マイルズ『"アナザー”・ジャック・ジョンスン』
マイルズ・デイヴィスの1969〜75年録音アナザー・シリーズ。五週連続シリーズ三回目の今日は『ジャック・ジョンスン』篇。『”アナザー”・ジャック・ジョンスン』プレイリストは、すべて2003年リリースの『ザ・コンプリート・ジャック・ジョンスン・セッションズ』からとってある。
1. Right Off (take 10) 11:10
2. Johnny Bratton (take 4) 8:19
3. Archie Moore 4:45
4. Duran (take 6) 11:22
5. Sugar Ray 6:16
6. Ali (take 4) 10:16
Total 53min
以下、録音データ。場所はすべてニュー・ヨーク・シティ。
1. Recorded April 7, 1970
Miles Davis - trumpet
John McLaughlin - guitar
Michael Henderson - bass
Billy Cobham - drums
2. Recorded February 27, 1970
Miles Davis - trumpet
Steve Grossman - soprano sax
John McLaughlin - guitar
Dave Holland - electric bass
Jack DeJohnette - drums
3. Recorded March 3, 1970
Miles Davis - leader, director
John McLaughlin - guitar
Dave Holland - electric bass
Jack DeJohnette - drums
4. Recorded March 17, 1970
Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter- soprano sax
Bennie Maupin - bass clarinet
John McLaughlin - guitar
Dave Holland - electric bass
Billy Cobham - drums
5. Recorded March 20, 1970
Miles Davis - trumpet
Steve Grossman - soprano sax
John McLaughlin - guitar
Dave Holland - electric bass
Lenny White - drums
6. Recorded May 19, 1970
Miles Davis - turmpet
Steve Grossman - soprano sax
John McLaughlin - guitar
Herbie Hancock - organ
Keith Jarrett - electric piano
Gene Parla - electric bass
Billy Cobham - drums
Airto Moreira - berimbau
この『”アナザー”・ジャック・ジョンスン』の特徴はとても明快でとてもシンプル。ジョン・マクラフリンがロック・ギターを弾きまくり、エレベがブンブン鳴るカッチョええロック・マイルズってことだ。まあお嫌いな向きもいらっしゃるでしょうが、僕なんかは本当にすごく好きなんだよね。
1「ライト・オフ(テイク10)」は、1971年2月24日リリースのアルバム『ア・トリビュート・トゥ・ジャック・ジョンスン』の A 面「ライト・オフ」の元音源。『ザ・コンプリート・ジャック・ジョンスン・セッションズ』にはこの曲の演奏が4ヴァージョン収録されているのだが、4つ全部聴くと、71年発売の商品は、4つすべてからテオ・マセロが採用して切り貼りしているのだと分る。だがあくまで本体はテイク10なのだ。これにいろいろと継ぎ足しているだけ。だから贅肉をそいだ生状態のテイク10が一番カッコイイ。しかしテイク10って、これ以前に9個あるんだろう?ぜんぶ出せ〜っ!
2「ジョニー・ブラットン(テイク4)」は、3、5、6とあわせ2003年の「ジャック・ジョンスン」ボックス・リリースまで完全未発表だったもの。こんなにカッコイイのに不思議だよ。このエレベ、デイヴ・ホランドなんだよね。以前も書いたことだけど、まるでラリー・グレアムみたいじゃないか。左チャンネルのマクラフリンが弾くロック・ギターもやっぱりキモチエエ〜!
3「アーチー・ムーア」はスローなリズム&ブルーズ/ロックそのまんま。いきなり左チャンネルでマクラフリンがグルーヴィに弾きはじめるのもいいが、これのエレベもデイヴ・ホランドなんだよね。二人とも信じらんないカッコよさ。なんだこれ〜。この曲ではその二人とドラマーのジャック・ディジョネットだけのトリオ編成で演奏している。マイルズのトランペットもお休み。
4「デュラン(テイク6)」は、1981年リリースの未発表集『ディレクションズ』に短縮編集ヴァージョンが収録されていたもののオリジナル・コンプリート・ヴァージョン。デイヴ・ホランドがやはりエレベを弾き、しかもそれにエフェクターをかませて音を歪め、さらに同一フレーズをヒプノティックに反復しているのが素晴らしい。そんなエレベ・ラインがこの演奏の根幹を成しているし、マイクル・ヘンダスンをエレベに起用した1973〜75年までのファンク・マイルズの基礎がすでにしっかりある。バス・クラリネットでベニー・モウピンが参加しているのが、この70年3月時点では例外的だが、まるでハービー・ハンコックのファンク路線を聴いているかのよう。
5「シュガー・レイ」ではドラマーがレニー・ワイト。マイルズの録音セッションでは珍しい名前だが、それ以外は当時のレギュラー・メンツでやるミディアム・グルーヴィな一曲。それにしてもここでのデイヴ・ホランドのエレベの音なんか凄いじゃないのさぁ。あのブーツィ・コリンズみたいだよ〜。マイルズもブツ切りにした断片を投げつけるように吹いている。
6「アリ(テイク4)」ではエレベがジーン・パーラ。マイルズと一緒に録音したのはこれ一曲だけのはず。ジーンのエレベもいいが、アイアート・モレイラのビリンバウも面白い。そして右チャンネルのキース・ジャレットのフェンダー・ローズもエフェクターで音を歪ませてあって、弾きかたもグルーヴィでカッコイイよね。ボスのトランペットのオープン・ホーンも輝かしい音色だ。
それにしてもこの1970年春ごろのこんなロック・マイルズって、ホンット〜〜っにカッコイイ。キモチエエ〜〜!
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