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2017/06/25

どうしてもう電話くれないんだよ?〜 プリンスのB面

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ちょっと調べてみたら、プリンスのアルバム未収録のシングル・ナンバー(その他)は全部で89曲もあるんだそうだ。それらすべて7インチか12インチのアナログ・シングル盤、あるいは CD マキシ・シングルみたいなもので発売されたものらしい。いまから全部集めようなんて考えたら、労力も経済力も相当な覚悟が必要だよなあ。もう死んで一年以上になるんだし、そろそろ全部まとめて公式リリースしてくれ〜っ!それがダメなら、誰かなんとかしてくれ〜っ!(と小声で松山市在住の熱狂的プリンス・マニアの女性に向けて言ってみる)。

それら(本当かどうか確かめる手段を僕は持たないのでネット情報をそのまま鵜呑みにすると)89曲のうち、ジミ・ヘンドリクスの「レッド・ハウス」をもじったブルーズ・ナンバー「パープル・ハウス」は、以前ジミヘン・トリビュート・アルバム『パワー・オヴ・ソウル』について書いた際に、ちょっとだけ触れた。だから僕も持っている。
これ以外で僕の持つプリンスのアルバム未収録のシングル・ナンバーは、すべて1993年のベスト盤 CD 三枚組『ザ・ヒッツ/ザ・B ・サイズ』収録のものだけだ。ただし二枚目までの「ザ・ヒッツ」サイドはアルバム収録曲がほとんどで、それを7インチ・シングルその他用に短く編集してあったりなどするものがメインだから、あまり必要性は高くないような気が僕はする。それでもこのベスト盤二枚で初 CD 化だったり、あるいは僕自身初めて耳にしたヴァージョンとか、そもそもこんな曲があるんだという存在自体を初めて知ったというものもあるので、当時もいまも重宝している。

でもこの三枚組ベスト盤『ザ・ヒッツ/ザ・B ・サイズ』最大の聴きどころは、やっぱり三枚目。数々のシングル B 面曲だよなあ。僕の場合、収録されている全20曲のそれらは、いまだにこのアルバムでしか聴いたことがない。これで全部なんかじゃないわけだから〜、だから〜、早く全部ドバ〜ッと出してくれ〜!ワーナーさんとペイズリー・パークさん!

そんなわけで『ザ・ヒッツ/ザ・B ・サイズ』の三枚目「ザ・B ・サイズ」に沿って、今日はプリンスのシングル B 面曲について、僕のお気に入りを少し書いておこう。なかにはこりゃいかにも B 面だ、ほぼボツでもいいだろうというに近いようなものがちょっとだけ混じっているような気がするが。例えば四曲目の「ガッタ・ストップ(メシン・アラウンド)」とラスト20曲目の「パワー・ファンタスティック」はそうじゃないかなあ。熱心なプリンス・ファンのみなさん、ゴメンナサイ。でもこの二つ以外はクォリティ高しというのが、さすがプリンスの仕事だけある。

なかでもこれは名曲!と言える、というかプリンス・ファンのあいだではその評価が定着していて、僕も『ザ・ヒッツ/ザ・B ・サイズ』で初めて聴いたときこりゃ素晴らしい!と感動したのが、15曲目「17・デイズ」と16曲目「ハウ・カム・U ・ドント・コール・ミー・エニイモア」の二つ。例によってご存知ない方向けに音源をご紹介できないのだけが、この音楽家の場合、残念でならない。今日は確かめていないが Spotify にありそうだ。

「17・デイズ」はかなりダンサブルなポップ・チューンで、グルーヴ感はファンクそのもの。ちょっと奇妙な感じのサウンドなのは、プリンスの場合いつものことだから言う必要がない。ほんとマジで踊れる曲なんだけど、歌詞を聴くと悲しいことこの上ない失恋歌なんだよね 〜「僕が手にしたのは二本の煙草と、この傷ついた心だけ」。このサウンド/リズムと歌詞とのアンバランス・不協和が実にいい。こうじゃなくっちゃね。

