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2016/08/29

バンドやろうぜ!

Unknown

 

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ビートルズやその他1960年代に大ブレイクして「ザ・ブリティッシュ・インヴェイジョン」(11世紀のノルマン人の征服、あれは通常 "The Norman Conquest" だが "The Noman Invasion" と呼ぶことがあるのに由来した名称)と呼ばれたUKロック。

 

 

あのブリティッシュ・インヴェイジョン、なかでもビートルズの世界中での大流行が世の中にもたらした様々な功績のうち、ひょっとしたらこれが最も大きなものだったのかもしれないと僕が思うのは「こりゃ、僕たちでもできそうじゃないか!」とみんなに思わせてくれたことだったかもしれないよなあ。

 

 

もちろんそれは大きな勘違いなんだけど、そう思わせてくれて、ギター一本買って(あるいはもらって)それをかき鳴らして歌えば、ビートルズみたいなあんな具合に楽しい音楽ができちゃうかもしれないぞとなって、実際多くのアマチュア・ロッカーが誕生したのだった。世界各地でね。

 

 

初期ビートルズの楽曲は創りがシンプルで、難しいコードがあまりなく、どの曲もだいたい三つ程度しかコードを使っておらず(ブルーズと同じ)、アレンジも複雑なものじゃないし、ドラマーもなんだかそんなに上手くなく(笑)、間奏のギター・ソロも真似しやすそうだったもんなあ。

 

 

だからギター買ってちょっと練習すれば素人だってできちゃいそうに聞えるのだ(もちろんそれは勘違いなんだけど)。それに加え初期ビートルズ四人のイメージも、そんな近づきにくい雲の上の存在みたいなものではなく、近所のそこらへんのお兄ちゃんといったものだったから一層やりやすい。

 

 

それで世界中にビートルズをコピーしたり、似たような感じのブルーズ・ベースのオリジナル曲をやるアマチュア・バンドがまるで雨後の筍のごとく出現した。1960年代半ば頃のこと。それをアメリカでは「ガレージ・ロック」という。ガレージ(車庫)で練習する場合が多かったのでこの名称がある。

 

 

要するに「ちょっとバンドやってみようよ」ってことなんだよね。そういえば『バンドやろうぜ』っていう日本のアマチュア・ロッカー向けの雑誌があったなあ(今でもあるの?)。何度か話に出しているが僕の下の弟はアマチュア・ロック・ギタリストで、高校〜大学の頃、文化祭・学園祭その他で頻繁に演奏していたんだけど、就職して後も次のような話をよくしていた。

 

 

その弟は塾の英語教師なんだけど、かつてのギター・キッズでバンド経験もあるってのをどこで聞きつけたのか、一部の男子生徒が雑誌『バンドやろうぜ』を教員室に持ってきて弟に見せて、「としま先生、これどうですか!」なんて言うことがよくあったらしい。そんな笑い話をかつて弟はよくしていたなあ。

 

 

バカバカしい話だと思うだろうが、こういう具合の現象は間違いなく世界中にあって、その原点を辿るといわゆるガレージ・ロック連中の、ちょっとやってみようよっていうロックンロールの原初衝動みたいなものに行着く。そんなロック原初衝動を掻立ててくれたのがビートルズだったのは間違いないんだよね。

 

 

これが大学生の頃に弟とは違ってジャズに夢中だった僕みたいな人間だとちょっとこうはなりにくい。もちろんジャズだってなんだってどんどん好きになっていけば、自分でもちょっと演奏してみたいなと思いはじめるものだし、実際そういう人が多い。だけどジャズとかクラシックとかはちょっと難しいもんなあ。

 

 

ジャズでもクラシックでもその他多くの音楽ジャンルでも、楽理を勉強したり楽器演奏にかなり熟練しないとマトモな演奏はできないし相手にしてもらえない。それに使っている楽器を入手するのがこれまたちょっと容易ではないのだ。だいたいなんだって安物ギターと比較すればそこそこ高価だもんなあ。

 

 

ピアノなんかちゃんとしたものを自宅に置いて持っている人は多くないから、持っている人の家にお邪魔して弾かせてもらうとかしないといけないし、それだって他人の家で下手くそな練習をそうそう何時間も続けるのは遠慮しちゃうだろう。ピアノ教室に通うのにだって月謝がいるんだもんなあ。それにピアノは自分ではチューニングすらもしにくい。

 

 

ギター以外のほぼ全ての楽器が似たような具合じゃないかなあ。その上買って即ちょろっと触るだけでポロ〜ンと音が鳴るギター(それはまあピアノもそうだが)とは違って、管楽器の場合はそもそも音が出ないんだよね、最初は(苦笑)。サックスはまだあれだけど、トランペットなんかプス〜ッて言うだけだもん。

 

 

そんな感じだから、楽器の入手も演奏も難しければ使っているコードなども難しい音楽は、そんな気楽に誰か友人宅のガレージに集ってちょっとやってみようなんてなりにくいよね。そこがロックとの大きな違いで、そしてこれこそがロックがこれだけ全世界に拡散・浸透した最大の理由じゃないかなあ。

