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2017/03/03

Miles at Fillmore Saga

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今日は音楽の中身そのものにはあまり踏み込まず、最近こんな騒動がありましたという笑い話として書いていくつもりなので、その点どうぞご承知おきを。

 

 

僕が YouTube にいろんな音源をアップロードしているのはみなさんご存知の通り。まだご存知ない方はこちらをどうぞ。https://www.youtube.com/user/hisashitoshima/  一番たくさん上げているのはマイルズ・デイヴィス関係、それもブートレグ音源だ。そのなかに1970年7月の17日から20日までの四日間にわたりマイルズ・バンドがフィルモア・イーストに出演した際のライヴ音源四つがある。

 

 

以前も詳しく書いたのだが、この四日間のライヴを「完全」収録した(という謳い文句の)公式盤四枚組『マイルズ・アット・ザ・フィルモア 〜マイルズ・デイヴィス 1970:ザ・ブートレグ・シリーズ Vol.3』は、本演奏前の音出しが収録されていない欠陥商品だ。したがってそれを全部フル収録したブート盤四枚が必要なのだ。どうしてかって、1970年に発売された LP 二枚組『マイルズ・アット・フィルモア』は、本演奏前の音出し部分からも編集されて入っているもんね。

 

 

でもブートレグは一般に入手が容易じゃないものだから、なるべく一人でも多くの音楽リスナーに聴いてほしいと思い、僕はそのフィルモア四日間の完全版を自分で YouTube に上げたっていうわけ。

 

 

 

 

 

 

 

これを観聴きしたイタリア在住のあるイタリア人の方から、ある日、個人的にメールをくれというメッセージが届いたのだった。名前はマウリツィオ・コマンディーニ(Maurizio Comandini)さん。なんだろなあ?と思ってメールを送ると、速攻で返事が来て「僕は電化マイルズに異常に興味があるイタリアの音楽ライターだが、君が YouTube にアップロードしている1970年7月のフィルモア四日間の画像には “MULTI TRACK SEPARATE VERSION” とあるじゃないか、君はそれを持っているのか?」とあった。

 

 

マウリツィオさんも、マイルズの1970年フィルモア四日間が、ブートレグで一日あたり CD3枚ずつ、計12枚になるセパレイト・ヴァージョンでもリリースされているのだと知っていた(というのは正確にはマウリツィオさんの間違いだが、それは後述)。このセパレイト・ヴァージョンなるものについては説明しておかないといけない。

 

 

2010年だったか11年だったかに、SO WHAT というマイルズのブート CD をたくさんリリースしている(おそらく日本の)海賊レーベルが、1970年7月17〜20日のマイルズ・フィルモア四日間のコンプリートを(公式盤リリースに先立って)発売した。その際に、四日間全てが三種類のかたちで出たのだった。

 

 

一つは「マルチトラック・マスター・ヴァージョン」。これはオフィシャル・ヴァージョンと同じミックスかつ同じマスタリングで仕上げた(といっても前述の通りオフィシャルにはないものがこっちにはある)、通常のいわゆる完成商品だ。四日間一枚ずつ計四枚。普通はこれだけでいいはず。

 

 

もう一つは「オルタネイト・ヴァージョン」。これは基本的にはマスター・ヴァージョンと同じでありながら、それに施されているエコー処理などの<お化粧>が一切ないもので、当時のフィルモアのステージで演奏され、観客もこんなサウンドを聴いていたんじゃないかと想像されるもの。これも一日一枚ずつ計四枚。

 

 

問題は最後の「マルチトラック・セパレイト・ヴァージョン」だ。これは四日間の一日ずつを三種類のミックスで聴かせるものだ。

 

 

一つはチック・コリア(フェンダーローズ、右)とキース・ジャレット(オルガン、左)の二名だけをフロントに出したミックス。

 

 

一つはデイヴ・ホランド(ベース)とジャック・ディジョネット(ドラムス)の二名だけをフロントに出したミックス。

 

