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2016/06/01

ハービー・ファンクでダンス!

Unknown









ハービー・ハンコックに『ダンシン・グルーヴズ』というCDアルバムがある。オリジナル・アルバムではない。1999年にSMEから日本でだけリリースされたコンピレイション盤だ。SMEからということはつまりコロンビア時代の、しかもタイトル通りダンサブルなファンク・チューンばかりだ。

 

 

全14曲入っている『ダンシン・グルーヴズ』。目玉は間違いなくラストの「カメレオン」12インチ・シングル・ヴァージョンということになるだろう。1973年の『ヘッド・ハンターズ』収録のハービー・ファンクの代表曲だけど、『ダンシン・グルーヴズ』収録のはその10年後83年にハービーとデイヴィッド・ルービンソンがリミックスしたヴァージョン。下に貼るのは『ダンシン・グルーヴズ』のではない。それはYouTubeになかった。

 

 

 

元々『ヘッド・ハンターズ』に収録されているオリジナルの「カメレオン」は15分以上ある。それを7インチのシングル盤用に3分程度に編集・短縮したものが当時発売されていた。『ダンシン・グルーヴズ』というコンピレイションは全てそういうシングル・ヴァージョンを集めたもので、当然全部約三分。

 

 

ラストに長めの12インチ・シングル・ヴァージョンがある「カメレオン」だって、三分程度の7インチ・シングル・ヴァージョンが一曲目に収録されているし、その他全て1970年代のハービー・ファンクを三分程度の7インチ・シングル盤用に短縮したものが13曲入っているんだよね。これが楽しい。

 

 

以前も書いたように、ジャズでもなんでもポピュラー・ミュージックというものは約三分のダンス・ミュージックだというのがその本質なんじゃないかと最近の僕は考えるようになっているけれど、1970年代のハービー・ファンクもオリジナル・ヴァージョンはどれもこれも全部10分以上あるものばかり。

 

 

ハービーも元々はジャズ畑の音楽家だし、1970年代のファンク転向後も現在に至るまでストレート・アヘッドなジャズも結構やっている。だけど僕はファンク・ミュージックをやる時のハービーの方がはるかに面白いような気がしていて、少なくとも個人的な好みでは断然ファンク・ハービーの方が好きなのだ。

 

 

そういうハービー・ファンクも当時LPレコードで発売されていたオリジナル・ヴァージョンは書いたようにどれも長くて10分くらいあって、アルバムの収録曲は全部で四曲とか多くても七曲程度とかだった。ジャズな耳にはハービーやベニー・モウピンなどのソロがたっぷり長く聴けるそっちの方がいいんだろう。

 

 

僕も最近まで全く同じ耳だった。10分とか17分とかあったりするハービー・ファンクの各人のソロ廻しを楽しんでいたのだった。それは今でも聴くと楽しくて、それらが7インチ・シングル盤用に短縮されたものばかり集めた『ダンシン・グルーヴズ』も、買った当初は大して聴いていなかった。

 

 

ハービー・ファンクのCDアルバムだから一応買って持っておくかという程度の気持と、あとはやはり最初に書いたようにラストに収録されている12インチ・シングル・ヴァージョンの「カメレオン」がレアで未CD化だったので、それを聴きたいというのが最大の購入動機だった。

 

 

ところがこの『ダンシン・グルーヴズ』を最近聴直してみたら、なんだかこっちの方がオリジナル・アルバムより楽しいんじゃないかと思えてきたのだった。約三分程度に短縮されていることでかえってハービー・ファンクの本質が剥き出しになっているように思うんだよね。

 

 

それはつまりアルバム・タイトル通り「踊れる」ってことなんだよね。今聴くとオリジナル・アルバムだって踊れるんだけど、僕は(あるいは他のジャズ中心のリスナーも)踊るというよりジッと座って耳を傾けていたのだった。だいたい昔のジャズ喫茶では指でリズムでも取ろうもんなら、ただそれだけのことでギロリと睨まれた。

 

 

むろんそういうジャズ喫茶ばかりではなく、なかにはダンサブルなものがかかると膝を揺すったりする客が多い店もあって、僕もどっちかというとそういう人間で、僕の話によく出てくる戦前ジャズしかかけなかったケリーというジャズ喫茶でも、マスター自らがカウンター内で身体でリズムを取っていた。