 

 

その最も大きな原動力がデビューから1960年代半ば頃までのビートルズだったことは疑いえないように僕は思う。このことが彼ら四人がこの地球上にもたらした最大の功績だったんじゃないかと僕は思うんだよね。鬱憤がたまりにたまっているティーネイジャーが、ただ単にギター鳴らしてシャウトして発散できるようになった。

 

 

前述の通り1960年代のアメリカにおけるそういうものをガレージ・ロックと呼ぶ。それは基本的にはいわば草の根的ムーヴメントなんだけど、なかにはプロ・デビューしてレコードを発売し成功するバンドもそこそこあった。13th・フロア・エレヴェイターズとかは代表的だから、よく知られているだろう。

 

 

ザ・シャドウズ・オヴ・ナイトもそうだよなあ。このバンドについては以前ザ・スパイダースなど日本のグループ・サウンズについて書いた際ちょこっと触れた(https://hisashitoshima.cocolog-nifty.com/blog/2015/11/post-6d75.html)。書いてあるように先輩女性ロック・ファンに教えていただいて大好きになったバンド。

 

 

グループ・サウンズに代表される1960年代後半の日本のムーヴメントも、これまたビートルズやストーンズなどブリティッシュ・インヴェイジョンの影響ではじまったものだよなあ。僕は最初よく分っていなかったのだが、グループ・サウンズはガレージ・ロック的で、ロックの原初衝動が具現化したものだろう。

 

 

そんでもって今聴き返すと誰でもはっきり聴取れると思うけど、グループ・サウンズの多くに初期ビートルズや初期ストーンズなどの痕跡が鮮明にある。まあわりと最近までこれが分ってなかった僕の耳がちょっとどうかしているんだけどさ。件の先輩女性ロック・ファンは20年以上前から繰返し指摘していた。

 

 

その女性の勧めで聴くようになって今では大好きな前述のザ・シャドウズ・オヴ・ナイト。彼らはシカゴ近郊の出身なんだけど、しかし直接的にはやはりUKブルーズ・ロック勢からの影響が強い。しかしそのUKブルーズ・ロックはすなわちシカゴ・バンド・ブルーズがルーツなんだからこれは一体・・・。

 

 

ザ・シャドウズ・オヴ・ナイト最大のヒット曲にして代表曲が「グローリア」なんだけど、これを聴くとやっぱりブリティッシュ・ビート・ロックなんだよなあ。このバンドのCDはベスト盤を除き全部で三枚あって、どれを聴いてもだいたい似たような感じ。

 

 

 

しかしシャドウズ・オヴ・ナイトにはアメリカ黒人ブルーズのカヴァーもある。マディ・ウォーターズの「アイ・ガット・マイ・モージョー・ワーキング」や「フーチー・クーチー・マン」とかハウリン・ウルフの「スプーンフル」などなどだ。ちょっぴりサイケデリックな感じになっている。

 

 

サイケデリックになるのは1960年代中期だから当然なんだけど、UKブルーズ・ロック勢とバンドの出身地であるシカゴの黒人ブルーズと、その両者がないまぜになっているような感じがザ・シャドウズ・オヴ・ナイトというバンド。言うまでもなくそれら二つは切離せないものだから。

 

 

「バンドやろうぜ」的なロック原初衝動のそのルーツは、だからブルーズに他ならない。初期ビートルズでもシンプルな3コード(に近い)のものばっかりなのは完全にブルーズ由来。そしてロック勃興以前にアメリカで「楽器鳴らしてちょっと歌おうぜ」的な原初音楽衝動を実現していたのがブルーズだった。

 

 

安物ギターを一本買って、それを3コードでボロ〜ンと鳴らしながら自分のなかの心情をなにかテキトーな歌詞にして歌っていれば、それでなんとなく「音楽」みたいなものとしてカッコが付く。そんなブルーズの原初衝動をロックに変えて1960年代に全世界に拡散したのがビートルズなどの連中だったんだよね。

 

 

ロックはビートルズがはじめたものなんかじゃないけれど、これだけ世界中に普及しまくっているのは、間違いなく「あれならちょっと真似できそう」「僕らもやってみようか」と世界中のティーネイジャーに思わせてくれたビートルズの功績。やっぱり彼ら四人のおかげなのだ。

 

 

プロの音楽家とか芸能者とかは近寄りがたい遠い世界の人、いわば異物であり異能の人なはずだ。それを近所のお兄ちゃん的イメージで、ちょっと真似できそうと思えるほど近づきやすく親しめるものにしたのが1960年代前半のビートルズ。21世紀の日本ならAKB48とかHKT48とかその他いろいろあるガール・グループが同じようなことかも。

 

 

ああいったAKB48その他の日本のガール・グループについては、歌がはっきり言って聴けたもんじゃないとかいろいろと悪口を言う人も(特に熱心な音楽リスナーのあいだに)ものすごく多いけれど、彼女たちは近づきやすいどころか実際近づいてきているじゃないか。そういうのがエンターテイメント本来のありようかもしれないよ。

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