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2016/07/06

ブルージーなハイ・ソウルの女性歌手

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いろいろなソウルのなかでもメンフィスのハイ・サウンドが一番好きなんじゃないかとすら思う僕なのに、アン・ピーブルズを知ったのはティナ・ターナーが『プライヴェイト・ダンサー』で「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」をやっていたから。それまでアン・ピーブルズの名前すら知らなかった。

 

 

ティナ・ターナーの1984年の復帰作『プライヴェイト・ダンサー』だって僕にとっては初ティナ・ターナーで、どうして<復帰作>と言われているのかすら分っていなかったというような具合。しばらく経ってアイク&ティナ・ターナーで活躍した人だということをようやく知ったのだった。

 

 

あのティナ・ターナーの『プライヴェイト・ダンサー』からは何曲かシングル・カットされ、プロモーション・ヴィデオもMTVで盛んに流れていて、特に「愛の魔力」(ワッツ・ラヴ・ガット・トゥ・ドゥー・ウィズ・イット)が良かった。評価も高くてグラミーかなにかの賞をもらったはず。

 

 

『プライヴェイト・ダンサー』がかなりの話題になってヒットしたので、当時のFMラジオなどがよくティナの特集番組を流していて、それでアイク&ティナ・ターナー時代の曲もたくさん流れて、(当時の)夫と組んでやっていたその時代のこともだんだんと分ってきたのだった。

 

 

ティナの『プライヴェイト・ダンサー』にはアン・ピーブルズの「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」だけでなく、アル・グリーンの「レッツ・ステイ・トゥゲザー」もあって、これもそのティナのヴァージョンで初めて知った曲。それもハイだけど、このレーベルのことだって当時は無知。

 

 

だからあのティナの復帰作は僕にとってのソウル入門、ハイ・サウンド入門みたいなものだったのだ。今聴くとそのハイ・ナンバー二曲より、やっぱり「愛の魔力」の方がはるかに出来もいいしティナの歌もバックのサウンドもチャーミングだとは思う。

 

 

 

とにかくそんな具合でティナのヴァージョンで「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」と、これを書いて歌ったアン・ピーブルズのことを初めて知って、ちょっとずつ追掛けるようになったのかと言うとそうでもなく、CDリイシューがはじまってようやくアルバムを一つ買ってみただけだという体たらく。

 

 

それが1972年の『ストレイト・フロム・ザ・ハート』と74年の『アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン』の2in1CD。持っているそれを見てみたら1992年のリリースになっている。ソウルに関しては僕はまあこんなもんなんだよね。アン・ピーブルズはいまだにこれしか聴いていないのだ。

 

 

でもこの 2in1 がなかなか良くて、買って以来現在に至るまでの愛聴盤。本格的にハイ・サウンドを聴くようになったのは、僕の場合以前も書いたO.V. ライトの『ライヴ・イン・トーキョー』のリイシューCDからで、同じ頃にアル・グリーンも聴いてみたら素晴しかった。

 

 

O.V. ライトはハイの人というよりゴールドワックスやバックビートのイメージなんだろうけれど、アル・グリーンとかアン・ピーブルズは完全にハイの申し子みたいな歌手だよなあ。アン・ピーブルズの場合はそもそも21歳の時にハイのウィリー・ミッチェルに見出されてデビューした人なわけだし。

 

 

デビュー前のアン・ピーブルズはやはりこれまたゴスペルを歌っていたらしい。父親の率いるその名もピーブルズ・クワイアという聖歌隊。黒人ソウル歌手って第一号のサム・クックがそうであるように、その後もなんだか全員ゴスペル出身なような気がするなあ。両方を行き来している人もたくさんいるしね。

 

 

アン・ピーブルズだって『ストレイト・フロム・ザ・ハート』『アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン』を聴いたらゴスペル風歌唱法であることは明々白々だろう。強い声の張り方といいメリスマの廻し方といいリズムへのノリ方といい完全にゴスペル・スタイルだ。

 

 

とはいうもののアン・ピーブルズ最大のヒット曲にして代表曲の「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」だけはあんまりゴスペルが強くもないように聞える。もっとこうあっさりとしたサラッとした歌い方だよなあ。そういう創りの曲だし。

 

 

 

