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2016/11/07

ビートルズ『アンソロジー』を聴き返す

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1995/96年にリリースされたビートルズの『アンソロジー』シリーズ。この名前はCDアルバム、ドキュメンタリー・ヴィデオ、ドキュメンタリー書籍といった一連のプロジェクトの総称で、このうちヴィデオ(僕が買ったのはVHS)と書籍については、僕はさほど熱心には観たり読んだりしていない。

 

 

やはり僕にとっては音楽作品である『アンソロジー』CD1〜3だなあ。この二枚組三つの計六枚は、出た時は何度か聴いたんだけど、まあデモみたいなというか未完成品というか、やはり未発表なだけはあるとしか思えないものが多くて、あんまり面白くないなと思って、その後全く聴かないまま放置していた。

 

 

これらが出た1995/96年というのは、僕が Mac を買ってパソコン通信をはじめた時期で(僕はそもそもネットをやりたいがために Mac を買ったのであって、文書作成とか表計算とか写真・動画編集などはどうでもよかった)、当時の Nifty の FROCKL にはビートルズ専門部屋があった。

 

 

『アンソロジー』シリーズはビートルズ関係では当時最大の話題だった。ロック関係でなくても世間一般の耳目を集めていたし、FROCKL のビートルズ部屋でも大いに話題になりまくっていた。その会議室のメンバーは、僕と同じくらいの世代の方が多かったようだから、やや否定的な意見が多かった。

 

 

そもそも<アンソロジー>とは名選集の意味じゃないのか、それがこんな未完成品ばっかり収録していて、どこが<アンソロジー>なんだとか、まあそんな論調が多かったように記憶している。それでもビートルズ部屋の参加メンバーは、みんな熱心なビートルズ狂ばかりなので、聴きまくってはいたわけだ。

 

 

僕はといえば、『アンソロジー』関係の話題にはあまり反応せず、もっぱら過去のオリジナル・アルバムやシングル盤(『パスト・マスターズ』Vol.1、Vol.2)音源に関する話題にばかり反応していた。僕も『アンソロジー』はあまり面白くないと当時は感じていたので、絡みたくなかったのだった。

 

 

ただ、『アンソロジー』プロジェクトの一部として(?)発売された「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラヴ」の二曲だけはかなりいいと思っていたけれど、これの話題は以前もしたので繰返さない。『アンソロジー』冒頭にも入ってはいるけれど、僕が当時聴いていたのはこの二曲を収録したCDシングル二枚。

 

 

そしてその後は『アンソロジー』三巻は、全く顧みずCD棚の肥しになって放ったらかしになっていたんだけど、最近ちょっと気が向いて iTunes に全部取込んで Mac で流し聴きしていると、発売当時には殆ど見えていなかったことがいくつか見えるようになり、それで考え直すようになった。

 

 

見えなかったことが見えるようになったというのは、オリジナル・アルバムやシングル盤へ繋がる道程というかプロセスを楽しむということばかりでもなくて、むしろ『アンソロジー』三巻に収録されている音源そのものがいい曲・いい演奏に聴こえるものがかなりあるということを発見したということだ。

 

 

主に二巻目後半から三巻目に収録されている中期〜後期ビートルズの音源にいいものがかなりあるのだが、一巻目にだって、例えば2テイク入っている「ワン・アフター・909」の完成品2テイク目なんか、『レット・イット・ビー』収録ヴァージョンよりずっといいんじゃないかと思うんだよね。

 

 

「ワン・アフター・909」は、発売順としてはビートルズ最後のアルバムになった『レット・イット・ビー』に収録されただけあって最後期の録音だけど、元々初期に創られていた曲だっってことは以前からよく知られていた。そして『アンソロジー 1』収録の初期録音を聴くと、そっちが断然いいんだよなあ。

 

 

 

その「ワン・アフター・909」だって1995年のリリース時に何度か聴いたはずなのに、どうして面白さを発見できなかったのかなあ。まあ単に僕の耳がヘボなだけだったんだろう。初期はこういうシンプルなロックンロールが多くて、今聴くと楽しい。ガレージ・ロックや日本のグループ・サウンズへの影響も分る。

 

 

ガレージ・ロックや日本のグループ・サウンズを熱心に聴くようになったのは、僕の場合20世紀末頃からなので、それで1995年の『アンソロジー 1』発売時にはピンと来なかったんだろうなあ。ビートルズが世界中に影響を与えまくったのは主にこの時期のものだ。最近ようやく分るようになった。

