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2017/04/25

みんな〜、ルイ・ジョーダンで楽しくやろうよ(Let The Good Times Roll)!

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ルイ・ジョーダンってジャズでもないしロックでもないし、じゃあリズム&ブルーズかというとそうでもないよなあ(僕のなかではちょっと変わっているだけの面白ジャズ・マンだけど)。しかしそれだったら分りにくいのかというと正反対で、親しみやすく聴きやすい。聴けばみんな普通に楽しい。ただひたすらそれだけの音楽家だけど、そういう人こそ実は最も奥が深く、しかも古くならない。実際、いつの時代もルイ・ジョーダンの録音は最新型。ロックの時代にはロック、ラップの時代にはラップ・ミュージックとして再認識されてきた。

といってもルイ・ジョーダンの場合も、やはり本国アメリカでは完全無視状態だった。米 MCA が1999年に CD二枚組のデッカ録音集『レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール:ジ・アンソロジー 1938 - 1953』をリリースしたのが最初のもので、たぶんいまでも唯一。最初に CD リイシューしたのは1992年のドイツ人(ベア・ファミリーのデッカ録音完全集九枚組)、その次が96年の日本人、中村とうようさん(MCA ジェムズ・シリーズの一枚『ルイ・ジョーダン 1939-1954』)。

このあたりいつもいつもの嘆き&怒り節で、同じことばかりなんども書いているので、またかよ…と思われるだろうからこの部分はどうぞ読み飛ばしていただきたいのだが、今日こそは言いたいことを全部言わせてもらう。1910〜30年代の古い録音に見向きもしないのは言うまでもなく、ルイ・ジョーダンみたいな第二世界大戦直後あたりに大活躍した音楽家のものですらガン無視なのは、なにやってんの?アメリカ人?!

いまは同じアフリカ系の人たちだってレコード会社で結構いいポジションにいるはずなのに、1910〜50年代のジャズやブルーズやリズム&ブルーズなど、ブラック・ミュージックの偉大な先達の残してくれたものに敬意を払っていないのだとしか思えない。完全無視で全くリイシューする気配すらないのは、そういうことだとしか思えない。国家自体の歴史がヒジョ〜に短いアメリカに生まれ住む人間の文化歴史の認識などしょせんその程度なのか(ひどい悪口だ)。

以前ある場所で、コロンビアは自社が権利を持つ過去遺産のリイシューにあまりにも冷淡すぎると書いたら、荻原和也さんから「営利企業であって文化事業やってんじゃないんだから、売れないカタログなんかに見向きもしませんよ、コロンビアだけでなく、デッカだってヴィクターだって」と言われてしまった。そういうのは本家ではなくコレクターズ・レーベルの仕事だと。

荻原和也さんが結局おっしゃりたかったことは「アンタ、偉そうにアメリカ人が自国の音楽遺産に盲目だとか言っているけれども、アンタだって自国日本の立派な音楽遺産をヨーロッパ人が復刻していることを知らんだろう?」という部分にあったような気がする(がそうとは明言はされていないのでなにも言えなかった)。あの場の当座の話題はデューク・エリントン楽団の戦前録音のことだったので、僕は「いや、デッカとヴィクターは一度ちゃんとコンプリート集でリイシューしている、サボっているのはコロンビアだけ」とだけコメントしたのだが。

たぶんいまではメジャーのレコード会社各社である程度の発言力を持っているはずのアフリカ系のみなさんは、現在進行形の音楽ばかり追いかけていないで、どういうわけでそういう「新しい」ものができあがってきたのか、そもそも誰が最初にそんな音楽をやりはじめたのか、過去にどれほど輝いていて、いま聴いてもかなり面白く美しい「古い」音楽に真摯に耳を傾けて、しっかりとしたリイシュー作業に取り組むべきじゃないだろうか?コロンビアなんか、自社で完全集として CD 復刻しているのはルイ・アームストロングとビリー・ホリデイだけじゃないか!

確かに荻原和也さんのおっしゃる通り、ヨーロッパのコレクターズ・レーベル(ジャズならフランスのクラシックス、ブルーズならオーストリアのドキュメントなど)がちゃんと仕事をしてくれているので、僕もみなさんもそんな困っているとか、全く聴けないとかいうわけではない。だがしかし以前からよく言うのでお分りだろうが、僕はあくまで本家筋レーベルがやらないとダメだという考えの人間なんだよね。それが自分たちの責任じゃないか。やらないでプロの仕事と言えるのか?!アメリカ人!特に黒人!

