つは2005年に出た『ウィズ・ジョン・コルトレーン・アット・カーネギー・ホール』。前者はほぼ同タイトルのもので別内容のものがあるから紛らわしいんだなあ。

 

 

それら二つのうち、前者ファイヴ・スポットでのものは1958年録音だからコルトレーンがモンク・コンボにレギュラー参加していた時期の録音ではない。大好きな「ルビー、マイ・ディア」も「クレパスキュール・ウィズ・ネリー」もやっているし音楽内容はなかなかいいけれど、録音状態はあまり良くない。

 

 

そしてカーネギー・ホールでのライヴ盤の方は長年存在することすら知られていなかった。そもそもコルトレーンがモンク・コンボにレギュラー参加していたまさにその時期のライヴ録音は存在しないんじゃないかと思われていたから、2005年のリリース当時は驚きでジャズ・ファンの間ではかなり話題になっていた。

 

 

カーネギー・ホールでのそのライヴ音源はアメリカ議会図書館に長年録音テープが保管されていたものらしく、これが発見されマイケル・カスクーナが修復してブルーノートからリリースされた時は僕も本当に嬉しかった。だって1957年のモンクとコルトレーンのライヴは、1957年当時生で聴いたファンの間では語り草だったもんね。

 

 

特に同年にファイヴ・スポットで連日繰広げたというモンクとコルトレーンのライヴ・セッションは伝説になっていて、当時生で体験したリスナーは凄かったと言っていたもんねえ。前述1958年のファイヴ・スポットでの録音盤はその当時の録音じゃなくて翌年だからちょっと残念だったんだよね。

 

 

だから1957年のモンク・レギュラー・コンボでのライヴ録音は、2005年リリースのカーネギー・ライヴ盤しか今でも存在しない。これは録音もなかなか良くて中身の音楽内容も素晴しい。当時のことをリアルタイムで知らない多くのジャズ・ファンにとっては、伝説のファイヴ・スポットを垣間見るようなそんな特別な感慨があった。

 

 

そのカーネギー・ライヴ盤に収録されているのはもちろんモンクのオリジナル・ナンバーばかり。大好きな「クレパスキュール・ウィズ・ネリー」もあるのが嬉しいし、その他「モンクス・ムード」とか「エヴィデンス」とか「エピストロフィー」とか「ナッティ」とか「ブルー・モンク」とか有名曲ばかり。

 

 

コルトレーンが1955年にマイルス・デイヴィスのコンボに参加した頃の演奏はまあ下手くそだったし、以前も書いたようにマイルスのファースト・チョイスはソニー・ロリンズで、ロリンズに断られたので仕方なくコルトレーンになったというだけだった。

 

 

それが1958年に再びマイルス・コンボに参加してからのコルトレーンはまるで別人みたいな目覚ましい吹きっぷりで、最初モンク・コンボ時代のことを知らずマイルスのレコードだけ聴いていた頃の僕は、どうしてこんなに違うのか?なにがあったんだ?と不思議な思いだったんだよね。

 

 

すぐに1957年のモンク・コンボでの「修行」時代が、コルトレーンにとって一種の覚醒というか大きな契機になったといろんな文章で読むことになる。でも当時のモンクのレギュラー・コンボはライヴ録音がなく、スタジオ録音盤ばかりだったので、そのあたりがイマイチ実際の音では実感できなかったのだ。

 

 

それがようやく実感できたのがなんと2005年だったということになる。しかしこれ1957年11月29日のライヴ録音で、前年56年10月にマイルスのファースト・クインテットでの録音があるんだけど、コルトレーンはもう全然違う。短期間でモンクがどう指導したのか知らないが、変る時ってのはこんなに変るもんなんだね。

 

 

この1957年のコルトレーンが参加したモンク・コンボのライヴ録音もっとたくさん聴けたら嬉しいんだけど、録音はこのカーネギー・ライヴしかないんだろう。一説に拠ればコルトレーンのいわゆる<シーツ・オヴ・サウンド>は、モンクの「サックスだって和音を吹けるんだぜ」という言葉がきっかけで誕生したらしい。

 

 

そのカーネギー・ライヴで既に音をびっしりと敷詰めるかのようなそういうシーツ・オヴ・サウンド風のサックス・スタイルが聴ける。典型的には「ナッティ」や「エピストロフィー」でのソロなんかがそうだ。「クレパスキュール・ウィズ・ネリー」みたいなバラードではしっとりと吹上げている。

 

 

このカーネギー・ライヴ盤でのコルトレーンを聴くと、翌年のマイルス・コンボによる『マイルストーンズ』や自身のプレスティッジへのリーダー・アルバム『ソウルトレイン』なんかとほぼ変らない演奏ぶりなんだよね。モンク・コンボ時代はたったの一年間だけだったけど、目覚ましい進歩ぶりだ。

 

 

僕は音をたくさん吹きまくる・弾きまくるというスタイルの演奏家はどんな音楽ジャンルでも楽器でもイマイチ好みではなく、ピアニストやギタリストでそういうスタイルの人は指が高速・正確に動くという技巧面は素晴しいと感心はするものの、そんなにたくさんの音を費やさなくちゃ物が言えないなんてと思ってしまう人間。

 

 

だけど1958年頃からのコルトレーンだけが、サックス奏者だけど例外的に大好きで、大学生の頃からファンなんだよね。コルトレーンについてよく言われるいわゆる思想性というかスピリチュアルなんちゃらみたいなのははっきり言ってどうでもいいというか、なんのことやら分りもしないんだよね。

 

 

そんなコルトレーンの饒舌なスタイルを、自身のピアノは木訥で寡黙なスタイルの持主だったモンクが開眼させたというのはなんとも面白い事実だよねえ。なおライヴ録音ではなく1957年にモンクのスタジオ録音で吹くコルトレーンは、前述の『モンクス・ミュージック』以外にもう一枚、『セロニアス・モンク・ウィズ・ジョン・コルトレーン』というジャズランド(リヴァーサイドの傍系レーベル)盤がある。

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