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2016/06/20

ホンキー・トンク

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ローリング・ストーンズの1969年作『レット・イット・ブリード』A面三曲目の「カントリー・ホンク」は、このバンドの最も有名な代表曲の一つ「ホンキー・トンク・ウィミン」の原型というか同じ曲のヴァリエイションだね。

 

 

「カントリー・ホンク」https://www.youtube.com/watch?v=hsEsSB5390I

 

「ホンキー・トンク・ウィミン」https://www.youtube.com/watch?v=pSdrG2Rl77g

 

 

ほぼ同じだ。「カントリー・ホンク」の録音が1969年6/10月。「ホンキー・トンク・ウィミン」は69年6月録音とほぼ同時期。後者のシングル盤は同年7月に発売されて大ヒットした。

 

 

「ホンキー・トンク・ウィミン」はその後ストーンズの各種ベスト盤に収録されるようになり、ライヴの定番レパートリーにもなって、現在に至るまでどんなライヴ・ステージでもほぼ毎回演奏されているので、公式ライヴ盤に収録されているヴァージョンだけでも複数あるのはみなさんご存知の通り。

 

 

ストーンズがライヴでやる「ホンキー・トンク・ウィミン」で個人的に好きだったのが1995年東京ドーム公演のもので、生でも聴いたけれど、その後VHSテープ二巻で発売されたのを繰返し見聴きしていた。キース・リチャーズが間奏のソロ部分以外はピックを使わず、右手指をパッと開いて弾くのが印象的だった。

 

 

その1995年東京公演のVHSはなぜだかいまだにDVD化されておらず、VHS再生機器も手放してしまったので現在は見聴きできないのが残念。YouTubeで探せば誰かが上げてくれているかもしれないけれどね。公式CD化されているものでは『ラヴ・ユー・ライヴ』一曲目のがいいよね。

 

 

いろんな音楽家が「ホンキー・トンク・ウィミン」をカヴァーしているけれど、僕が好きなのはジョー・コッカー1970年のライヴ・アルバム『マッド・ドッグズ・アンド・ジ・イングリッシュメン』一曲目に入っているもの。これには大勢の米LAスワンプ勢が参加しているからね。

 

 

LAスワンプと「ホンキー・トンク・ウィミン」は深い関係があるはずだ。これと同曲だと最初に指摘した「カントリー・ホンク」はロサンジェルスで録音されていて、バイロン・バーリンのフィドルが入っているけれど、このフィドラーは他ならぬグラム・パースンズ人脈なのだ。

 

 

最初に貼った音源をお聴きになれば分るように「カントリー・ホンク」はグラム・パースンズに強く影響を受けたと思しきカントリー・ロック、というかこれはカントリー・ナンバーそのものなんじゃないかというフィーリングだ。ストーンズのレコード録音史上初のカントリー・ナンバーと言えるかもしれない。

 

 

「ホンク」とか「ホンキー・トンク」という言葉はアメリカ音楽界では主に南部音楽で古くからあるスタイルの名称。一説に拠ればホンキー・トンクはラグタイム・ピアノの一スタイルを指す言葉として使われはじめたのが最初らしい。その後ブギウギ・ピアノでもそう言われるものがある。

 

 

しかしホンキー・トンクという言葉がアメリカ音楽界で一般的になるのは、おそらく1950年代のカントリー(ヒルビリー)・ミュージックにおいてだろう。以前ハンク・ウィリアムズについて書いた際にも触れたようにハンクのレパートリーには「ホンキー・トンク」とかそれに類する言葉が入る曲名がかなりある。

 

 

この言葉が曲名に入るもので僕が持っている一番古い音源は、ブギウギ・ピアニスト、ミード・ルクス・ルイスの1927年「ホンキー・トンク・トレイン・ブルーズ」。ミード・ルクス・ルイスは、これを1950年代まで繰返し録音している。

 

 

 

その次がジャズ・ピアニストにして初期ジャズ界の巨人ジェリー・ロール・モートンの1938年「ホンキー・トンク・ミュージック」。 お聴きになれば分るようにブギウギ・ピアノの影響がモロに出ていて、しかもそれがお得意の "spanish tinge" と結合している。

 

 

 

もちろんホンキー・トンクという言葉は元は音楽用語というわけではない。19世紀後半の南部や西部で下品で猥雑な見世物を出す小屋や劇場を指す言葉として使われていた。もちろんその際には音楽を伴うのが普通なので、次第にそういう下品で猥雑な主にピアノで奏でる音楽を指すようになったんだろう。

 

 

ストーンズの連中だってこんなことは当然知っていただろう。「カントリー・ホンク」「ホンキー・トンク・ウィミン」の歌詞にはそんな猥雑というかもっと露骨にセックスに言及する部分がある。ホンキー・トンク・スタイルのピアノ音楽はアメリカ南部が中心だったので、メンフィスが出てくるのも当然だ。

 

 

そんな猥雑というか卑猥なフィーリングは「ホンキー・トンク・ウィミン」の曲調にもはっきり聞取れるけれど、原型(?)である「カントリー・ホンク」の方がもっと強いような気がするんだよね。カントリー風ホンキー・トンク・スタイルのフィドルもそんな感じだし、ちょっと聞えるスライド・ギターもそうだよね。

 

 

ストーンズの「カントリー・ホンク」はエレクトリック・ベースも入っていない完全なカントリー・ミュージック・スタイルのアクースティック・ナンバーで、なんだか古い時代のアメリカ南部を連想させる感じで僕は大好きなんだよね。かなりの数演奏している「ホンキー・トンク・ウィミン」にアクースティック・ヴァージョンってあるのかなあ?

 

 

前述の通り無数のカヴァーがある「ホンキー・トンク・ウィミン」。この言葉を普及させた第一人者であるハンク・ウィリアムズの息子、ハンク・ウィリアムズ・Jr もカヴァーしているという面白さ。 まあ普通のロック・ナンバーって感じで猥雑な感じは薄いけどね。

 

 

 

ブラック・ミュージック・ファンに一番有名なのは、おそらくアイク&ティナ・ターナーの1969年ヴァージョンだろう。 僕もこのヴァージョンは大好き。ティナはこういう卑猥な感じの曲を得意にしていたし、アイクのギターもいいよね。

 

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