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2017/09/01

マイルズ『”アナザー”・ビッチズ・ブルー』

Completebitchesbrewsessionscover








五週連続のマイルズ・デイヴィス「アナザー」・シリーズ。二回目の今日は『ビッチズ・ブルー』篇だが、音源は1998年リリースの『ザ・コンプリート・ビッチズ・ブルー・セッションズ』と2003年リリースの『ザ・コンプリート・ジャック・ジョンスン・セッションズ』の両方から取った。前者四枚組が1969年8月19日〜70年2月6日の、後者五枚組が70年2月18日〜70年6月4日の録音集だが、後者「ジャック・ジョンスン」の名を冠したボックスのほうにも、どっちかというと『ビッチズ・ブルー』の音傾向に近いようなものがある。

ってことで、以下がその『”アナザー”・ビッチズ・ブルー』プレイリスト。いまどき CD フォーマットにこだわるのはあまり意味がないのだとは分りつつ、それでもやはり CD 二枚組という体裁は考慮してある。

CD1

1. The Little Blue Frog (Alt)  12:15
2. Yaphet  9:42
3. Corrado  13:12
4. Guinnevere  21;08
5. Double Image  8:28
(Total 65 min)

CD2

1. Willie Nelson(Remake Take 2) 10:19
2. Recollections 18:58
3. The Mask (Part Two) 15:48
4. Konda  16:32
5. Little High People (Take 8)  9:29
(Total 72 min)

CD1はすべて『ザ・コンプリート・ビッチズ・ブルー・セッションズ』から。CD2は二曲目「リコレクションズ」だけが『ザ・コンプリート・ビッチズ・ブルー・セッションズ』からで、それ以外はすべて『ザ・コンプリート・ジャック・ジョンスン・セッションズ』から。

以下、録音データ。すべてニュー・ヨーク・シティのコロンビア・スタジオでの録音。

CD1

1. Recorded November 28, 1969.

Miles Davis - trumpet
Steve Grossman - soprano sax
Benny Maupin - bass clarinet
John McLaughlin - guitar
Herbie Hancock - electric piano
Chick Corea - electric piano
Larry Young - organ
Dave Holland - bass
Harvey Brooks - electric bass
Khalil Balakrishna - sitar
Bihari Sharma - tamboura, tabla
Billy Cobham - drums
Airto Moreira - percussions

2 & 3. Recorded November 19, 1969.

Miles Davis - trumpet
Steve Grossman - soprano sax
Benny Maupin - bass clarinet
John McLaughlin - guitar
Herbie Hancock - electric piano
Chick Corea - electric piano
Ron Carter - bass
Harvey Brooks - electric bass
Khalil Balakrishna - sitar
Bihari Sharma - tamboura, tabla
Billy Cobham - drums
Airto Moreira - percussions

4. Recorded January 27, 1970.

Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - soprano sax
Benny Maupin - bass clarinet
John McLaughlin - guitar
Chick Corea - electric piano
Joe Zawinul - electric piano
Dave Holland - bass
Harvey Brooks - electric bass
Khalil Balakrishna - sitar
Jack DeJohnette - drums
Billy Cobham - drums
Airto Moreira - percussions

5. Recorded January 28, 1970.

Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - soprano sax
John McLaughlin - guitar
Chick Corea - electric piano
Joe Zawinul - electric piano
Dave Holland - electric bass
Harvey Brooks - electric bass
Khalil Balakrishna - sitar
Jack DeJohnette - drums
Billy Cobham - drums
Airto Moreira - percussions

CD2

1. Recorded Februay 28, 1970.

Miles Davis - trumpet
Steve Grossman - soprano sax
John McLaughlin - guitar
Dave Holland - electric bass
Jack DeJohnette - drums

2. Recorded February 6, 1970.

Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - soprano sax
John McLaughlin - guitar
Chick Corea - electric piano
Joe Zawinul - electric piano
Dave Holland - electric bass
Jack DeJohnette - drums
Billy Cobham - triangle
Airto Moreira - percussions

3. Recorded June 6, 1970.

Miles Davis - trumpet
Steve Grossman - soprano sax
John McLaughlin - guitar
Herbie Hancock - organ
Chick Corea - electric piano
Keith Jarrett - electric piano
Dave Holland - bass
Jack DeJohnette - drums
Airto Moreira - percussions

4. Recorded May 21, 1970.

Miles Davis - trumpet
John McLaughlin - guitar
Keith Jarrett - electric piano
Jack DeJohnette - drums
Airto Moreira - percussions

5. Recorded June 3, 1970.

Miles Davis - trumpet
Steve Grossman - soprano sax
Herbie Hancock - electric piano
Chick Corea - organ
Keith Jarrett - electric piano
Ron Carter - bass
Jack DeJohnette - drums
Airto Moreira - percussions

