« 小泉今日子の歌うジョージ・ハリスン | トップページ | 読譜能力 »

2016/06/07

カーティス・メイフィールドはリズムがいい

6a00e008dca1f08834016766485a7f970b5

 

Curtismayfieldnewworldorder









カーティス・メイフィールドのインプレッションズ後のソロ・アルバムで僕が大好きなのは、深刻そうな曲名や歌詞の内容ではなくリズムだ。特にコンガの使い方がいいよね。1970年のファースト・ソロ・アルバム『カーティス』からしてコンガ全開だもんねえ。気持いいったらない。

 

 

1970年の『カーティス』一曲目は「地獄というものがあるのなら、僕たちはみんなそこに行く」という曲名なんだけど、そういう意味深な曲名や歌詞内容とかは僕にははっきり言ってどうでもいいんだよね。何度も言ったように、僕は音楽の歌詞の意味だけとかではあまり判断しない人間なのだ。

 

 

しかしこれはカーティスみたいな音楽家本人の意向には完全に背くような聴き方に違いない。カーティスはインプレッションズ時代から歌詞の意味内容で実にたくさんのことを語っている。インプレッションズ時代と言わずカーティスの全キャリア最大の代表曲「ピープル・ゲット・レディ」もそうだよねえ。

 

 

僕が「ピープル・ゲット・レディ」という曲を初めて聴いたのは、インプレッションズ・ヴァージョンでもソロ時代のカーティス自身による再演でもなく、1985年にロッド・スチュアートがジェフ・ベックとやったヴァージョンだ。

 

 

 

確かこのオフィシャル・プロモーション・ヴィデオをMTVかなにかで見聴きして、なんていい曲なんだと感心しちゃったんだなあ。その頃これがカーティス・メイフィールドという音楽家が1965年にインプレッションズというグループ用にと書いたものだなんてことは知りもしない。

 

 

ロッドはこの「ピープル・ゲット・レディ」がお気に入りらしく何度もライヴで再演していて、こういうジェフ・ベックとの再共演もある。これ何年頃のライヴなんだろうなあ。見れば分るようにジェフ・ベックは指弾きだから最近のステージだよなあ。

 

 

 

またロッドは1993年の例のアクースティック・ライヴ・アルバム『アンプラグド』でも再演している。ご覧になれば分るように、この時はジェフ・ベックではなくやはり過去の盟友ロニー・ウッドがゲスト参加でギターを弾く。ストリングスも入っていい感じ。

 

 

 

こういうロッドの一連のカヴァーでロックしか聴かないファンにもスッカリお馴染みで、僕だってそれで知ったカーティス・メイフィールドの「ピープル・ゲット・レディ」や、あるいはその他のインプレッションズ・ナンバーもソロ時代の曲も、歌詞のメッセージ性が強い。

 

 

だから僕みたいに歌詞の意味をほぼ無視してサウンドやリズムばっかり聴くようなリスナーは、カーティスの音楽について語る資格はないのかもしれないね。しかしですね、文学作品でも音楽作品でも「作者の意図」というものが果して存在するのだろうかという疑問を僕は大学生の頃から持っているんだよね。

 

 

作者の意図とかいうものはおそらく作品内には存在しないんだろうと、主に文学研究の場面で考えるようになり、しかし文学でも音楽でも創り手が存在する以上、そこになんらかの創作意図はあるんだろうけど、作品が世に出た瞬間にそれは消えて無くなるんだろう。

 

 

消えて無くならなくても、文学作品や音楽作品を享受する側には作者の意図というものはほぼ伝わらない。伝えたいと思って創り手は世に出すんだろうけれど、受け手が理解できるのは「作者の」意図ではなく「作品の」意図だ。そして作品の意図を創り出すのは作者ではなく読者・聴き手なんだよね。誤解しちゃイカン、僕ら凡人に天才の意図なんか分るわけがない。

 

 

話を戻して1970年の『カーティス』一曲目の「地獄があるのなら、僕らはみんなそこへ行く」。人声のやり取りからはじまるけれど、すぐにコンガが入り派手に鳴り始める。それに乗ってカーティスがなにやら叫んでいるがその言葉の内容とかはどうでもいい。肝心なのは賑やかなコンガのリズムだ。

 

 

 

インプレッションズ時代からリズムの面白い曲は結構あるけれど、こんなに派手にパーカッションは使っていない。それなのに独立後第一作のいきなり一曲目からどうしてこんなにコンガを派手に鳴らしているんだろう?なにかカーティスのなかで音楽的変化があったのか、あるいは元々やりたかったのか?

