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2016/06/02

トレイ・アナスタシオのトロピカル・ジャズ・ロック

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ジャム・バンドの代表格の一つフィッシュのCDもたくさん買ったけれど、それらよりも好きなのがリーダー、トレイ・アナスタシオのソロ・アルバム。といっても大して聴いてなくて、初めて買ったのが2002年の『トレイ・アナスタシオ』。これ以前に何枚かあるけれど聴いていない。

 

 

2002年の『トレイ・アナスタシオ』がなかなか素晴しかったから、その後のアルバムはだいたい買うようになった。『トレイ・アナスタシオ』は自分の名前だけを冠しただけあって、彼自身も自信を持ってリリースしたものなんじゃないかなあ。アルバム・ジャケットもいいよね。

 

 

トレイはもちろんギタリスト兼ヴォーカリストで、『トレイ・アナスタシオ』でもそれをフィーチャーしているけれど、僕が一番気に入ったのはたくさん聞えるパーカッションの音とホーンの使い方。パーカッションではシロ・バプティスタが参加していてかなり派手に打楽器全開のサウンドだ。

 

 

『トレイ・アナスタシオ』以前のソロ・アルバムを聴いていないので、トレイが元々そういう音楽性の持主なのかどうかは分らない。でも彼が率いるフィッシュだとそんなにパーカッシヴではないよね。だから2002年に最初に『トレイ・アナスタシオ』を聴いた時にちょっと驚いて、そして嬉しかったのだ。

 

 

一曲目の「アライヴ・アゲイン」からいきなりかなり派手なラテン・パーカッション全開だし、といってもこれほどはっきりパーカッションが派手なはその一曲目と十一曲目の「ラスト・チューブ」だけなんだけど、それ以外の曲でだって効果的に使われていて、いい感じのスパイスになっている。

 

 

 

その11曲目の11分以上ある「ラスト・チューブ」が『トレイ・アナスタシオ』のハイライトだろう。トレイのヴォーカルも入るものの大部分がインストルメンタルなジャムで、こういうのはグレイトフル・デッド以来のジャム・バンドの得意とするものだよね。トレイもギターを弾きまくっている。

 

 

 

「ラスト・チューブ」ではホーン群も派手に入っていて、ドラムス+パーカッション+トレイのギター+クラヴィネットとともにこの曲を彩っているよね。リズムの感じもファンキーでというよりもこれはまあまあファンクな曲だ。『トレイ・アナスタシオ』でこういうファンク・ナンバーは他にはない。

 

 

書いたように一曲目の「アライヴ・アゲイン」がラテンな感じだし、二曲目の「ケイマン・レヴュー」もスティーヴィー・ワンダーみたいなクラヴィネットがファンキーだし、三曲目の「プッシュ・オン・ティル・ザ・デイ」だってリズムが派手だし、六曲目の「マニー、ラヴ&チェンジ」だってそう。

 

 

九曲目の「ミスター・コンプリートリー」もドラムスが暴れるアップ・テンポのハード・ロックで、ファズの効いたトレイのギターが活躍し、本当に『トレイ・アナスタシオ』というアルバムの肝はリズムにあると言いたくなるくらいだ。でもこのアルバムはそんなのばっかりでもないんだなあ。

 

 

 

五曲目の「フロック・オヴ・ワーズ」はアクースティック・ピアノの静謐な調べが中心で、それに乗せてトレイが歌いヴォーカル・コーラスが入るスタティックなナンバー。エレキ・ギターも聞えるけれどアクースティック・ギターが中心。また八曲目の「アット・ザ・ガゼボ」はクラシカルな管弦楽なんだよね。

 

 

 

 

クラシカルな管弦楽といえばトレイ・アナスタシオは『セイズ・デ・マヨ』というクラシック作品を2004年にリリースし、その当時は種々のライヴ・フェスティヴァルでもオーケストラを使ってそれをそのまま再現していたくらいだった。『セイズ・デ・マヨ』では最大で66人編成の管弦楽団が演奏している。

 

 

『セイズ・デ・マヨ』は30分もない短いもので、音楽としてもどうってことないロマン派作品だと思うけれど、それまでのフィッシュとソロ活動からは想像できなかったからビックリしたんだよね。そうして聴直してみると、これ以前のソロ・アルバムでもホーンやストリングスを見事に活用している。

 

 

『トレイ・アナスタシオ』の「アット・ザ・ガゼボ」がそうだと書いたけれど、10曲目の「レイ・ダウン・バルーン」だってクラシカルなストリングスに乗ってトレイの弾くアクースティック・ギターだけがフィーチャーされるインストルメンタル・ナンバーだ。だからこういう音楽性も持っている人なんだよね。