CD1の幕開け「ザ・リトル・ブルー・フロッグ」は別テイクのほうが断然カッコイイのでそっちを。しかしマスター・テイク含めこんな楽しいグルーヴ・ナンバーが、1998年までまったく一度も日の目を見たことがなかったなんてなあ。確かにリアルタイム・リリース作品ではどのアルバムにも入りそうもない感じのものだけど、もう一枚新作を仕立て上げればよかったんじゃないか、テオ・マセロ、これだけ録りだめたものがあったんだからさあ。特にジョン・マクラフリンのギターと、右チャンネルのフェンダー・ローズはたぶんチック・コリアのスタイルだからチックだと判断するが、二者の刻みが生み出すグルーヴが気持ちいい。
2「ヤーフェット」、3「コラード」は、いかにも『ビッチズ・ブルー』期、しかもその直後のセッションだというティピカルなサウンド。そしてこの日は、シタールやタブラなどインド楽器のマイルズ録音史上初導入だった。このサウンドの延長線上で、リズムをもっとハードでファンキーでタイトにしたのが1972年録音の『オン・ザ・コーナー』だ。3「コラード」のゆったりとした大きなノリ、うねりはアメリカ黒人リズム&ブルーズのもので、ジョン・マクラフリンのギター・ソロの弾き方もその系統。
4「グィネヴィア」は、まあ退屈な感じではあるけれど、これを入れておかないわけにはいかないのだ。この時期(1968〜75年)のマイルズにはほかに一曲もないカヴァー・ソングだし、しかもそれはロック・ナンバーだ。そう、みなさんご存知クロスビー、スティルス&ナッシュの曲で、書いたのはデイヴィッド・クロスビー。アルバム『クロスビー、スティルス&ナッシュ』三曲目収録のオリジナルは五分もないものだけど、女性への敬愛を歌ったものなのと、ちょっと風変わりなサウンドの響き(特にギターが変態的だ)と、モーダル・ナンバーであるのとで、マイルズはとりあげたのかなあ。それにしても21分間も、しかもダラダラとやりやがって。う〜ん、退屈だ(じゃあ選ぶなよな>自分)。
5「ダブル・イメージ」はジョー・ザヴィヌルの書いた曲で、リアルタイムでは短縮編集されたものが『ライヴ・イーヴル』に収録されていた。それは「ジェミニ/ダブル・イメージ」という曲題だが、「ジェミニ」なんていう曲の録音はない。テオが編集してそんな曲題にしただけなんだよね。約八分間のオリジナル・ヴァージョンのほうが、この曲の楽想がもとから持つグルーヴ感と、そしてマクラフリンのロック・ギターのカッコよさが分りやすい。

CD2。1の「ウィリー・ネルスン(リメイク・テイク2)」 は最終完成品。これより前のものは5ヴァージョン発表されているが、この完成品が一番グルーヴィでカッコいい。このエレベ、デイヴ・ホランドなんだよね。左チャンネルで弾くマクラフリンのギター・スタイルが、どっちかというとまだ『ジャック・ジョンスン』じゃなく『ビッチズ・ブルー』寄りだと判断して、このプレイリストに入れた。ボスのトランペット吹奏内容は、どっちにでも入りそう。10:45 から。
2「リコレクションズ」でちょっとだけ時間を逆戻り。ジョー・ザヴィヌルの書いたこれは「イン・ア・サイレント・ウェイ」の異名同曲。確かにこれもテンポのないユートピア・サウンド。でも1969年2月のときの録音と比べると、やはり少しだけサウンドは変化しているのがお分りいただけるはず。しかしこれは、このプレイリスト『”アナザー”・ビッチズ・ブルー』全体のチェンジ・オヴ・ペースのつもり。それにしては約19分と長いけれど。
3「ザ・マスク」はチック・コリアのオリジナル・ナンバーで、この時期のマイルズには珍しいストレート・ジャズ風な演奏。スタジオ録音ヴァージョンは2003年まで未発表だったが、ライヴでは演奏していたので、例えば1970年6月の四日間を収録した『マイルズ・アット・フィルモア』二枚組でも断片的に聴ける。「ザ・マスク」なんていう曲名はもちろんどこにもないが。

4「コンダ」はベーシスト不参加の、マイルズにしてはかなり珍しい一曲で、主にキース・ジャレットのフェンダー・ローズとマクラフリンのギターだけに乗ってマイルズが吹くというもの。ちょっと面白いんじゃないだろうか。スタティックなフィーリングだけどグルーヴ感はある。アイアート・モレイラのビリンバウも聴こえるね。それにしてもマイルズが吹くパートは、一部で低音管楽器がオクターヴ・ユニゾンしているかのように聴こえなくもないが、オクターヴァーかなにかのエフェクターを使っているのだろうか?
5「リトル・ハイ・ピーピル」 で締めたのは、これまたカッコいいファンキーなグルーヴ・チューンだからだ。ハービーもキースも(たぶん右がハービーだ)リング・モデュレイターとワウをかませて音を歪めてあるのが、僕には気持いい。リズムのフィーリングもシャープでタイトだ。全体で約九分間の七分半過ぎでようやく出てくるマイルズのトランペットも電気を通しているし、またトランペット・フレーズはインプロヴィゼイションではなく、断片的でシンプルなモチーフを反復演奏するだけ。『オン・ザ・コーナー』だって見えているよね。

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