 

 

1970年の『カーティス』では一曲目の「地獄に落ちる」だけではなくそれ以外の曲でもだいたい全部コンガが入っていて、それも控目な隠し味とかではなく派手に活躍しているよねえ。このアルバムでのもう一つの代表曲「ウィー・ピープル・フー・アー・ダーカー・ザン・ブルー」でもそうだ。

 

 

 

この「ダーカー・ザン・ブルー」では出だしはゆったりとしたテンポで静かな雰囲気なんだけど、二分ほどすると突然パッと曲調が変化しリズムが賑やかになってコンガが大活躍しはじめる。僕なんかにはその部分があるからこそこの曲は面白い。それが終るとまた静かになってハープが入ったりするけれども。

 

 

「ダーカー・ザン・ブルー」は、カーティス復帰作にしてラスト・アルバムの1997年『ニュー・ワールド・オーダー』でも再演している。そこでもやはり静かにはじまったかと思うとやはり中盤リズムが変って賑やかになるもんね。さらにこの曲ではザップのロジャー・トラウトマンが参加している。

 

 

 

ザップのロジャーが例によってトーク・ボックスを使って面白い音を出しているよね。カーティス・メイフィールドの復帰作における過去の最大の代表曲の一つの再演で、ロジャーのトーク・ボックスが聴けるなんて思ってもみなかったもんなあ。あれこそがあのラスト・アルバムの白眉。

 

 

それにしてもその1997年の『ニュー・ワールド・オーダー』。カーティスは確か90年だったかの事故で首から下が不随になってしまい引退状態に追込まれていて、このアルバム制作時も首から下は麻痺したままだったはずなのにどうやって声を出していたんだろう?聴き馴染んだ声だけどね。

 

 

そんなことをファンはみんな知っているから、まさか新作アルバムが聴けるなんて思いもしていなかったし、聴いたらもうそれだけで胸が一杯になって涙なしでは聴けなかった『ニュー・ワールド・オーダー』。今、冷静な気持で聴き返すと、やはり1970年代のような輝きは望むべくもない。

 

 

1970年代ソロ時代のカーティスは一作目『カーティス』がそうだと書いているように、これに続く他のアルバムもだいたいどれもリズム隊にコンガを使っていてそれが大活躍。60年代末頃からのアメリカ・ポピュラー音楽はだいたいどれもほぼ例外なくコンガなどのパーカッションを使っている。

 

 

だからこのこと自体は別に物珍しくもないし、カーティスだけのことではなく彼の独創でもなんでもない。一連のニュー・ソウルに分類される連中だって1970年代のマーヴィン・ゲイもスティーヴィー・ワンダーもみんな例外なくコンガなどラテン〜アフリカンなパーカッションを多用しているもんね。

 

 

ソウル〜ファンク系だけでなくジャズからのファンクっぽいアプローチをする音楽家だって、あるいは白人ロック・ミュージシャンだって、みんな1970年代はコンガなどのパーカッション奏者を重用していた。だからこれは時代の流れというか、みんなが共振していたようなものだったんだろう。

 

 

それにしてもカーティス、特にソロ一作目1970年の『カーティス』ではコンガの音があまりに目立つというかそういうアレンジ・録音・ミキシングだよねえ。だからこれはなにかあるんだろうなあ。B面一曲目の「ムーヴ・オン・アップ」なんかラテン・インストルメンタルというのがピッタリ来るくらいだもんね。

 

 

「ムーヴ・オン・アップ」では一応カーティスのヴォーカル部分があるんだけど、それが終って長いバンドのインストルメンタル演奏部分があるんだよね。ヴォーカル部分でもインスト部分でもコンガが大活躍しているなんてもんじゃないくらい目立っている。ホーン・アンサンブルもラテン調だしねえ。

 

 

 

なんだかカーティスの音楽についてコンガの話ばっかりになっちゃったけれど、ポピュラー音楽ではリズムこそ命で最も重要なものだと思うんだよね。あそこまでコンガが目立っているのは一作目の『カーティス』が一番だけど、それ以後のソロ・アルバムでも全部パーカッション奏者が参加していて、だいたい似たような感じだ。

 

 

だから一般にカーティスの代表作であり名盤とされている『スーパーフライ』や『ゼアズ・ノー・プレイス・ライク・アメリカ・トゥデイ』とかも、深刻そうなアルバム名、曲名、歌詞内容ではなく、サウンドやリズムの面白さを僕はいつも聴いているんだよね。

 

 

コンガが派手に鳴り響くものの話ばかりしたけれど、リズムが命というのは別に激しかったり賑やかだったりじゃないとイケないという「表面的な」ダイナミズムを言っているわけでもないので、念のためそれだけは書添えておく。

« 小泉今日子の歌うジョージ・ハリスン | トップページ | 読譜能力 »

リズム&ブルーズ、ソウル、ファンク、R&Bなど」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: カーティス・メイフィールドはリズムがいい:

« 小泉今日子の歌うジョージ・ハリスン | トップページ | 読譜能力 »

フォト
2024年2月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29    
無料ブログはココログ