吐き出したいことを吐き出したので、最初に戻ってここからルイ・ジョーダンの音楽の話をしたい。ルイ・ジョーダンの一番良かった時期が1938〜54年のデッカ録音時代であることには全く異論を挟む余地がないので、上記三種類の録音集 CD のうち、ベア・ファミリーの完全集九枚組が一番いいのだというのはその通り。だが正直に言うとなかにはイマイチ面白くないものだって混じっている。サイズも値段も大きいし、よほどのルイ愛好家じゃないと買えないだろう。ルイの音楽はマニアのものなんかじゃない。「みんなのもの」だ。そういう音楽家なんだから、いろんな人に聴いてほしい。

だからやはり中村とうようさん編纂・解説の MCA ジェムズ盤『ルイ・ジョーダン 1939-1954』か、米 MCA 盤の二枚組『レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール:ジ・アンソロジー 1938 - 1953』のどっちかをオススメしておく。この二種類、前者は一枚物で全27曲、後者は二枚組で全46曲だから後者だけでいいかというと、前者にしか収録されていないものがあったりして、どっちか一方だけをと言われるとちょっと困ってしまう。まあでもあくまで一般的には、やはり米 MCA 盤の方がオススメだろうなあ。附属ブックレットの英語解説文も充実しているし、ディスコグラフィカルなデータ記載も詳細で完璧。

さらにとうようさん編纂盤の最大の弱点は、ルイ・ジョーダン全盛期の録音のなかでも特に重要な「カルドニア」「ラン・ジョー」の二曲が収録されていないことだ。とうようさんが無視しているわけなんかじゃない。MCA ジェムズ・シリーズの慣例で、他のアルバムに収録のものはダブらないようにしてあるからだ。「カルドニア」は『ブラック・ミュージックの伝統〜ジャズ、ジャイヴ&ジャンプ篇』に、「ラン・ジョー」は『ブラック・ビートの火薬庫〜レット・イット・ロール』に収録されている。

だから以下の話は、それら二曲も含め重要曲が最もたくさん収録されている米 MCA 盤『レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール:ジ・アンソロジー 1938 - 1953』に基本的には沿って、そこに中村とうようさん編纂・解説の MCA ジェムズ盤の方も適宜参照しつつ進めたい。ルイ・ジョーダン初のヒット・ナンバーは1944年のレコード「G・I・ジャイヴ」だと言って差し支えないはず。米 MCA 盤だとこれが17曲目で、とうようさんのだと6曲目。ただ、それまでにも面白いものはあって、例えば39年録音のジャズ・スタンダード「ハニーサックル・ローズ」(とうようさん編纂盤には未収録)なんか、「おぉ〜、 はっにぃ〜〜🖤・さっくるぅ〜・ろぉ〜ず」などとスケベったらしく歌ったりするが楽しいのだが、ヒットはしていない。
ルイ・ジョーダンはやっぱりヒット・メイカーだったからこそ、それも1940年代半ばにおけるアメリカ黒人音楽家では一番売れて人気があった最大のスーパー・スター(誇張でも比喩でもなく文字通り!)だからこそ同時代や後世の歌手やミュージシャンにも甚大な影響を与え、またそんなことを言わなくたって、当時のアメリカ一般庶民のお茶の間を賑わせて、文字通りみんなを楽しませてくれたエンターテイナーだったという事実にこそ意味があるわけだから、ヒット・チューンを重視しないとダメだ。

「G・I・ジャイヴ」がルイ・ジョーダン初の大ヒット曲(レイス・レコードなのにビルボードのポップ・チャートですら二週連続一位)になったのは、歌詞を書いたのがあの有名なジョニー・マーサーだったからからというのが理由の一つにあるかもしれない。だいたいルイ・ジョーダンは大ヒット・メイカーだったと言っても自分で曲を書くことは滅多になかった。ほぼ全て他人のソングライターが書いた曲をやった。それでもチャック・ベリーみたいな自作自演ロッカーの先駆けになったのは間違いないのだが。

「G・I・ジャイヴ」以後は大ヒットを連発するようになるルイ・ジョーダンで、実際、1945〜46年にはビルボードの R&B チャート首位になんと18曲を送り込むというスーパー・スターぶり。1970年代末〜80年代のマイケル・ジャクスンの40年代版がルイだったと言える。2017年現在でも、ルイやマイケルほど売れまくった黒人音楽家は他にいないんじゃないの?