バックのサウンドだってアン・ピーブルズの他の曲で聴けるような典型的ハイ・サウンドとはちょっと違っている。といってもリズム・セクションの演奏やウィリー・ミッチェル・アレンジのホーン・セクションの入り方なんかはやはりハイっぽいけれど、全体的にそれをあまり感じさせない仕上り具合だ。

 

 

だいたい「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」冒頭から鳴りはじめるキュッキュッというかコンコンというかあのヘンな音はなんなんだ?おそらくエレキ・ギターで、弦をミュートして弾いて出している音なんじゃないかと推測するんだけど、こういう音って僕は他にはたった一つしか知らないもんね。

 

 

それはエルヴィス・プレスリーのサン時代1956年録音の「ブルー・ムーン」。チャカポコという音が聞えるんだけど、これが弦をミュートしたエレキ・ギターで出している音なのだ。元々これはロジャース&ハート・コンビが1934年に書いたスタンダード・ナンバー。

 

 

 

ロック界ではこのエルヴィス・ヴァージョンが初のカヴァーで、これで一般的に広く知られるようになって以後はいろんなロック歌手やその他の歌手が歌うようになった。でもエルヴィスのサン録音ヴァージョンのチャカポコというあの音をどうやって出しているんだか、僕は長年分っていなかったんだよなあ。

 

 

エレキ・ギターの弦をミュートして弾くというのはいろんな人が結構やっていると思うんだけど、エルヴィスの「ブルー・ムーン」やアン・ピーブルズの「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」みたいな印象的な使われ方をしているものは、僕は他には思い浮べられない。でもきっと他にもあるんだろうね。

 

 

「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」のあのキュッキュッという印象的なサウンドは、最初に書いたティナ・ターナー・ヴァージョンでも再現されている。しかしこっちは多分シンセサイザーで出しているんだろうなあ。

 

 

 

「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」は失ってしまった愛を想いだして悶々とするという内容の歌だから、窓に打ちつける雨の音がどうたらこうたらと歌っているその雨の音を表現しようとして、あのチャカポコというかキュッキュッというかコンコンという音を入れたんだろう。印象派みたいなもんだ。

 

 

「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」以外のアン・ピーブルズの代表曲というと、「アイム・ゴナ・ティア・ユア・プレイハウス・ダウン」になるんだそうだ。でもこっちは僕はさほど強い魅力は感じないんだなあ。どっちもアルバム『アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン』に収録されている。

 

 

個人的にはアルバム単位なら『アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン』よりも、それと 2in1 で収録されているその前の『ストレイト・フロム・ザ・ハート』の方が好きだし出来もいいんじゃないかなあ。「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」みたいな印象的な曲はないけれど、全体的にはこっちの方がいいような気がする。

 

 

その 2in1 しか聴いていないんだから、えらそうなことは全然言えないんだけれど、アン・ピーブルズってソウル歌手なのに12小節3コードのブルーズ形式の曲がかなりあるよね。ちょっと珍しいんじゃないだろうか?完全なブルーズ形式でなくても似たようなコード進行の曲が多いしなあ。

 

 

そのあたりはやはりブルーズ・ファンである僕がかなり気に入っている部分なのだ。ブルーズ形式で一度(例えばC)から四度(例えばF)になる五小節目とか、いったん一度に戻って今度は五度(例えばG)になる九小節目とか、あそこらあたりのコードが変る瞬間にゾクゾクしちゃう体質なんだよね、僕は。

 

 

そういうコード・チェンジがあのハイ・リズムの演奏で行われるもんだからタマランのだよなあ僕は。ブルーズ形式のソウル・ナンバーを、ソウル界では僕の最も好きなメンフィスのハイ・サウンドに乗せてブルージーかつソウルフルに歌うなんてのはこれ以上言うことない旨味を感じちゃうなあ。

 

 

それはそうと『ストレイト・フロム・ザ・ハート』『アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン』の 2n1 を聴いていると、いろんな曲で<ウィンドウ・ペイン>だとか<キャント・スタンド・ザ・レイン>だとかいう言葉が出てくるんだけど、これはアン・ピーブルズのトレード・マークみたいなもんだったのだろうか?

 

 

そのあたりは一つ 2in1を聴いているだけの僕には分らないんだけど、まあいずれにしてもこの文章を書くために聴直したらアン・ピーブルズはやっぱりブルーズが多いソウル歌手で最高だよなあ。やっぱり他のアルバムも買おうっと。なんだか買いたいものがたまりにたまって、こりゃお財布が持たないよ。

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