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2016/09/18

忘れじのB級テナー・マン〜ティナ・ブルックス

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Tina_brooks










歴史を形作るような存在なんかじゃ全然ないんだけど、個人的に忘れられないB級音楽家ってのが誰にだっているだろう。僕にとってモダン・ジャズ・サックス界におけるそういう存在がソニー・クリスやティナ・ブルックスになる。ソニー・クリスはチャーリー・パーカー直系のアルト・サックス奏者。

 

 

ソニー・クリスがB級である最大の理由は、パーカーのように抑制が効かず、単なる垂流しのような演奏をしてしまうところ。それでもそこがまたなかなか悪くないと僕には思えちゃうから、好きだってことだなあ。音色は朗々とした艶やかなもので、ちょっぴりジョニー・ホッジズとかベニー・カーターみたいでもある。

 

 

ソニー・クリスの話はおいておいて、今日は最初に名前を出したもう一人、テナー・サックス奏者のティナ・ブルックスの話をしたい。僕にとっては本当に「忘れじの」という言葉がこれ以上似合うジャズ・マンもいないという人で、やはりB級、二流の人ではあるけれど、なかなか良い味のサックス奏者なのだ。

 

 

ティナ・ブルックスの話をする人は、それでもまあまあいるよね。だからB級テナーであるとはいえ、やはりそれなりにファンの多い人だ。しかしだいたいのみなさんが、ティナの生前にリリースされた唯一のリーダー・アルバムである『トゥルー・ブルー』について語っているようだ。

 

 

正直に言うと、僕はティナ・ブルックスのリーダー・アルバムはその他死後にリリースされた三枚も含め全四枚をCDリイシューされてからしか買って聴いていない。アナログ盤では一枚も聴いたことがかった。それなのにどうしてティナが僕にとって忘れじのテナー・マンかなのかには理由がある。

 

 

ティナ・ブルックスの活動期間は1951〜61年なんだけど、実質的には58〜61年のたった三年間だけだったと言っても過言ではない。その間、自身のリーダー名義録音はほんの少しブルー・ノートにあるだけなんだけど、他の有名ジャズ・メンのレコーディング・セッションにそこそこ参加しているんだよね。

 

 

ティナ・ブルックスがサイド・マンとしてレコーディングしたなかで最も有名なのは、おそらくフレディ・ハバードの1960年作『オープン・セサミ』だろう。僕もこれはかつて好きだった一枚。しかしそんな熱心に聴いていたわけでもないし、現在ではCDで買い直していないというような有様。名盤なのになあ。

 

 

だから僕はハバードの『オープン・セサミ』でティナ・ブルックスを憶えているわけではない。もう一枚有名なアルバムがある。ジャッキー・マクリーンの1961年作『ジャッキーズ・バッグ』だ。これの半分である三曲にティナ・ブルックスが参加。がしかしこれはジャズ喫茶で聴いていたものの、自分でレコードは買っていない。

 

 

その他ジミー・スミスとかケニー・バレルとかフレディ・レッドなどのリーダー作に参加しているティナ・ブルックスだけど、前者二人はともかくフレディ・レッドとかはやはり渋好みのジャズ・ピアニストだよなあ。僕は大学生の頃からフレディ・レッドのファンだけど、一般的人気はほぼないに等しい存在だ。

 

 

今まで書いた全てがブルー・ノート・レーベルへの録音。ティナ・ブルックスはたった一枚ソニー・トンプスンの1951年キング盤に参加している以外はブルー・ノートへの録音しかない。ちょっともったいぶった感じになったけれど、僕にとってティナがどうして忘れじのテナー・マンなのかというと、一枚の編集盤を溺愛していたせい。

 

 

それが1980年にブルー・ノートの日本現地法人がリリースしたジャッキー・マクリーン&ティナ・ブルックス名義の一枚のレコード『ストリート・シンガー』だ。1980年っていうと僕は大学一年生だった。その頃の<新譜>のような感じでこれがリリースされたのをレコード・ショップで発見したのだ。

 

 

店頭でアルバム・ジャケットを見て、それに魅せられてしまったのだった。『ストリート・シンガー』というアルバム・タイトルにも惹かれた。ティナ・ブルックスという名前は知らなかったがジャッキー・マクリーンは既によく知っていた。そんなこんなで、あ、いや、九割方はジャケ買いだったのだ。

 

 

ご覧の通りのアルバム・ジャケット・デザインに18歳の大学一年生が魅力を感じるってのは、今考えたらちょっと不思議な気がするけれども、当時の僕はこういうなんというか、ちょっと暗くてムーディーなものに惹かれる人間だったなあ、ジャズだけでなく、ミステリ小説でも映画でもなんでも。

 

 

買って帰って初めてティナ・ブルックスというテナー・マンを聴いたのだった。しかし前述の通り『ストリート・シンガー』はオリジナル・アルバムではなく、ブルー・ノート日本が制作したコンピレイション盤なのだ。当時僕がそれを分っていたかどうかは全く記憶がない。ライナーノーツに書いてあったかもしれない。

 

 

