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2016/06/23

ソウル・シスター和田アキ子

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最近はすっかり歌が下手になったように思う和田アキ子。かつては僕も大ファンだった歌手なんけど、もうファンはやめちゃった。だってテレビの歌番組で聴いてみても、声が出ていないし音程もフラフラして不安定だし全体的に表現力もなくなって、どうにも聴けないよなあ。大晦日にもあの鐘を鳴らしてばかり。関係ないけど、津軽海峡を渡るか天城を越えてばかりの人もいるよね。

 

 

これはもうやめたらしいけれど長年の喫煙癖のせいと、今でもで続けているらしいへヴーな飲酒などの夜遊びなどのせいで喉が荒れちゃったってこともあるんだろうなあ。それに加えて近年はどうも歌手業よりテレビのバラエティ番組出演などを中心にやっていて、歌の方は精進しないせいなんだろうなあ。

 

 

どんなに素晴しい才能があって輝いている人でも節制せず精進を怠って年月が経つとダメになってしまうといういい例だろうなあ。これは音楽家だけでなくどんな仕事でも同じだ。僕もそうならないように気を付けてはいるつもりなんだけどいささか怪しい。これが芸が勝負の世界となればなおさらだろう。

 

 

僕は別に和田アキ子の悪口を書きたいわけではない。彼女はかつては本当に素晴しい歌手だった。特に1968年(昭和43年)にデビューした頃の和田アキ子は<待望の和製R&B女性歌手>のように言われていて、実際歌にパンチがあって迫力満点でソウルフルで文句なしのレディ・ソウルだった。

 

 

デビュー前の和田アキ子は中学生の頃からアメリカ黒人R&B〜ソウル歌手ばかり聴きまくっていて、レイ・チャールズ、オーティス・レディング、アリサ・フランクリンなどのレコードを聴いてコピーしていたらしい。リトル・リチャードや、白人だけどエルヴィス・プレスリーなども好きだったようだ。

 

 

ジミ・ヘンドリクスも好きだったという話もあるんだけど、これは作り話じゃないかなあ。だってジミヘンのデビュー・アルバム『アー・ユー・エクスピアエリエンスト』は英国で1967年にリリースされたものだからだ。代表作である二枚組LP『エレクトリック・レディランド』なんか翌68年リリースの作品だもんね。

 

 

しかもその1967年とか68年とかいうジミヘンのレコード・リリースは英国や米国での話であって、その頃は現在と違って洋楽のレコードが日本に入ってくるまで少し時間差があったもんね。和田アキ子のデビューが68年であることからして、デビュー前からジミヘン・ファンだったとはちょっと考えにくい。

 

 

和田アキ子の歌い方を聴いても、レイ・チャールズとかオーティス・レディングとかアリサ・フランクリンとか、あるいは彼女自身はあまり名前をあげないがはっきりと分るジェイムズ・ブラウンなどからの影響は鮮明に聞取れるけれど、ジミヘンのあの乱暴に喋って投げつけるような歌い方は聴けないもんね。

 

 

だから初期和田アキ子への最大の影響源はやっぱりアメリカ黒人R&B〜ソウル歌手だ。そして上手かった頃の彼女のそういったソウルフルな歌がコンパクトに一枚にまとまっているコンピレイション盤がある。ワーナー・ジャパンがリリースした『Dynamite Soul Wada Akiko』というアルバムだ。

 

 

『Dynamite Soul Wada Akiko』はどこにも全く書かれていないのだが、コモエスタ八重樫の選曲・編集で1996年にリリースされたもの。アルバム・ジャケットを見ただけでニンマリしちゃうんだよね。上掲画像をご覧になれば分る通りアトランティックのロゴをそのままもじっているんだなあ。

 

 

アトランティックのロゴは左にAの文字、右に風車のようなものが描かれて二つに分れているのを長方形で囲み、その下に “ATLANTIC” の文字をあしらったもの。『Dynamite Soul Wada Akiko』には、そのロゴをそのままAとWの文字に置換えただけのものが描かれている。

 

 

さらにその下に “ATLANTIC” の代りに “DYNAMITE” と書かれてあって笑える。そのAとWで作ったアトランティック風ロゴがジャケット表だけでなくジャケット裏にも、そして入っているブックレットの裏にも大きく描かれているという具合なんだよね。アメリカ黒人音楽ファンならニンマリだ。

 

 

そんなジャケット・デザインでのアメリカ黒人音楽トリビュート的な遊び心だけじゃないよ。『Dynamite Soul Wada Akiko』の中身の音楽が凄いんだ。収録曲は一番古いのが1968年のシングル曲「バイ・バイ・アダム」で一番新しいのが75年の「見えない世界」まで全14曲。

 

 

これら全14曲がどれもこれもソウルフルでパンチの効いた歌ばっかりで、最近のテレビ・バラエティやあるいは歌番組ですら、そういう和田アキ子の姿と声しか知らなかったら間違いなく腰を抜かすね。こんなに凄い歌手だったんだって見直すに違いない。ホント1970年代前半までの和田アキ子はいい。

 

 

『Dynamite Soul Wada Akiko』。中心になっているのはやはり和田アキ子に提供されたオリジナル曲で、有名な「どしゃ降りの雨の中で」は1969年のオリジナル・シングル・ヴァージョンと70年12月のライヴ・ヴァージョン(『和田アキ子オンステージ』)の両方を収録。

