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2017/04/06

BB『リーガル』にまつわる個人的思い出話

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Unknown









生まれて初めて買ったブルーズのレコードはB・B・キングの『ライヴ・アット・ザ・リーガル』。これは間違いないという確かな記憶がある。しかしその大学生の頃はジャズのレコードばかり漁っていたのに、どうして BB を買ったんだろうなあ。まあジェイムズ・ブラウンのアポロ・ライヴ二枚なんかも買って愛聴していたので、マジで100%ジャズだけというわけじゃなかったのではあるが。

数ある BB のアルバムのなかからどうして『ライヴ・アット・ザ・リーガル』だったのか、こっちは全く記憶がない。ジャケ買いだったかも。だって『ザ・ジャングル』みたいなのは、いま見ればなんでもないが、あの当時の僕はブルー・ノート盤のレコード・ジャケットみたいなのが好きだったわけだから、ジャズでもアトランッティックのジャケットとかはイマイチ(中身は好きだった)。だから『ライヴ・アット・ザ・リーガル』のジャケット・デザインはオシャレだとでも思ったのかもしれない。

といっても当時アナログ盤で買って持っていたのは、白地に文字だけというやつ(上掲左)で、いま CD で持っているのも同じジャケットの MCA 盤だ。だから僕は長年、ついこのあいだまで、これがこのアルバムのオリジナル・ジャケットなんだと信じていて、いつ頃からだったか見るようになったカラー・ジャケット(上掲右)は、なんだこれ?どうしてジャケットを変えるんだ?と疑問符が頭のなかに浮かんでいたもんね。

ところがよく調べてみると、そのカラー・ジャケットの方がオリジナルで、1965年に ABC からリリースされた際のデザインだったと、本当についこの前知ったばかり。う〜ん、こりゃまあブルーズのレコードや CD をたくさん買うようになってからは、こういうもんだと分ってきたけれど、大学生の頃に見たのがカラー・ジャケットの方だったら、買うのをためらったかもしれないぞ。難しい問題だなあ。白地のジャケは1971年に ABC がリイシューした際のニュー・ジャケットらしい。

ジャケット・デザインはともかく、買って帰って聴いてみたら楽しいので、『ライヴ・アット・ザ・リーガル』一発で BB にはまってしまったのだ。トータルで35分程度しかないライヴ・アルバムだけど、これを買わなかったら、現在まで続くブルーズ熱にうなされるようなことにはならなかったかもしれないので、大恩人というか悪の張本人というか。

BB の『ライヴ・アット・ザ・リーガル』。RPM/ケント時代の録音を聴くようになると、ギターの音が細く薄くペラペラというか、物足りないような気もするけれど、当時の僕にはこれで正解だっただろう。おそらくいまでもブルーズ愛好家ではない一般の音楽リスナーには同じであるはず。とっつきやすいんだよね。特にロック・ギターを聴き慣れている耳にはね。

ヴォーカルの方は全く線が細くなんかないし、この『ライヴ・アット・ザ・リーガル』を録音した1964年録音当時でも BB の歌は迫力満点で素晴らしい。多くのブルーズ・ファン、BB ファンはここをもっと強調しないといけないのだ。みんなギターのことばっかり言ってさぁ。BB のヴォーカルの上手さのことを言う人は少ないもんなあ。

『ライヴ・アット・ザ・リーガル』で、大学生当時から僕が大好きなのが A 面二曲目〜四曲目のバラード・メドレー。もちろん全部このレコードで初めて知った曲。一つ目の「スウィート・リトル・エンジェル」は BB も得意レパートリーだ(ということはずっとあとになって知った)し、ギターもヴォーカルもいい。ギターの音は線が細くてペラペラだと書いたけれど、実はいまでもかなり好きだ。最初 BB がコードでジャジャっと二音弾いた瞬間にバック・バンドがそれに即応するあたりも、大学生の頃からプロってすごいんだなと、当たり前すぎてかえって失礼になるだろうといまなら分るような感慨を抱いていた。
「スウィート・リトル・エンジェル」では、歌本編に入る前に BB が少し喋っている 〜 ちょっと昔を振り返って思い出にひたってみよう、本当に古いブルーズだよ、みんなもし憶えていたら歓声をあげてくれ、憶えていそうな曲を持ってきたからさ、まず最初はこれだ、本当に古い古い懐かしいもので、こんな感じだ 〜〜 「and it sounds something like this」と言った次の瞬間に、シングル・トーンでパッとギター・ソロを弾きはじめる。