 

 

 

『トレイ・アナスタシオ』の中ではそれら二曲だけなんだけど、『セイズ・デ・マヨ』はそれを拡大した全面的なクラシック作品。しかし書いたようにただのロマン派な作風だから、同じくロック・ミュージシャンにしてクラシックのオーケストラ作品を書く時のフランク・ザッパみたいな面白さはないね。

 

 

そしてそういうクラシカルな曲やアルバムはそれら以外にはほぼないようだから、トレイ・アナスタシオはフランク・ザッパなどとはやはり全然違う。でも普通にギターを弾いて歌うだけのロック・ミュージシャン(の方が好きだけどね僕は)というのでもないのは確かで、多彩な音楽性を持つ人なんだろう。

 

 

トレイ・アナスタシオのソロ・アルバムでは2002年の『トレイ・アナスタシオ』より、それに続いて2003年にリリースされた二枚組ライヴ・アルバム『プラズマ』の方がはるかに好きで、ここではクラシカルな作風は全くなく、全面的に(ジャズ・)ロック、そしてかなりワールド・ミュージック的な面がある。

 

 

ライヴ・アルバム好きな僕の性分もあるんだろうけど、それを差引いても『プラズマ』は素晴しい。こんな楽しいワールド・ミュージック風なロック・アルバムはなかなかないね。一枚目一曲目の「カールーズ・コール」でのリズムの賑やかさといったらホント最高。

 

 

 

今貼った音源を聴いていただければこの音楽の楽しさはお分りいただけるはず。ティンバレスだって鳴るし、それ以外にたくさんのラテン・パーカッションが聞えて、ピアノやオルガンの弾き方だってホーン・アンサンブルの使い方だってラテン的で楽しいし、そもそもの曲調がラテン風だし、いいねこれ。

 

 

一枚目五曲目の「モザンビーク」も曲名通りワールド・ミュージックなんじゃないかなあ。ホーン奏者がアンサンブルだけでなく次々にソロを取り、パーカッションとトレイのギターも活躍するインストルメンタル。『プラズマ』では僕が一番好きな曲。

 

 

 

一枚目四曲目の「ウェン」なんかでもサックスがちょっぴり中近東風の旋律を吹くし、ホーン・アンサンブルだってややコミカルなところがあって面白い。ほんのちょっぴりデューク・エリントンのジャングル・サウンドを思わせる部分がないわけではないし、女性ヴォーカルとデュオで歌うトレイの歌には笑っちゃう。

 

 

一枚目六曲目の「エヴリ・ストーリー・エンズ・イン・ストーン」だってなんだろうねこれは。リズムは静かめだけどコミカルな曲調で、ポンポンと気持良く鳴るコンガの音が一番目立つ。フルートも聞え、トレイのギターと歌が面白い。

 

 

 

また一枚目七曲目の「スモール・アックス」はボブ・マーリー・ナンバーで、インストルメンタル・レゲエ。三分程度と短いんだけど、殆ど自分の書いた曲ばかりやるトレイ・アナスタシオにしてはちょっと珍しいカヴァーだ。まあしかしこれはどうってことないというか大したことはない一曲ではある。

 

 

一枚目のクライマックスはやはりラストの「ファースト・チューブ」だ。硬いチューニングにしたスネアのカンカンという音もいい感じに聞えるインストルメンタル・ジャムで、11分以上ある。YouTubeで探すといろんなライヴ・ヴァージョンが上がっているけど、『プラズマ』のはないみたい。

 

 

また『プラズマ』で異色なのは一枚目三曲目の「マギーラ」。4ビートのジャズ・ナンバーなんだよね。ホーン奏者がたくさん(といっても五人だけど)いることもあって、ジャズのビッグ・バンドに聞える。ピアノ・ソロも一瞬だけデューク・エリントンっぽいし。

 

 

 

そんな具合にいろいろと面白いサウンドで、いわば「トロピカル(・ジャズ)・ロック作品」だとも言いたくなるような一枚目に比べたら、『プラズマ』二枚目は普通のジャム・バンドっぽいロックばかりだから、今聴き返すと魅力が薄いような気がする。やっぱりワールド・ミュージック的な一枚目がいい。

 

 

『プラズマ』以後のトレイ・アナスタシオのソロ・アルバムにこんな面白いものはなくて、現在はまたフィッシュを再結成して活動しているみたいだけど、今のフィッシュには僕は興味はない。だから僕が面白いと思うトレイはやっぱり2002年の『トレイ・アナスタシオ』と2004年の『プラズマ』だけなんだよね。

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