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2017/08/22

郷土愛に満ち満ちたマルディ・グラ・クイーンの快作

Unknown








荻原和也さんのブログ記事で、こういうアルバムがあるんだって初めて知ったシャーメイン・ネヴィルの1998年作『クイーン・オヴ・ザ・マルディ・グラ』。シャーメインはあのチャールズ・ネヴィル(ネヴィル・ブラザーズ)の娘らしい。娘がいて地元ニュー・オーリンズで歌手をやっているということも僕は知らなかった。セカンド・ライン・ファンクには滅法弱い僕ですがゆえ〜、ええ、慌てて速攻で買いましたとも、シャーメイン・ジャクスンの『クイーン・オヴ・ザ・マルディ・グラ』。

そうしたら、これが超快作!気持いいのなんのって、こういうのこそ、セカンド・ライン・ファンクの代表的傑作として位置付けたいと思うほどの一枚なんだよね。しかも収録の全11曲、マルディ・グラ(ニュー・オーリンズのカーニヴァル)関連の曲がかなり多い。いやあ、多いというかそればっかりじゃん。現地でのそれは、イコール、ファット・チューズデイだから二月開催だけど、シャーメインの『クイーン・オヴ・ザ・マルディ・グラ』を日本で聴くなら、いまの真夏期がいちばんピッタリ。汗をたっぷりかいて爽快感を味わうみたいな意味でね。

シャーメインの『クイーン・オヴ・ザ・マルディ・グラ』。一曲目「シューフライ」はオリジナル曲みたいだけど、いきなり叩きはじめるドラマー(レイモンド・ウィーバー)が典型的で完璧なセカンド・ライン・ビートを刻む。叩きはじめたその瞬間に、嗚呼、降参ですとなってしまった僕。ニュー・オーリンズ独特のシンコペイティッド・ファンク・グルーヴがお好きな方々であれば、全員同じことになってしまうはず。直後にエレキ・グターがグチュグチュ刻むので誰かと思って見たら、やっぱり山岸潤史じゃないの〜。

二曲目があの「マルディ・グラ・マンボ」。一番知られているのがホウケッツの1954年ヴァージョンだけど、このホウケッツには、ミーターズ結成前のアート・ネヴィルがいたんだったよね。シャーメイン・ヴァージョンではバリトン・サックスがカッコイイなあと思うと、それはレジー・ヒューストン。レジーはバリトンだけじゃなく、アルト、ソプラノ と各種を吹き分けて大活躍。アルバム『クイーン・オヴ・ザ・マルディ・グラ』のサウンドの肝になっている。

シャーメインのヴォーカル、レイモンド・ウィーバーのドラムス&パーカッション、レジー・ヒューストンのサックス、その他パーカッション群&バック・コーラス隊 〜 これら、特にドラムスが『クイーン・オヴ・ザ・マルディ・グラ』のサウンド&リズムの中核になっているように感じる。ハモンド B3 とか山岸潤史のギターも素晴らしいものの、まあスパイス的というか彩りを添える程度。

聴きようによっては『クイーン・オヴ・ザ・マルディ・グラ』、ドラムスだけの上にシャーメインのヴォーカル(とパーカッションもやっている模様)が乗っているというふうにも受け取れるもので、編成だけ見たらかなりシンプルな音楽なんだけど、聴いた感じはゴージャスだ。それはひとえにドラマーの叩き方にあるんだよね。レイモンド・ウィーバーって凄い腕前だよなあ。たった一人で(パーカッションは多重録音だろうけれど)こんな複雑に跳ねるリズムを表現できるなんて。バスドラとシンバルとスネアの使い方が特に素晴らしい。特にバスドラ(そろそろベース・ドラムに修正しようかな)が野太く超タイトな音で録れていてド迫力。

主役シャーメインのヴォーカルは、『クイーン・オヴ・ザ・マルディ・グラ』で聴くと、一瞬、パワフルというか豪放磊落で細かいことは気にしない女傑タイプにも聴こえるかもしれないが、じっくりよく聴くと実は正反対。かなりデリケートな歌手に違いないと僕は判断する。それは、アルバム8曲目のスロー「イフ・アイ・エヴァー・シーズ・トゥ・ラヴ」(男女間の恋愛ではなく郷土愛を歌った曲)とか、ラスト11曲目「クリーン・アップ」の哀切感とかに強く感じるというよりも、ちょっと聴いた感じ、その逆の陽気に騒いでいるようなアップ・ビートのマルディ・グラ・ソングのほうに、より強くシャーメインの繊細さ、かなり細やかに神経の行き届いたヴォーカル表現を僕は感じる。

例えばアルバム四曲目がお馴染「アイコ・アイコ」、五曲目がプロフェッサー・ロングヘアの「マルディ・グラ・イン・ニュー・オーリンズ」なんだけど、この二曲もテンポのいい快活なセカンド・ライン・ファンク・チューン。リズムだってサウンドだってコーラス隊だって派手で賑やか。だけど、一番上に乗っかっているシャーメインの歌い方の端々に、実にデリケートなフレイジングが聴きとれる。息づかいまで聴こえてくるかのようで、それはまあ録音がいいおかげでもあるけれど、ブレス(息つぎ)を入れるタイミングにまでも相当に気を配っているし、ワン・フレーズ、ワン・フレーズ、歌いはじめたり歌い終える瞬間のちょとした音の微妙きわまりない持ち上げ・下げ方がメチャメチャ細やか。

僕にはそんな歌手だとシャーメインは聴こえるので、最初『クイーン・オヴ・ザ・マルディ・グラ』を聴きはじめたときは、ただひたすら楽しい楽しい、賑やかにダンス!ダンス!っていうフィーリングだったんだけど、そしてそれはいまでも基本的には変わっていないが、なんどか聴くうちに、部屋のなかでも踊らずに、ジッと座ってこの主役女性歌手のヴォーカル表現の細かい部分を漏らさず聴きとろうと耳を凝らすようなときもあるんだよね。

でも!もちろんシャーメイン・ネヴィルの『クイーン・オヴ・ザ・マルディ・グラ』は、快活陽気でアッパーなセカンド・ライン・ファンクの快作には違いない。だからゆえ、歌い方の瑣末な部分にあまりこだわりすぎず、楽しいグルーヴに身を委ね踊って、あまり考えこまず、約一時間のエンターテイメント・タイムを味わいたい。

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