すると、その瞬間までバック・バンドの演奏していたリズムが、BB の弾いたギター・フレーズにやはり瞬時に即応してチェンジする。特にドラマーの入れるスネアがタイミングばっちりで、しかしこんなのはごくごく当たり前の所作であって、たくさんいろんな音楽を聴くようになると、プロの演奏家にとっては空気吸っているだけみたいな当たり前の日常なのだと知った。

「スウィート・リトル・エンジェル」はもちろん自分のガールフレンドを自慢する歌だが、このブルーズ・スタンダードはタンパ・レッドがやったのが初録音だと以前僕は書いた。だがしかしそうじゃなかった。1920年代の都会派女性ブルーズ歌手ルシール・ボーガンが1930年に録音しているじゃないのさぁ。それもまあまあ有名みたいだ。タンパ・レッドのは34年だもんね。ウソ書いてごめんなさい。謝罪して訂正します。

それにしてもこのあたりのブルーズ・スタンダードって、録音開始が最も早かった人たちなんだから当たり前の話ではあるが、どれもこれも1920年代にジャズ・バンドやピアノの伴奏でやる都会派女性ブルーズ歌手が初録音しているものが多いなあ。多いというかそんなことばっかりじゃん。ただ、タンパ・レッドなんかはシティ・ブルーズ・マンだったから当然そういうレコードを聴いただろうが、それらのブルーズ・ソングそのものはアメリカ北部の都会で誕生したとは限らないだろうね。

BB の『ライヴ・アット・ザ・リーガル』A 面三曲のメドレー。一つ目と違って二つ目は失恋の歌である「イッツ・マイ・オウン・フォールト」。これも歌いはじめる前に BB が喋っている 〜 自分の恋人を歌う男の歌だから「スウィート・リトル・エンジェル」だったんだけど、ガールフレンドを失った男のことを考えてみよう、そういうことあるんだぜ、いやホントなんだよ 〜 と言うと客席から「そうだ!」と声があがるので、BB がクスッと笑っている。

こういうやりとりが大学生の頃から僕は大好きだった。バック・バンドが演奏し続けているなかで BB がお話をして、その中身も楽しいが、次の瞬間にパラっとギターを弾くとバンドもそれに即応する 〜 そういうのが楽しくて、繰返し聴いていた。それはそうと「イッツ・マイ・オウン・フォールト」はジョン・リー・フッカーがオリジナルだけど、なんだかシンミリしちゃう曲だなあ。
大学生の頃に『ライヴ・アット・ザ・リーガル』の BB ヴァージョンで「イッツ・マイ・オウン・フォールト」を聴いていた頃は別になんでもなかったのだが、まさしくこの通り100%自分のせいで妻を失ったいまの僕は、平常心では聴けないような部分がちょっとある。結婚していた頃も、自宅での僕は大音量で音楽を聴きながら本を読むとか、本当にそんなことばっかりで、それ以外のことはほぼ眼中になかったもんなあ。BB も歌っている 〜 「君が僕のことを愛してくれているあいだも、いつもずっと僕は君のことはどうでもよかった」。

