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2017/08/03

78回転SPの「古い」音が好き!

Unknown

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Alexis_zoumbas1











(いま耳が聴こえにくいので音楽の細かいことが分らないシリーズ 12)

いま、アフリカ音楽集の『オピカ・ペンデ:アフリカ・アット・78・RPM』と東南アジア音楽集『ロンギング・フォー・ザ・パスト:ザ・78・Rpm ・エラ・イン・サウス・エイジア』の二つのボックスを聴きながら、いや、聴くというよりも、耳の聴こえがやはりまだダメなのでなんとなくボヤ〜ッとしか聴こえないそれらをダラダラ流しながら考えているのだが、アフリカやアジアでもアメリカでもどこでも、僕はどうやらこういった78回転 SP(グラモフォン)の音が大好きなんだなあ。

アメリカのそんな時代のジャズとブルーズの話はふだんから散々書きまくっているのであれだけど、それらのことをやっぱり今日も書こう。だってね、ホント〜ッに心の底から大好きでたまらないんだ、僕は78回転 SP の音がね。と言っても僕が聴いてきているのは、リイシュー LP やリイシュー CD だけ。SP 盤そのものの音はまだ一度しか耳にしたことがない。そんなに好きだというならそれじゃあダメじゃんと言われるのは必定だけど、経済的その他いろんな理由があって、SP 盤蒐集は諦めざるをえない。

一度だけの機会を除き(おそらく今後もない)、100%リイシュー・アルバムでしか聴いていない78回転 SP の音は、あんがい悪くない。それどころかかなりいいぞ。この世界のことをあまりご存知でなく、1970年代あたり以後からの録音物でしか音楽を聴いたことがあまりない方々には、SP の「音がいい」と言うとエエ〜ッ??!!って言われるんだけど、たくさんお聴きになっている方々からは、おそらく賛同の意を表明していただけるはずだ。

僕が(アメリカでの場合)1950年あたりまでの SP 盤時代の音楽が大好きだという理由は大まかに分けて二つある。一つは、第二次大戦後にようやく誕生したような新興ジャンルではない、19世紀後半〜20世紀初頭に花開いた種類のポピュラー・ミュージックの場合、その後約50年間ですっかり爛熟し絶頂期を迎えたので、そのいちばんいいときの姿は SP 盤にしか残されていないということ。

そりゃ誰だっていちばんよかったころの姿を知りたいんじゃないのかなあ?ジャズでもなんでも好きになればなるほど、そういう気持になるはずだ。最も輝かしかった時代の音を、それがたとえ現在の録音基準ではかると「悪い」録音状態だと言われるものでしか聴けないのだとしても、やっぱりぜひとも聴いてみたい、聴いて、絶頂期の姿を知って、できうれば愛したい 〜 こういう気持になるもんじゃないの?それが音楽愛好家の至極当然のありようじゃないか。もうはっきり言っちゃうが、そういう考えに至っていないジャズ専門家なんか、ジャズのことがぜんぜん好きじゃないんだよね。

録音技術の誕生・普及によってレコード産業が成立し、大規模なものになってレコード商品がどんどん売れるようになって以後の時代における音楽の変化速度は、それまでの何千何百年という人類音楽史のことを考えたら、全く比較にならないほど速い。あっという間に、場合によっては一年もかからずに新スタイルが誕生・拡散し、またまた次の別の新スタイルが出てくる。

そんなようなことになった20世紀以後は、だからジャズでもブルーズでも、アメリカじゃない他の国のなんでもいいが、既にあった音楽が、腐り落ちるギリギリ寸前の最高の旨味を発揮している爛熟状態にまで到達するのに50年も60年もかかったりするわけがない。だから上で書いたように古くから存在する種類の音楽のいちばんいいものは、78回転の SP 盤でしか聴けないんだよね。SP 盤そのものじたいで聴くのはいまではちょっと特別な機会じゃないと難しいので、そんな音源を LP でも CD でもなんでもリイシューしたアルバムで聴けばいいんじゃないか。それで充分(と僕は自分に言い聞かせている)。

そんなこと 〜 ジャズでもなんでも好きな音楽のいちばんいいものが SP 盤音源の世界にしか存在しない 〜 これが僕が SP 音源集を聴く一つの理由で、そしておそらく最大のものだろう。

もう一つは、最初のほうで触れたように SP 時代の音ってあんがい良いいんだよね。それが僕は好きなのだ。でもそうじゃなくても SP 時代の古い音は、ただ単に「古い」からという理由からだけで好きだという部分が僕にはある。いまはコンピューターでノイズ除去をするのが当たり前になったのでなかなか聴けなくなったが、復刻 LP なんかじゃよく聴けた SP 音源の スクラッチ・ノイズ。あれが聴こえるだけで、もうそれだけで、愛おしい。

振り返って考えるに、僕も最初からそんな古い時代の音が好きだったわけじゃない。いくらなんでもそれはありえない。ジョナサン・ウォードやその他大勢や、日本でなら保利透さんや毛利眞人さんやその他お三方のように、僕もその音楽そのものや、時代や、その時代と音楽のありように興味を持ったのがはじまりだ、そんな時代の音楽が素晴らしいんだと、いろんな(ジャズだと、最初のころは主に油井正一さんの)本で読み 、そんなにいいのなら是非聴きたい!油井さんやその他のみなさんがあんなに褒めるルイ・アームストロングやデューク・エリントンの1920年代録音をぜひ聴きたいぞとなって、手探りでレコードを買って聴いたみたのがまず最初のとっかかりだったはず。

