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2016/06/09

鬱陶しくも楽しいリゾネイター・ギター弾き

Brozman

 

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2013年に残念ながら若くして亡くなってしまったけれど、ボブ・ブロズマンというアメリカ人ギタリストがいる。日本にどれだけ彼のファンがいるのか分らないけれど、僕は大好きなんだよね。今でもはっきり憶えているが僕がこの人を知ったのは1990年代後半にパソコン通信をやっていた頃のこと。

 

 

当時ある方に「JJさん(当時のハンドル・ネームは J.J.Flash だったのでこう呼ばれていた)にソックリなブルーズ・ギタリストがいるよ」と、あるテレビ番組を録画したVHSテープを送ってくれたのだった。当時フジテレビ系深夜でやっていた『アメリカン・ギターズ』という番組から。それがこれだ↓

 

 

 

是非ちょっとご覧いただきたい。僕にソックリと言っても顔立ちやその他容姿のことではない(と言っても僕のブログをお読みになる方で僕の見た目をご存知なのは今のところ一名しかいらっしゃらないはず)。圧倒的な存在感みたいなもののことなんだよね。

 

 

存在感と言うと聞えはいいが、特に弾きながらギターのネックをガッガッとせり出したり、顔や体をクイックイッと動かすあたりの鬱陶しさといったらないよね。いつでもどこでも厚かましく出しゃばって目立ちまくって不快で仕方がないという、VHSテープを送ってくれた友人の言う「JJさんにソックリ」とはそういう意味に他ならないんだよね(苦笑)。

 

 

1990年代後半にパソコン通信をやっていた頃の僕はまさにこういう感じで、音楽に関する話題ならどこへでも出掛けていって誰にでも絡んで一方的に喋りまくり、そりゃもう鬱陶しくて仕方がなかったと思うんだよね。ネット上だけでなく、ネットをはじめるずっと前から僕はそもそもそういう人間だ。

 

 

小学生の頃の僕はどもり(吃音という言葉は知らなかったなあ当時)があまりにもひどくて、「なにを言っているのか分らない」と言われるほで、そのせいで集団登校時でも学校内でもからかわれたりいじめられることが多かったので、学校は仕方なく行くけれど、下校するとずっと家の中にいた。

 

 

放課後は友人とはあまり遊ばず(どもりを笑わないごく少数の親友としか遊ばなかった)、夕方帰宅するともっぱら家の中で本ばかり読んでいた。読みまくって完全に読書大好き人間になり、それが高じた挙句の果てに、読んだ(主に英語の)小説について大勢の前で喋るという仕事に就いてしまったという、なんたる人生の皮肉だ!

 

 

しかしそんなにひどかった僕のどもり症。親が心配して専門医に診せたりもしても一向に治らなかったのが、中学に入ってサッカーをはじめたあたりからなぜだか徐々に軽くなっていって(と言っても今でも少し残っていて電話や教室内でどもることがある)、高校生の頃からはそれまでの反動のように喋りまくる人間になったわけだ。

 

 

そうするとそっちが僕の生来の気質だったんだろう、だれかれ構わずうるさく喋りまくるようになり、だから教室内で大勢の学生を相手に90分間延々と一人で喋るのが快感で仕方なかったのだった。ネット上でも全く同様に饒舌で、初めてのオフ会で渋谷のロック喫茶BYGに行った時も同じだった。

 

 

当時同じネット仲間で Sloppy Drunk さんという方がいて、彼は関西人で非常によく喋る方なのだが、彼がそのオフ会が終って家に帰ってから奧さんに「ワシが世界で一番喋る人間やと思っとったけど、もっとひどいのがおったわ」と僕のことについて、コイツには呆れたという感想を漏したらしい。

 

 

20代末頃からパニック障害という形で軽く発症していた鬱病が一時期ひどく悪化していたことがあって、それで仕事以外では殆ど喋らない時期があった(1999〜2009年頃)。その時期はネット上でも寡黙だったので、この時期に僕を知った方は、その後Twitterをはじめて饒舌になった僕は意外だったようだ。しかしそれが僕本来の姿です。僕は言葉が次から次へと溢れ出て口や指が追いつかないという人間です。「物静か」なんてところのおよそ正反対に位置する人間なんです。

 

 

え〜っと、音楽と関係ない私事が長くなってしまった。言いたいのは、そんな僕の鬱陶しい姿にソックリだと友人が言うボブ・ブロズマンのあまりに厚かましい存在感のことだ。最初に貼った映像をご覧になればお分りの通り、彼が弾くのはナショナル社製リゾネイター・ギター。しかもスライド・バーを使う。

 

 

上で貼ったたった一個の音源だけでもブロズマンのギターの腕前が一級品であることはよく分っていただけるはず。彼はもっぱらリゾネイター・ギター、それもナショナル社製のものばかり弾くというギタリストだ。リゾネイター・ギターも各社あるけれど、ルーツはどこも全部ナショナル社だ。

 

 

ドブロも有名だけど、ドブロ社はナショナル・ストリング・インストルメンツを創設した一人であるジョン・ドビエラが独立して設立したもの(ちなみにアドルフ・リッケンバッカーもナショナル社から独立した一人)。今ではリゾネイター・ギターというとナショナルかドブロかのどっちかだとなるね。

 

 