そんなヤツ結婚なんかすんなという話だよなあ。そしてここで恥ずかしいことを言いますが、離婚した妻のことを僕はいまでも好きで、二人で楽しくしていた頃の思い出がそのままが夢に出てくること頻繁で、寝ているあいだに見た夢を憶えていることの多い僕は、目が覚めても半日ほどなんだか哀しく切ない気分になっていることがある。そんなことをいま BB の『ライヴ・アット・ザ・リーガル』の「イッツ・マイ・オウン・フォールト」を聴き返しながら思い出して書いているのです。どうでもいい話だったな。

『ライヴ・アット・ザ・リーガル』では、「イッツ・マイ・オウン・フォールト」が終るとメドレー最後の三曲目「ハウ・ブルー・キャン・ユー・ゲット」(aka「ダウンハーティッド」)になるが、しかしこれまた傷心のブルーズ・ソングかよ〜、つらいなあ。前の曲「イッツ・マイ・オウン・フォールト」最終盤のギター・ソロでパッと転調するのを三回繰返し、次の「ハウ・ブルー・キャン・ユー・ゲット」に入る。その三回転調の展開も大学生の頃から大好き。

なんだか A 面三曲のブルーズ・バラード・メドレーの話しかしていないが、そこが僕は最初に聴いた頃からアルバム『ライヴ・アット・ザ・リーガル』では一番好きで、そこばっかりリピートしていた。違う部分のこともちょっとだけ思い出話を書いておこう。オープニングの「エヴリデイ・アイ・ハヴ・ザ・ブルーズ」に出てくる「Nobody loves me, nobody seems to care」部分をそのまま、上京後の研究室助手時代に書庫で鼻歌で口ずさんでいたら、たまたま居合わせた助教授にクスッと、いや、思い切り笑われてしまった。本当にそう思って歌っていたわけじゃありませんから〜。

B 面一曲目の「ユー・アップセット・ミー・ベイビー」はジャンプ・ナンバーで、テナー・サックス・ソロもあり、いま聴くと楽しいが、昔はフ〜ンと思っていただけ。これよりも二曲目の「ウォーリー、ウォーリー」が大好きだった僕。サステインの効いたサウンドで弾く BB のギターがいいね。エリック・クラプトンにしろ誰にしろ、ロック・ギタリストはこういうのが好きなんじゃない?しかしこの曲でも歌いはじめてからの BB のヴォーカルの方がもっと凄いぞ。クラプトンさん、そのあたりは真似しなかったんですね。
歌い出しの「オオ〜、ウォーリー、ウォリ、ウォーリー」のど迫力シャウトには腰を抜かすじゃないか。言葉とは正反対に、全くどこも心配なんかしていないだろうという自信に満ち溢れた、よく通る強く張った伸びのある歌声だ。まるでゴスペル歌手みたい。BB もゴスペル界と関係あるの?関係がないとしても、間違いなくゴスペル歌手の影響は受けている。

続く B 面三曲目「ウォウク・アップ・ディス・モーニン」と、アルバム・ラストである B 面五曲目の「ヘルプ・ザ・プア」はラテン・リズムを使ってある。といっても前者ではイントロと歌のワン・コーラス目までで、その後は普通の8ビート・シャッフルになってしまうので、いまではイマイチ。
アルバム・ラストの「ヘルプ・ザ・プア」の方は一曲を通し全面的にラテンなリズム・アレンジだ。しかしこれら二曲を最初に聴いた大学生の頃の僕は、幼少時に培われた(のであろう)僕のなかにあるラテン好き資質はまだ伏流水のように地下に潜ったままの状態で、だから聴いてもなんだかヘンなの、どうして普通にやらないの?とか思っていたもんね。いまだからこそ楽しく聴けるのだ。

ところでそのラテン・ブルーズ「ヘルプ・ザ・プア」は、チャールズ・シングルトンというソングライターが書いた曲で、この人はフランク・シナトラに提供した「ストレンジャーズ・イン・ザ・ナイト」で非常に有名だよね。ラテン・リズムを使ってあるのは1960年代のアメリカだから納得できるけれど、「貧者を救え」というのは、黒人貧困問題に目を向けろという、あの時代にはよくあった例のやつなんだろうか?

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