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2016/08/15

『つづれおり』に聴けるファンキー要素

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これまた猫ジャケなので、その意味でも好きなキャロル・キングの『つづれおり』(タペストリー)。この1971年のアルバムについて必ずしも多くの人が言っているようにも思えないのだが、これは結構ファンキーなところがある作品じゃないだろうか。僕もそんなことには長年気付いていなかったけれど。

 

 

『つづれおり』で僕がはっきりファンキーだと思うのは「アイ・フィール・ジ・アース・ムーヴ」「イッツ・トゥー・レイト」「スマックウォーター・ジャック」の三曲だ。この三つは熱心なブラック・ミュージック・ファンならみんなその一種の黒い音楽性みたいなものに気が付くだろう。

 

 

黒い音楽性といっても、そのあれだ、ジェイムズ・ブラウンみたいな人と比較してもらっちゃ困る。そうなったらそりゃ全然黒くなく真っ白けではあるけれど、シンガー・ソングライターとしてのキャロル・キングはそんな部分とは無縁な音楽家だと見做されているかもしれないので、そういう人にしては黒いという意味。

 

 

『つづれおり』一曲目の「アイ・フィール・ジ・アース・ムーヴ」。冒頭からキャロル・キングが弾くピアノのリフがちょっぴりファンキーだし、直後に入ってくるバック・バンドが奏でるリズムもそんな黒い感触が少しあるよなあ。曲のメロディもそうだね。

 

 

 

中間部でキャロル・キングのピアノとダニー・クーチのエレキ・ギターとのソロの短い応酬になるけれど、そこもまあまあファンキーなように僕は思う。ダニー・クーチ(コーチマー)は元々そんな部分のあるギタリストで、ロックだけでなくブルーズやリズム&ブルーズ系の仕事もこなしている人だもんなあ。

 

 

キャロル・キングの弾くピアノだって、シングル・トーンによるアルペジオみたいなもの(は西洋白人的)は使わず、もっぱらブロック・コードで弾いているもんなあ。そのブロック・コード弾きもメロディを奏でるという感じじゃなく、リフを叩きつけるように弾く打楽器奏法(アフリカ的)だ。

 

 

キャロル・キングの弾くピアノはだいたいいつもそうで、右手のシングル・トーンでキレイで単線的なメロディを弾いたりアルペジオを奏でることの方が少ない。少ないというか殆どないような気がする。彼女のピアノは歌の間奏部でソロを弾くことも少なく、だいたいいつもバッキングでブロック・コード弾き。

 

 

『つづれおり』三曲目「イッツ・トゥー・レイト」では、主役のピアノを含むバンドの演奏がかなりアレンジされていて、冒頭から何度も固まりのようなリフが出てくる。その繰返されるリフのフレーズとリズムは、間違いなくリズム&ブルーズ由来のものだ。

 

 

 

「イッツ・トゥー・レイト」ではラルフ・シャケットがファンキーなフェンダー・ローズを弾いているし、ジョエル・オブライエンのドラムスが叩出すビートもロックよりもややブラック・ミュージック寄りだ。ダニー・クーチがギターだけでなくコンガも叩いているせいでほんのりラテン風味すら感じる。

 

 

「イッツ・トゥー・レイト」は一曲を通してキメの多い曲で、そのキメの部分はもちろん複数の楽器奏者による合奏だから間違いなく事前に周到にアレンジされていて、綿密にリハーサルをやっているような演奏だ。このややファンキーに聞えるキメの多いアレンジを施したのはいったい誰なんだろうなあ。

 

 

『つづれおり』は通常の一枚物リイシューCDと2008年リリースのCD二枚組レガシー・エディションの二つを僕は持っているのだが、どっちのパッケージのどこにもアレンジャーのクレジットがなく、ネットで調べてみてもやはり明記してあるものが見つけられない。う〜ん、凄く知りたいぞ。

 

 

「イッツ・トゥー・レイト」だけでなく、殆どの曲でかなりアレンジされているのが聴けば分るんだけど、誰がアレンジしたんだろう?全ての曲を書いているキャロル・キングなのか?あるいはプロデューサーのルー・アドラーなのか?リズム・セクションが一体となってリフなどのキメを合奏しているもんなあ。

 

 

また「ウェイ・オーヴァー・ヤンダー」にはストリング・カルテットによる演奏が入っていて、当然のことながら譜面化されているものを弾いているわけだし、その他「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」にはチェロが入っている。前述のその他の曲含めやはりアレンジャー名を明記しておいてほしかった。

 

 

『つづれおり』でアレンジされていない曲ってあるいは11曲目のアルバム・タイトル曲「つづれおり」だけなんじゃないかなあ?これはキャロル・キング単独の演唱(とはいえ鍵盤楽器は各種を多重録音)だからね。次のアルバム・ラスト「ア・ナチュラル・ウーマン」もチャールズ・ラーキーのベースが入るだけなので、あるいはそうかもしれない。

 

 

「ア・ナチュラル・ウーマン」は上で『つづれおり』で黒人音楽要素を感じる三曲に入れておかなかったけれど、ご存知アリサ・フランクリンが1967年に歌うためにキャロル・キング〜ジェリー・ゴフィンのコンビが書いた曲。当初はシングル盤でリリースされ、その後アルバム『レディ・ソウル』にも収録。

 

 

アリサはその後現在に至るまでライヴで繰返し「ア・ナチュラル・ウーマン」を歌っている。公式ライヴ盤でも1968年収録の『アリサ・イン・パリ』にも収録されているし、YouTube で探すと近年のライヴ・ヴァージョンもいろいろと出てくる。オリジナルもライヴ・ヴァージョンもゴスペル・ライクな曲だ。