 

一つはマイルズ(トランペット)とスティーヴ・グロスマン(サックス)とアイアート・モレイラ(パーカッション)の三名だけをフロントに出したミックス。

 

 

以上三種類とも、フォーカスが当たっている人物以外のバンド・メンバーの音はかなり小さく遠い。

 

 

このマルチトラック・セパレイト・ヴァージョンは、一日あたり上記三種類のミックスに仕上げたものがあるので、四日間で CD が計12枚ある…、というのは間違いで、水曜日分だけは演奏時間が短めなので、三種類のミックスを全部収録したのが CD で二枚。だから四日間で計11枚というのが正しい。しかしながら、以上マルチトラック・マスター・ヴァージョン 、オルタネイト・ヴァージョン、マルチトラック・セパレイト・ヴァージョンが全部一度にリリースされたため、僕は全部は買えなかった。

 

 

一枚だけでもブート CD は高価だ。それが全部で何枚になるのか、19枚かな、マイルズのフィルモア四日間のマスター、オルタネイト、セパレイトの三種類を全部買うとなると、確か五万円だか六万円近い値段になっていたはずだ。僕が買ったのはマルチトラック・マスター・ヴァージョンとオルタネイト・ヴァージョンが二枚組セットになったものだけ。つまり全部で八枚。ここが現実的な妥協点だった。

 

 

セパレイト・ヴァージョンなんて、価格が大したことなくたって、上述のようなものなので、はっきり言って興味も薄かったのだ。あくまでバンド全体での演奏を聴いて楽しみたいのであって、一部のメンバーの音だけ抜き出してフォーカスを当てたようなミックスはちょっとなあ。前から繰返すが僕はマイルズに関してすら研究・批評をしたいような気持はないんだよね。楽しみで聴くだけだ。

 

 

ところが、僕がフィルモア四日間のマルチトラック・マスター・ヴァージョンを YouTube にアップロードする際、ジャケット画像を貼り付けたいなと思ってネット上で画像検索すると、四日間のうち、マルチトラック・セパレイト・ヴァージョンのジャケット画像しか見つからない日もあったので、やむなくそれを使っているものがある。

 

 

さて、イタリア在住のイタリア人、マウリツィオ・コマンディーニさんは、それを目ざとく発見してしまって、「君はそのマルチトラック・セパレイト・ヴァージョンを持っているんだろう?コピーして CD-R に焼いて送ってくれないか?」と言ってきたのだ。ガッカリさせるのは早い方がいいと思い、僕は速攻で「それは持ってないんだよね、ゴメン」と上述のような事情を説明した。

 

 

するとマウリツィオさんは「じゃあどこで買えるんだ?君はどこで買った?買える店を教えてくれ」と来たので、僕は「東京は渋谷にあるマザーズ・レコードというお店で買ったんだ、そこはマイルズ・ブートの宝庫だ。日本語だけどホーム・ページはあるよ、でもネット通販はしていない」と返事した。

 

 

そう、愛媛に戻ってきて以後、僕がマザーズで買う際は、電話をして希望商品を伝え金額を教えてもらい、それを指定の銀行口座に振り込んで商品を郵送してもらうという仕組なんだよね。Eメール・アドレスすらない(なんでもお店にパソコンがないんだそうで、じゃああのホーム・ページは誰がどこで書いてアップしているのだろう?)んだよね。これは僕も再三なんとかしてくれと言ってはいるが、マザーズさんにどうもその気はないようだ。

 

 

そんな具合なもんだから、イタリア在住のイタリア人が買える状況にはなく、それを知ったマウリツィオさんは「じゃあお金を送るから、君が買ってくれないか、買って君のところに届いたものをイタリアへ郵送してほしい」と、ちょっと面倒くさいことを言いはじめたのだった。勘弁してくれよと思いつつ、しかしそこがマイルズ狂の悲しい性で、じゃあやりましょうと返事してしまった僕。