元々リゾネイター・ギターは、1931年に最初のエレキ・ギターが出現し普及する前のアクースティック・ギターしかない時期に、その音を増幅・拡大してより大きな音を出せるように、ボディにアルミニウム製のコーン(共鳴板)を取付け、弦の振動を大きく響かせるのが目的で造られた。

 

 

戦前の古いギタリストは音楽ジャンルを問わずそういうリゾネイター・ギターを弾く人が結構いるよね。特にブルーズとハワイアンの世界には多い。ハワイアンの世界では普通にギターを抱えて弾くのではなく水平に寝かせて弾くことも多いし、そういう弾き方のスティール・ギターはハワイ発祥なんだよね。

 

 

カントリー界にもリゾネイター・ギター弾きがいるんだそうだ。ハワイアンとかカントリーの世界には僕は無知なのであまり喋らないでおこう。ブルーズ界では例えばサン・ハウスなんかもリゾネイター・ギターを弾くことが多かったなあ。戦後録音アルバムのジャケ写で確かそんなのがあったなあ。なんだっけ?

 

 

その後電気でアンプリファイするエレキ・ギターが本格的に普及したため、リゾネイター・ギターは大きな音を出すという目的だけで使う人はほぼいなくなり、大きな音云々ではなく独特の音色、そのアルミ製のボディや共鳴板に反響して出るあの音色の面白さに惹かれて弾くというギタリストが多くなっているはずだ。

 

 

僕もリゾネイター・ギターの音色が大好き。殆ど古いブルーズ・ギタリストか、ボブ・ブロズマンみたいに古いギター・ミュージックの研究・実践家みたいな人の演奏でしか聴いていないけれど、ロック・ギタリストも弾くことがあって、エリック・クラプトンもなにか弾いているものがあったよね。

 

 

ボブ・ブロズマンは1954年生まれの新しい世代なのに、なんたってワシントン大学の卒業論文のテーマが「チャーリー・パットンとトミー・ジョンスンの相互影響について」というものだったというくらい若い頃から古いブルーズやギター・ミュージックが好きで研究しているという人だ。

 

 

ブロズマンの場合はブルーズだけではく、アメリカ本土(メインランド)へのギターのそもそもの影響源だったハワイアン・ギター・ミュージックや、その他関連する古いアメリカン・ギター・ミュージックの世界一般に造詣が深い人で、30枚ほどの自分のアルバムでもその研究成果を存分に発揮している。

 

 

と言っても僕はブロズマンのアルバムはその三分の一くらいしか聴いていない。そのなかで個人的に一番の愛聴盤が1992年の『ア・トラックロード・オヴ・ブルーズ』。ブルーズを中心にやっているもので、トラックの荷台にリゾネイター・ギターをたくさん並べて積んであるジャケット写真も好きだ。

 

 

ブルーズ中心と言っても様々なギター・ミュージックのミクスチャーが持味の人だから、やはりいろんなのが入っていて面白い。八曲目は「スタック・オ・リー・アローハ」というタイトル通り、リゾネイター・ギターをスライドで弾くインストメンタル・ハワイアンだ。そういうのもなかなか楽しい。

 

 

「スタック・オ・リー・ハワイアン」という曲名にある「スタック・オ・リー」とは、ビリー・ライオンズを殺害した例のスタッグ・リー・シェルトンのことに間違いない。この事件は最も有名なアメリカン・フォーク・ソングの一つにもなって、『ガンボ』でのドクター・ジョン含めいろんな人が歌っているよね。

 

 

アメリカ音楽におけるスタック・オ・リー伝説に関してはグリール・マーカスが『ミステリー・トレイン』のなかでなんだか詳しく書いているんだけど、あの部分は何度読んでも僕には難解で、著者がなにを言いたいのかよく分んないんだなあ。翻訳で読むせいかと思って原書で読み直してみたけれど同じだった。

 

 

ともかくボブ・ブロズマンの「スタック・オ・リー・ハワイアン」は歌なしのインストルメンタルなので、その有名な伝説やそれにまつわるフォーク・ソングとの関連はよく分らない。普通の楽しいハワイアン・スティール・ギター・ミュージックだ。またリゾネイター・ギターを弾くジャンゴ・ラインハルトみたいな曲もある。

 

 

『ア・トラックロード・オヴ・ブルーズ』では三曲ほどリゾネイター・ギターではなくエレキ・ギターを弾いている。三曲ともスライド・プレイで3コードのブルーズ・ナンバー。ちょぴり初期のジョニー・ウィンターを思わせる部分もある。ブロズマンはエレキ・ギターはあまり弾かないんだけどね。

 

 

それら以外は全てやはりアクースティックなリゾネイター・ギターを弾き、歌ものありインストルメンタルあり、一人での弾き語りありバンド編成でのセッションありと、多彩な内容で飽きさせない。アルバム・ラストが最初に音源を貼ったロバート・ジョンスンの「カム・オン・マイ・キッチン」の弾き語り。

 

 

やっぱりこういった戦前のカントリー・ブルーズをやる時のブロズマンが僕は一番好きなんだなあ。いざ演奏風景を見ると、最初に映像を貼った通りむさ苦しく鬱陶しくて直視しにくい人だけど、CDで音だけ聴いていると迫力があって楽しくて、しかもギターの腕前は目も眩む超絶技巧で文句なしの人なんだなあ。

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