 

 

またデビュー・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』一曲目の「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」も、『アンソロジー 1』収録ヴァージョンの方がカッコイイ。しかしこの曲だけはCDシングル「フリー・アズ・ア・バー」収録のが一番いいね。どうして『アンソロジー 1』に入っていないんだろう。

 

 

同じく『アンソロジー 1』ラストに収録されているロックンロール・カヴァー「カンザス・シティ/ヘイ・ヘイ・ヘイ・ヘイ!」だって、『ビートルズ・フォー・セール』のより快活な雰囲気でいいんだよねえ。ポールの歌い方がかなり違っていて、『アンソロジー 1』のものの方が活き活きとしているなあ。

 

 

またこれも『ビートルズ・フォー・セール』収録の『ベイビーズ・イン・ブラック」は、CDシングル「リアル・ラヴ」にライヴ・ヴァージョンが収録されていて、これがなかなかいいんだけど、これもなぜか『アンソロジー』シリーズには入っていないのだ。かなりいい演唱なのに不思議だなあ。

 

 

そういうのがまだあって、CDシングル「リアル・ラヴ」に、ポールの書いたバラードでは僕が最も愛する一曲「ヒア、ゼア・アンド・エヴリウェア」の、バック・コーラスがあまり入らないポールのほぼ独唱ヴァージョンがあって大好きなんだけど、これもなぜか『アンソロジー』シリーズには未収録だなあ。

 

 

そういったバック・コーラスが入らないとか、伴奏がシンプル、または作者本人の弾き語りとかアクースティック・ヴァージョンとかいうのも、主に二巻目終盤から三巻目の『アンソロジー』に多く入っていて、1960年代に発売されていたオリジナル・ヴァージョンより、今では好きに思えてきたりする。

 

 

『アンソロジー 2』終盤に入っている「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(リプリーズ)」も、オリジナルよりグッとシンプルな伴奏によるポールの独唱ヴァージョンでなかなかいいし、「レディ・マドンナ」もエレキ・ギターの入らないアクースティック・ヴァージョンだよ。

 

 

 

 

『アンソロジー 3』に入っている「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」は、『ホワイト・アルバム』収録ヴァージョンと違ってスカなリズムじゃないシンプルなロックンロールで、スカやレゲエ系のリズムが今でもちょっぴりイマイチな僕にはこっちの方が楽しいし、サックスのリフも違っていて新鮮に聴こえる。

 

 

 

またピアノのイントロではじまりエリック・クラプトンのエレキ・ギターが活躍する「ワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」は、作者ジョージだけのアクースティック・ギター弾き語りヴァージョンが『アンソロジー 3』に収録されていて、デモなんだろうけど味があっていいんだなあ。

 

 

 

リンゴが歌い『ホワイト・アルバム』の末尾を飾っている「グッド・ナイト」は、前半はピアノだけの伴奏(ジョージ・マーティンが弾いているらしい)。まあこれだけは最初から瀟洒なストリングス・オーケストラが入るオリジナル・ヴァージョンの方が素晴しい出来に間違いないけれど、ピアノ伴奏のみで歌うリンゴもなかなかいい。

 

 

 

『レット・イット・ビー』収録ヴァージョンはオーヴァー・ダブした豪華なオーケストラ伴奏がケバケバしいと作者自身が批判する「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」も、バンドのみによる当初の演奏そのままで、これは昔から知られていたけれど、『レット・イット・ビー…ネイキッド』のなんかより『アンソロジー 3』ヴァージョンの方がいい。

 

 

 

またこれも『アンソロジー 3』に入っている「サムシング」もジョージ一人のエレキ・ギター弾き語りで、シンミリと沁みてくるような雰囲気で大好き。「ゲット・バック」も、『アンソロジー 3』ヴァージョンはどうしてこんなに違うんだと思うほどエレキ・ギターがワイルドでカッコイイ。

 

 

 

 

そんなこんなで、まあ今聴直してもやっぱり玉石混交だなとは思う『アンソロジー』CDの1〜3だけど、それでもこんなに輝いている玉がたくさん混じっているじゃないかと、いまごろようやく発見し、その玉だけ集めたマイ・ベスト・コンピレイションCD-Rを作って聴いていると、楽しくてたまらないんだよね。

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コメント

こんにちは存在は知ってしたが、いまいちピンとこない感じだったのですが解説していただいて興味湧きましたので今から聞きまくりたいと思います

けっこう聴ける完成度の高い逸品もかなりありますよね。

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