トーチ・ソングだといえば、続く16曲目「ハウ・カム・U ・ドント・コール・ミー・エニイモア」もまったく同じ。曲題だけで分っちゃうよね。そしてこっちは「17・デイズ」とは違って、いかにもハート・ブレイキングなフィーリングの歌い方(やや粘着質だが、そこはプリンスだから)で、伴奏もプリンス自身の弾くアクースティック・ピアノ一台(とかすかにドラムスの音がある)でシットリしたもの。そんな風なピアノを弾きながら、ファルセット・ヴォイスで泣くように「どうしてもう電話してくれないんだ?」と歌っているんだよね。「17・デイズ」と並び、殿下の B 面では最大の名曲だ。

しかしこの二曲と同じくらい僕が気に入っているものが少しあって、「ザ・B ・サイズ」6曲目の「フィール・U ・アップ」、8曲目の「アイ・ラヴ・U・イン・ミー」、9曲目の「エロティック・シティ」、10曲目の「ショッカデリカ」、11曲目の「イレジスタブル・ビッチ」(なんてひどい曲名なんだ 笑)。

これらのうち「フィール・U ・アップ」と「ショッカデリカ」はたぶん同時期の録音だね。ブックレット記載を見ると、前者が1989年の「パーティーマン」の、後者が87年の「イフ・アイ・ワズ・ユア・ガールフレンド」の、それぞれ B 面だったらしいが、「フィール・U ・アップ」も「ショッカデリカ」も、あのカミーユ声だから、同じ頃のセッションで録音・処理されたものに違いない。例のボツになったアルバムに収録する予定があったのかもしれない。大傑作『サイン・O ・ザ・タイムズ』に入っていてもまったくおかしくないような二曲だ。特に「ショッカデリカ」の方は、ソックリな曲がこの二枚組にあったと思う。Fairlight (鍵盤付きの音楽用コンピューター)で創るデジタル・ビートの重い感じがそのまんまなのがあったよなあ。

「フィール・U ・アップ」もカミーユ声で歌うバックのリズムが、あの1980年代後半というプリンス絶頂期にはよくあったタイトなファンク・グルーヴで、歌い方は実に淡々としているが、これも楽しい。しかし「ザ・B ・サイズ」にあるタイトに疾走するファンク・チューンということなら、僕の場合、11曲目の「イレジスタブル・ビッチ」が一番カッコイイと思う。ほぼドラムスだけ(めちゃめちゃファンキー)という伴奏に乗せて、プリンスはトーキング・スタイルのヴォーカルを聴かせる。しかしこれ、1983年のシングル盤 B 面じゃないか。『1999』の頃だ。この頃、こんなにファンキーなものがあったけなあ、プリンスって? まあこういったしゃべり系のヴォーカル・スタイルは、のちに多用されることになった。

九曲目の「エロティック・シティ」は、1984年「レッツ・ゴー・クレイジー」の B 面。プリンスとマイク・リレーを聴かせるのがシーラ・E。『パープル・レイン』の頃なのにウェンディとかリサじゃないのかよ。シーラ・E なのかよ。絶対になんかあったよな、この二人。ちなみにプリンスのヴォーカルはかなり加工されて妙な声になっている。しかもこの「エロティック・シティ」が、これまたファンキーでいいよなあ。

最高のラヴ・バラードが八曲目の「アイ・ラヴ・U・イン・ミー」。『バットマン』の頃のシングル・ナンバーらしい。これは絶品の美しさだ。まったりとした感じのもので、プリンスには同系統のものがすごくいっぱいあるので珍しくはない。エレピみたいな音を出すシンセサイザー(だと思うんだが)だけに乗って、実に淡々と美しく、しかも超絶エロい歌詞をプリンスが歌っている。この音楽家の場合、こういうのにハマっちゃうと抜けられないんだよね。僕はいまだにハマりっぱなし。

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