だから最初は音の「状態」そのものが好きだったわけじゃなく、最高傑作なんだからとみなさんが言うその音の「中身」にだけ興味があった。正直に告白するが、最初はキツかったよなあ。例えばサッチモの二枚、CBS ソニー盤 LP の『サッチモ 1925-1927』『ルイ・アームストロングの肖像1928』だって、買って聴いた最初のころは、こ〜りゃ厳しい、特に28年録音集のほうがダメだ、あのズティ・シングルトンのドラムスなんだかなんなんだか、あのチャカポコ音はなんだこりゃ?!となっていて、25〜27年録音集の方がもっとマシなように聴こえていた。

この、サッチモの1920年代オーケー録音では、28年より25〜27年が(音質も)いい、特に27年の録音がいちばん状態が良いんじゃないかというのは、実はいまでもそうだと思っている。ウソだと思う方は、ぜひ聴きなおしてみてほしい。サッチモのコルネットの音だって、28年のより艶があって輝かしく聴こえるよ。スタジオ(やライヴなど)現場などでの生音は逆だったはずなのにねえ。

サッチモでも誰でも、僕もさすがに最初はこんなひどい音は厳しいと感じながら、またもう一つ正直に告白するが、しばらくのあいだは「我慢しながら」聴いていたのだった。この我慢は録音状態についてだけでなく、演奏内容にかんしても我慢していた。みんなあんなに褒めるのに、いったいどこがいいんだこれ?だいたいこんな悪い音(と当時は思っていたのが、いまでは正反対の気持)では演奏内容の良し悪しなんか判断できるかっ!という気分だったのだ。

SP 時代のジャズ音楽で、一度聴いた即その瞬間に「こ〜んりゃ楽しい!」と感動したのは、ベニー・グッドマン楽団の1930年代ビッグ・バンド録音の数々と、少しあとのグレン・ミラー・オーケストラと、デューク・エリントン楽団の1940年ヴィクター録音と、その数年あとのチャーリー・パーカーの一連のサヴォイやダイアル録音と、それくらいだけだったんじゃないかなあ。それらぜんぶ、SP 時代としてはもう末期、というかいちばん新しい部類なので、音は良い。演奏も最高なのだが。

デューク・エリントン楽団でも、そのヴィクター録音の1940年録音分が B 面だったレコードの A 面は1920年代録音集で、「ブラック・アンド・タン・ファンタシー」とか「ザ・ムーチ」とか「クリオール・ラヴ・コール」とか代表作が並んでいたが、そしていまではそれら20年代録音が好きで好きでたまらない僕だが、むかし最初にレコード買って聴いたころは、はっきり言うがまあしんどかった。サッチモの20年代オーケー録音集同様に。

しかしなんどもなんども繰返し聴いたのだ。素晴らしいんだ、最高の名演集なんだと油井正一さんその他のみなさんがおっしゃるのを信じて、僕も分るようになりたい!という一心で、そりゃもう毎日毎日厳しい思いに耐えながら聴いたのだった。本当に繰返し繰返し。カセットテープにダビングしたそれを。だってレコードはあまり頻繁に再生を繰返すと、磨耗して音が劣化するとみんなが言うからさぁ。あれって本当なんですか?

硬いスルメをがしがし噛んでいるうちに美味くなってくるようなものなのか、あるいは女性にとってのセックスみたいなものなのかどうなのか、僕は男性なもんでそこは分りませんが、最初はつらかった1920年代のジャズ録音が、だんだん快感になってきてヤミツキになって、とうとうどうやってもやめられなくなって、それは痛いことが快感になるというマゾヒズムではなく、ふつうの意味で本当に気持良くなってきたんだよね。あの古い音じたいが超快感になって、ある時期以後いまは、もう絶対に離れられない。

そうすると「古い」とは感じなくなってきて、だから今日最初から書いているように、SP(音源)の音って、あんがい、かなり良いと聴こえている。どうして SP の音が良いと思うのか、中音域がしっかりしているとかなんとか、オーディオ面の科学的分析でなにか言えることがあるんじゃないかと思うんだけど、そのあたりは素人の僕にはサッパリ分らないので、できる方にお任せしたい。僕なりに表現すると、なんだか丸くてまろやかでふっくらしていて、とげとげしくなく、特にヴォーカルなどが生々しく響く。(リイシュー)CD ですけどね、聴いているのは。

いや、ヴォーカルだけじゃないなあ、まあ主にヴォーカルの音が良いなと思う SP 音源だけど、それ以外でもソロでフィーチャーされているトランペットやサックスやクラリネットなどの管楽器も良い響きだし、ヴァイオリンなんかも素晴らしく活き活きとした生々しいサウンドに聴こえる。ウソだと思う人は、ぜひアメリカで録音したギリシア人ヴァイオリニスト、アレヒス・ズンバスの1920年代録音集『ア・ラメント・フォー・エピルス 1926-1928』を聴いてみてよ。腰抜かすよ。

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