コンピレイション盤であるとはいえ、しかし『ストリート・シンガー』の参加メンバーは全曲同じ。ブルー・ミッチェル(トランペット)、ジャッキー・マクリーン(アルト)、ティナ・ブルックス(テナー)、ケニー・ドリュー(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・テイラー(ドラムス)。

 

 

録音も全曲1960/9/15で、つまり同じ一つのレコーディング・セッションで録音されたものなのだ。この日のこのメンツによる録音全六曲から三曲だけがジャッキー・マクリーンの『ジャッキーズ・バッグ』になり、もう一曲がティナ・ブルックスの死後リリース『バック・トゥ・ザ・トラックス』に収録。

 

 

残る二曲は未発表のままになっていたもの。だからそれら一つのレコーディング・セッションで録音された全六曲を一枚にまとめたのがブルー・ノート日本制作の『ストリート・シンガー』なので、オリジナル・アルバムではなくコンピレイションであるとはいえ、ある意味オリジナルっぽいものなんだよね。

 

 

アルバム・タイトルになっているB面二曲目の「ストリート・シンガー」はティナ・ブルックスの書いたオリジナル・ナンバーで、これもティナ単独名義の死後リリース盤『バック・トゥ・ザ・トラックス』に収録されている。がしかしそのリリースは1998年なので、アルバム『ストリート・シンガー』収録の方が先だ。

 

 

最初に聴いた時から、アルバム『ストリート・シンガー』で二人参加しているサックス奏者のうち、ジャッキー・マクリーンよりティナ・ブルックスの方がチャーミングだなと僕は感じていた。アルトとテナーの違いはあるが、サックス奏者としての実力としてはどう聴いてもマクリーンの方が上なのに、どうしてだったんだろう?

 

 

『ストリート・シンガー』では収録曲のテーマ・メロディもかなりチャーミングだ。なかでも当時の僕が一番好きだったのがA面二曲目の「アポイントメント・イン・ガーナ」。これは『ジャッキーズ・バッグ』収録がオリジナルの一曲。

 

 

 

お聴きになれば分るように最初ゆったりとしたテンポで出て、そこでドラムスのアート・テイラーがタムを叩いているのが印象的。ガーナという言葉が曲名に入っているけれど、この出だしは、う〜ん、なんだかちょっぴりアフリカっぽいような?いや、全然そんなこともないね(苦笑)。

 

 

それでも18歳当時の僕がなんだかちょっとエキゾティックな、普通の一般的なハード・バップ・ナンバーには感じられない独特の雰囲気があるぞと感じていたのは事実なのだ。しかしテーマ吹奏部分ですぐにテンポ・アップしてしまい、その後のソロ部分もずっと4/4拍子のフラットな普通のジャズだ。

 

 

またA面ラストの「メディナ」(メジナ)。これは1980年に『ストリート・シンガー』に収録されるまで完全にお蔵入りしていたティナ・ブルックスのオリジナル・ナンバー。この曲にも魅力を感じていた。一番手で出るティナのテナー・ソロがなかなかいいよ。一瞬中近東風になる。

 

 

 

この YouTube 音源がどうして『ジャッキーズ・バッグ』のアルバム・ジャケットを使っているのかというと、同アルバムの現行CDにはこれがボーナス・トラックとして収録されているからだね。その他、この同じ1960/9/1録音の全六曲が、この現行CDには入っているんだなあ。

 

 

ってことは現在では『ストリート・シンガー』を買わなくても、三曲ボーナス・トラック入りの『ジャッキーズ・バッグ』現行CDを買えば、前者収録の全六曲が残らず聴けちゃうんだよね。一般のファンのみなさんはそれで充分ななずだし、是非そちらを買ってほしい。書いたように僕はジャケット・デザイン含め『ストリート・シンガー』の方に思い入れが凄く強いからね。

 

 

『ストリート・シンガー』はB面もいい。一曲目「ジャワ島」(アイル・オヴ・ジャヴァ)もティナ・ブルックスの書いた曲で、トランペット&テナーの二管によるリフに乗ってアルトのマクリーンがテーマ・メロディを吹き、その後そのままマクリーンのソロになる。そのバックで鳴っている二管のリフがいい感じにチャーミングだ。

 

 

 

これも『ジャキーズ・バッグ』のオリジナル・アナログ時代から収録されているのでそのジャケットだね。三番手で出るテナーのティナ・ブルックスが、そのソロの出だしで「メリーさんの羊」(Mary Had A Little Lamb)のフレーズを引用しているのが分る。これはいろんなジャズ・メンがよく引用する。

 

 

B面二曲目のアルバム・タイトル曲「ストリート・シンガー」にはイマイチ惹かれなかった僕だけど、その次のアルバム・ラスト「ア・バラード・フォー・ドール」は大好き。トランペットがリードする三管によるテーマに続き、ピアニストだけがソロを取る。

 

 

 

いかにもアルバムを締め括るに相応しいバラードで、『ストリート・シンガー』というアルバム自体前述の通り全曲同一メンバーによる同日録音なので、一種の「オリジナル」・アルバムだと言うべき趣の統一感のある作品。それはいいんだが、このアルバムで惚れたティナ・ブルックスのリーダー作について書く余裕がなくなってしまったなあ。

 

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