 

 

しかしそういう店・客は1970年代末〜80年代ですらまだまだ例外的で、多くのジャズ喫茶ではみんなジッとおとなしく座って動かずに聴いていたのだった。今考えたらジャズだってダンス・ミュージック(といってもフリー・ジャズだけは踊りにくい)なんだからちょっとおかしなことだ。

 

 

何度も書いているんだけど1970年代のハービー・ハンコックだけでなくその頃の多くのジャズ畑出身の音楽家がファンクに接近・合体して創り出していたような音楽は、鑑賞芸術音楽になってしまうビバップ以前の戦前ジャズが持っていたブラック・ミュージック的でダンサブルなグルーヴ感を再び取戻すようになっていただけだと思うんだよね。

 

 

ハービー・ファンクもまたその一つで例外ではないんだから、ディスコやクラブで踊りやすい三分程度の7インチ・シングル盤用に編集・短縮したものの方がむしろチャーミングなんじゃないかと思えてきちゃった。だから1999年リリースの『ダンシン・グルーヴズ』みたいなコンピレイション盤は大歓迎されるべきだろう。

 

 

『ダンシン・グルーヴズ』に収録されているシングル曲は、1973年の「カメレオン」(オリジナルは『ヘッド・ハンターズ』)から78年の「ユー・ベット・ユア・ラヴ」(オリジナルは『フィーツ』)まで。続けて聴くと同じダンサブルなハービー・ファンクでも少しずつ趣が変化していくのが分る。

 

 

六曲目の「アクチュアル・プルーフ」(オリジナルは1974年『スラスト』)まではエレキ・ギターの音は控目にしか聞えない。これはもちろんオリジナル・セッションがそうなっているからで、主にハービーのエレピやシンセサイザーとベニー・モウピンのサックスやフルートで構成されているから当然。

 

 

 

それが七曲目の「ドゥーイン・イット」(オリジナルは1976年『シークレッツ』)からは、冒頭からいきなりファンキーなギター・カッティングが出てきて、しかもそれが二本絡み、さらにスパイス的にグルーヴィーなヴォーカル・コーラスまで重なっている。この時期から音の傾向が変ったよね。

 

 

 

続く八曲目「ハング・アップ・ユア・ハング・アップス」(オリジナルは1975年『マン・チャイルド』)でもワー・ワー・ワトスンの絶妙なギター・カッティングを中心に曲が組立てられていて、その上にハービーの鍵盤やホーン楽器が乗る。その構造が7インチのシングル・ヴァージョンでよりクッキリ分る。

 

 

 

続く曲は全部そうで、ファンキーなギター・カッティングをメインに音を組立てていて、「アクチュアル・プルーフ」まではエレベ+ドラムスの上にハービーの鍵盤という土台だったのが完全に変貌している。かつてのボス、マイルス・デイヴィスは1973年頃からギター中心だったけど。

 

 

ファンク・ミュージックはギターが聞える方が僕は好きなんだよね。そりゃもう大学生の時にジェイムズ・ブラウンの1967年アポロ・ライヴで刻むジミー・ノーランに惚れて以来の大好物で、ああいったギター・カッティングさえ聞えればそれだけでご飯を何杯でも食べられる体質なんだな。

 

 

ただしマイルス・ファンクはヘヴィーでとっつきにくくダンサブルなフィーリングが薄いのに対し、1975年からのハービー・ファンクは明快にダンサブルでノリやすく分りやすい。あまりに気持いいから人によっては軽薄だと聞えたりしたはずだ。だからマイルス・ファンクよりはるかに評価が低い。

 

 

だけれども1994年に例のUS3がハービーのかつての代表的ジャズ・ナンバー「カンタループ・アイランド」をサンプリングして使ったのが大ヒットして以後は、こういうポップなハービー・ファンクが理解され支持されるようになって、『ダンシン・グルーヴズ』が99年にリリースされたのもその流れだったんだろう。

 

 

ラストの14分にわたる「カメレオン」の12インチ・シングル・ヴァージョン以外は、どれもこれもハービー・ファンクが三分程度に短くまとめられている『ダンシン・グルーヴズ』。こういうのこそ(ファンク化してはいるものの)ジャズ系音楽だって三分間のポップなダンス・ミュージックであるという本質をよく表現しているんだよね。

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