 

 

オリジナル・ヴァージョンの「どしゃ降りの雨の中で」は『Dynamite Soul Wada Akiko』ラストに収録されているのだが、三曲目にある70年のライヴ・ヴァージョンはもっと凄い。オリジナルではオルガンの音からはじまるけれど、ライヴ・ヴァージョンではソウルフルなホーン・アンサンブルではじまり、それに乗って和田アキ子が歌う。

 

 

テンポというかリズムのノリもオリジナルとライヴでは違っていて、オリジナルではややゆったりとしたノリなのに対し、1970年のライヴ・ヴァージョンはテンポも少し変えグッと重心を落したグルーヴィーなブラック・ミュージックのノリになっている。誰がアレンジしたのか「不明」となってているのが残念だなあ。

 

 

そのライヴ・ヴァージョンの「どしゃ降りの雨の中で」はたったの1分45秒しかなくて、本当に瞬く間に終ってしまうんだなあ。三分とか五分とかあればもっと楽しかった。最高にグルーヴィーだから何分間続けて聴いたって気持いいよ。ライヴ盤から収録されているものでは「夏の夜のサンバ」も凄い。

 

 

アルバム九曲目の「夏の夜のサンバ」は1973年12月の『和田アキ子リサイタル』からのもの。聴いているとサウンドやリズムもグルーヴィーでカッコいいけど、歌詞もヤバイ。「ぎらぎら太陽が沈んだら、男と女はハッシッシ」って歌っている(ようにしか聞えない)んだけど、ハッシッシって(笑)。

 

 

「夏の夜のサンバ」の歌詞を書いたのは阿久悠なんだけど、ハッシッシって言っちゃっていいのか?あるいはあのハッシッシのことじゃないのか?まあエリック・クラプトンなんかも「コケイン、コケイン」とリピートしていたりするからいいのかな。まあ歌詞の意味の中身なんかどうでもいいけれどさぁ。

 

 

『Dynamite Soul Wada Akiko』に収録されているのはオリジナル曲ばかりでない。アルバム中盤にあるライヴ・セクションみたいなもののなかにカヴァー曲が三つ立て続けに収録されている。「スピニング・ウィール」「黒い炎」「パパのニュー・バッグ」の三曲。

 

 

三曲とも洋楽ファンならよく知っているものばかりだよね。「スピニング・ウィール」はブラッド、スエット&ティアーズが、「黒い炎」はチェイスが、「パパのニュー・バッグ」はジェイムズ・ブラウンが、それぞれ創って歌ったものだ。それらを英詩のまま歌う和田アキ子がこれまた最高にカッコイイんだなあ。

 

 

以前誰だったか(プロの方ではない)が、和田アキコの歌う英語の歌は発音がどうにも下手くそで聴いていられないと言っていたことがあった。全然そんなことないよ。まあ上手いとも言いにくい英語だけど、決して下手ではない。少なくとも以前酷評した阿川泰子その他よりは断然上手だぞ。

 

 

それに英語が下手なだけでなく歌い方やサウンドがカッタルイ阿川泰子その他とは違って、和田アキ子の歌うそれら三曲の洋楽カヴァーは完全なるファンキー・ソウルで、バンドの演奏もグルーヴィーなら和田アキ子の歌もノリが良くて、少々英語の発音がおかしくたってなんの問題もないぞ。

 

 

いわゆるブラス・ロックに分類されるブラッド、スウェット&ティアーズの「スピニング・ホイール」(とパッケージに書いてあるけれど、本当の音は「ウィール」)とチェイスの「黒い炎」のカヴァーは僕も前から知っていたんだけど、ジェイムズ・ブラウンを歌っているのは知らなかった。

 

 

以前これも誰だったか(これはプロの方)忘れちゃったけど、ジェイムズ・ブラウンの歌は「ハッ!」と「アッ!」と「ウッ!」の三つだけでできていると笑っていたんだけど、もちろんそんなことはなくてJBもちゃんと歌っているのだ。そしてこれはむしろ和田アキ子に当てはまる言い方だよねえ。

 

 

だってテレビでモノマネ芸人がよくやるじゃないか。和田アキ子の真似をして「ハッ!ハッ!」としか言わないじゃん(笑)。彼女ももちろんちゃんと歌っているけれど、本当にこの種の合の手の気合の叫びみたいなのが多い歌手だよね。『Dynamite Soul Wada Akiko』でも頻繁に出てくる。

 

 

『Dynamite Soul Wada Akiko』のなかで一番グルーヴィーでソウルフルでカッコイイと感心するのは10曲目の「古い日記」だなあ。収録されているのは1974年のオリジナル・シングル・ヴァージョン。ドラムスがファンキーな叩き方で、コンガがポンポンと鳴って気持良いグルーヴ。

 

 

まあしかしアレだ、1996年にコモエスタ八重樫が『Dynamite Soul Wada Akiko』みたいなのをコンパイルしてワーナーがリリースしたのは、間違いなく例のレア・グルーヴ・ムーヴメントの一環だよなあ。以前も書いたようにこの種のものにはあまりハマらなかった僕の少数の例外だなあ。このアルバムはなかなかいい編集盤だし、黒いものが好きな洋楽ファンにもオススメ。

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