 

 

まず僕は渋谷のマザーズ・レコードへ電話して、マイルズのフィルモア四日間全てのマルチトラック・セパレイト・ヴァージョンが総額いくらになるのかを確認。その金額をユーロに換算してマウリツィオさんにメール。価格が高すぎると苦情が来て、結局マウリツィオさん希望の金額とマザーズが売りたい価格とのあいだでの調整役もやらなくちゃいけなかった。それでメールと電話でのやりとりが何日間も続く。

 

 

折合いのついた金額を日本の僕のところへ入金してもらうのには PayPal を使った。インターネット・ユーザーであれば、多国間での金銭の授受はこれが一番イージーなのだとマウリツィオさんに教えてもらったものの、僕の場合 PayPal で支払った経験ならなんどもあるが、入金してもらった経験はない。いや、それもイージーなんだぞとマウリツィオさんは言うので信用してやってみたら、これが超煩雑だった。

 

 

オンライン商品など支払いだけなら、特になにもしなくていいのだが、他国の人から PayPal アカウントに入金してもらうにはそのままではダメで、アカウントをアップグレイドしなくちゃいけないことが判明。そのアップグレイドの手続きには、なんと運転免許証かなにか、とにかく顔写真と生年月日など本人をアイデンティファイできる画像をサイト上で貼り付けなくちゃいけない。しかしながら僕は写真などをネット上にアップロードできるようなかたちのデジタル・ファイルにする手段をほぼ持っていない。

 

 

デジカメもスマホもスキャナーも持っていないし、持っているガラケーに写真撮影機能があるようだけど一度も使ったことがなく、もっぱら音声電話機能しか利用しない。メールすらも携帯ではやらない人間なのだ。残された手段は MacBook Pro 内蔵カメラで写真撮影すること。唯一それだけ。だから Macを買うと最初からプリ・インストールされている PhotoBooth という Apple 純正の写真撮影アプリで自分の運転免許証を撮影し、それを PayPal サイトでのアカウント・アップグレイドに使用した。

 

 

しかしそれですぐに他国から入金可能な Paypalアカウントにはならず。PayPal 側での審査に一週間ほどかかって、その後、紙の葉書が届き、厳重密封されているそれに記されている暗証番号を PayPal のサイトで入力して、それでようやく僕の PayPal アカウントにマウリツィオさんから入金可能となったのだ。

 

 

できるようになったはずだと彼にメールで伝えると、速攻で入金があって、それを僕は自分の銀行口座に引き出して、渋谷マザーズに再び電話で連絡したのち、マザーズの銀行口座に入金。二日でマイルズのフィルモア四日間のマルチトラック・セパレイト・ヴァージョン計11枚が僕の自宅に届いた。マウリツィオさんから「ブツが届いたら、君は君の分をコピーしていいぞ」と言ってもらっていたので、僕は11枚全部を Mac にインポート。

 

 

それが終わったのちに、ようやく郵便局に持っていってイタリアまで発送できたのだ。マウリツィオさんからまず最初のメールが届いたのが今年1月8日。僕が送った現物をイタリアで受け取ったとのメールが来たのが2月15日。こりゃちょっと時間がかかりすぎだよね。マウリツィオさんも僕も途中から笑えてきて、それである時期以後のメールのやりとりにマウリツィオさんが付けた件名が「Miles at Fillmore Saga」だったのだ。

 

 

仲良くなってしまったマウリツィオさんと僕。しかしコピーしていいぞと言うので僕はそうしたマイルズの1970年フィルモア四日間のマルチトラック・セパレイト・ヴァージョン計11枚。それを聴いた率直な感想をここで記すのは遠慮したい。でもまあなんにせよマウリツィオさんのおかげで、このフィルモア四日間を SO WHAT がリリースしたブートレグ音源の全てがいま僕の手許にはあるので、ありがたいことではある。

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