 

 

「ア・ナチュラル・ウーマン」という曲自体、元はアトランティックのジェリー・ウェクスラーのインスパイアに基づいてキング〜ゴフィン・コンビが書いたというもので、つまり最初からアリサのような黒人歌手が歌うためのものとしてメロディも歌詞も創られた曲。だから黒いフィーリングがあるのは当然。

 

 

だけれども『つづれおり』ラストにある作者本人のセルフ・カヴァー・ヴァージョンには僕はブラック・フィーリングをほぼ感じないんだなあ。アメリカ女性のためのアンセムのような象徴的な一曲になって、実に多くのアメリカ女性歌手が歌っているけれど、キャロル・キング自身のこれには黒さがないね。

 

 

だから最初の書いた三曲には入れなかった。同様に『つづれおり』九曲目の「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ?」も外した。これもキング〜ゴフィン・コンビがシレルズのために1960年に書いたもの。シレルズはもちろん黒人ガール・ポップ・グループ。まあしかしこれはオリジナルも黒くない。

 

 

1960年代にたくさんあったこの手のガール・ポップ・グループは黒人で構成されてはいても、歌を聴いたら音楽的な黒さを感じるグループは少ないよね。ファンキーというよりもやはりポップで、一般の白人購買層にも受入れやすいような感じに仕立て上げられていたし、実際かなりヒットしていた。

 

 

キング〜ゴフィン・コンビも1960年代前半にそんな曲をいくつも書いているけれど、その事実だけをもってしてこのソングライター・コンビの音楽性を「黒い」ということは、従ってできないだろう。そのあたりは同じように黒人歌手向けに多くの曲を書いたバート・バカラックとちょっと似ているかも。

 

 

シレルズのオリジナルからして黒くはない「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ?」は、だから『つづれおり』収録ヴァージョンも全然黒いところが聞取れない。それにしてもこの曲、タイトルに「スティル」があったりなかったり、どういうことなんだろう?歌詞にも「スティル」が出てくる部分と出てこない部分がある。

 

 

さて『つづれおり』でファンキーさを感じるもう一つが10曲目の「スマックウォーター・ジャック」。お聴きになれば分るように、冒頭からエレベのチャールズ・ラーキーが弾くのは、三度と五度を反復する例のブギウギのパターンに他ならない。

 

 

 

こういうブギウギのパターンはロックの基本中の基本で、チャック・ベリーもそうだし、また例えばスタンダード化しているレッド・ツェッペリンの「ロックンロール」もこれだよね。これが元はブギウギ・ピアニストの左手にルーツがあるなんてみんな意識すらしていないだろうくらい(僕はそれでもいいかもと思っている)拡散・浸透している。

 

 

だからキャロル・キングの『つづれおり』にある一曲でそんなブギウギ・パターンのベースが聴けても特筆すべきことでもないんけれど。でもこの女性シンガー・ソングライターはファンキーさとか黒人音楽要素とは関係が強くない人だと思われてそうだもんなあ。そうじゃないんだということだけは明言しておく。

 

 

『つづれおり』でファンキーな黒人音楽要素をはっきりと僕が感じ取れるのは、以上「アイ・フィール・ジ・アース・ムーヴ」「イッツ・トゥー・レイト」「スマックウォーター・ジャック」の三曲だけなんだけど、それ以外の曲だって鮮明にそうなんだとは感じ取れないほどに同じものが消化吸収されているんだろう。

 

 

そんな部分を抜きにしたシンガー・ソングライターとしてのキャロル・キングでは、1996年リリースの『ザ・カーネギー・ホール・コンサート June 18, 1971』も僕はよく聴く。タイトル通り『つづれおり』のリリースから四ヶ月後の、キャロル・キング初の公式ライヴ・パフォーマンス。

 

 

『ザ・カーネギー・ホール・コンサート June 18, 1971』。これが彼女自身公の面前で行った初のライヴだったなんて、しかもそれがカーネギー・ホールという大舞台でだったなんて、全く感じさせない伸び伸びとした見事なパフォーマンス。脂の乗った活きのいい時期ってのはこうなんだなあ。

 

 

『ザ・カーネギー・ホール・コンサート June 18, 1971』はほぼ全て彼女一人でのピアノ弾き語りだけど、途中、ベースのチャールズ・ラーキーやギターのダニー・コーチマーが出てきて弾いたりするものが少しある。しかしクライマックスは終盤のジェイムズ・テイラーが参加している部分だね。

 

 

『ザ・カーネギー・ホール・コンサート June 18, 1971』15曲目の「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」がはじまる前にジェイムズ・テイラーが登場。キャロル・キングが「ビックリね!」と言って、二人のデュオでこれをやる。この曲はジェイムズ・テイラーも同時期に歌ってヒットさせているもんね。

 

 

このカーネギー・ライヴの「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」におけるジェイムズ・テイラーはアクースティック・ギターを弾きながら歌も歌う。キャロル・キングの歌にハモったり、2コーラス目ではリード・ヴォーカルを取ったり。続く16トラック目のメドレー「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ?」〜「アップ・オン・ザ・ルーフ」も同じ二人のデュオ。

 

 

それら15〜16トラック目のジェイムズ・テイラーとのデュオ部分が『ザ・カーネギー・ホール・コンサート June 18, 1971』のクライマックスに違いない。それが終ると最後に再びキャロル・キング一人のピアノ弾き語りで「ア・ナチュラル・ウーマン」をやって終演。

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