そんなルイ・ジョーダンの大ヒット18曲のうち、録音順なら「G・I・ジャイヴ」の次に来るのが1945年の「カルドニア」。これは僕の最も愛するルイのヒット・チューンだ。好きな女性の名前を繰返し叫ぶ、それもとんでもなく素っ頓狂な声で「きゃるど〜にゃっ!」とシャウトする、しかも曲のかたちは完全なるブギ・ウギ・パターンという、面白ジャンプ・ナンバーのラヴ・ソング。イントロでピアノがブギ・ウギ・リフを弾くのが聴こえはじめただけで僕はワクワクする。
ルイ・ジョーダンの生涯で最も売れたレコードは、翌1946年の「チュー・チュー・チ・ブギ」だが、米 MCA 盤『レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール:ジ・アンソロジー 1938 - 1953』で辿ると、45年の「カルドニア」と46年の「チュー・チュー・チ・ブギ」とのあいだに、かなり面白い一曲がある。エラ・フィッツジェラルドが客演した45年の「ストーン・コールド・デッド・イン・ザ・マーケット」だ。とうようさん編纂盤には未収録。
これをお聴きになれば分るように、ルイ・ジョーダン得意分野の一つであるラテン調、はっきり言うとカリプソ・ナンバーだ。マラカスとクラベスが聴こえるね。リズムのかたちも鮮明なカリビアン・アクセントを表現している。ルイのこの手のカリプソ・ジャンプみたいなもので最も有名なのは、間違いなく1947年の「ラン・ジョー」だ。この47年には既にルイは大ヒットを飛ばせなくなっていたが、面白い録音はたくさんある。「ラン・ジョー」を貼っておく。トランペットが「南京豆売り」を吹いているよね。
米 MCA 盤『レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール:ジ・アンソロジー 1938 - 1953』には収録されていないが、とうようさん編纂の MCA ジェムズ盤『ルイ・ジョーダン 1939-1954』には、同趣向のカリプソ・ジャンプである「プッシュ・カ・ピー・シー・パイ」が収録されている。1949年のレコードだから、ルイ・ジョーダンはかなり見逃されるようになっていたが、この曲は本場トリニダードの感覚に近いし、また曲中「かりぷそ・びばっぷ」と歌っていて、最後のあたりで、実際ビ・バップ風のリフが入るのも面白い。
米 MCA 盤『レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール:ジ・アンソロジー 1938 - 1953』には、二枚目の最後のあたりにもう一曲カリプソ R&B みたいな録音があって、それはなんとあの有名な「ジャンコ・パートナー」だ。そう、ニュー・オーリンズ・クラシックスの一つで、ドクター・ジョンも『ガンボ』でやっているあれだ。ルイ・ジョーダンのヴァージョンは1951年録音。クラベスも聴こえる。
さて1945〜46年あたりのビッグ・ ヒット・メイカーだったルイ・ジョーダンに戻って、やはり生涯最大のヒット曲だった46年の「チュー・チュー・チ・ブギ」とか、後年はむしろこっちの方が最も有名なルイ・ナンバーになった同46年の「レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール」とかは、聴いたらひたすら楽しくてたまらないだけで、一切のゴタクを並べる気にならない。そういうエンターテイニングな部分こそがルイの本質だった。音源を貼るだけにしておこう。
上でも書いたが1940年代末あたりからはレコードがヒットしなくなっていたルイ・ジョーダン。しかし録音した音楽そのものはなかなか興味深いものがある。僕が特にいいなと思うのは、それまでどっちかというとジャズ寄りの音楽をやっていたルイが、51年頃にはかなりヘヴィなフィーリングのリズム&ブルーズに接近していたことだ。そういうのが米 MCA 盤『レット・ザ・グッド・タイムズ・ロール:ジ・アンソロジー 1938 - 1953』に二曲、それとダブらないかたちでとうようさん編纂の MCA ジェムズ盤『ルイ・ジョーダン 1939-1954』に一曲ある。

それが米 MCA 盤だと二枚目にある1951年の「スロー・ダウン」と「ネヴァー・トラスト・ア・ウーマン」。とうようさん編纂盤24曲目の同51年「ハウ・ブルー・キャン・ユー・ゲット」。三曲ともかなり重たくてディープなフィーリングのリズム&ブルーズで、あんなに賑やかで軽快にはしゃいでいたルイ・ジョーダンだとは思えないフィーリングだ。

「ネヴァー・トラスト・ア・ウーマン」https://www.youtube.com/watch?v=xWEAI01f1PA
「ハウ・ブルー・キャン・ユー・ゲット」https://www.youtube.com/watch?v=8FmmG7L_7QQ

このあたりも B・B・キングがカヴァーしたので、そっちの方でブルーズ・ファンのみなさんはご存知のはず。それにしてもこの時期はもうルイ・ジョーダンはヒット・メイカーではなくなっていて、三曲とも曲調も歌詞も重い内容。失恋や傷心のラヴ・ソングだから、そういった自分はもう売れていないんだという気分を反映していたのかもなあ。でもそうなっていた時期のルイの魅力を再認識させるのに充分な出来の三曲だと僕は思う。

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