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2017/10/19

みんな大好きフレディ・キングはヴェンチャーズ?

Bluesguitarherocover








アルバートはどうなのかイマイチ分らないが、B.B.とフレディのキング二名は日本でもメチャメチャ人気があってみんな聴いているので、僕なんかがちょっと一つ書いておく必要なんかぜんぜんないのかもしれない。アルバートも含め、ブルーズ界のこの三大キングをそこまでの存在にしたのは、ひとえにエリック・クラプトンの知名度、影響力ゆえだ。だからそんな悪口ばっかり言うなよ>僕。ローリング・ストーンズとかについてもね>そこのあなた。いやまあたんなる個人的好みだけの話だと分っていますけれど、彼らやその他1960年代にデビューした UK (ブルーズ・)ロッカーたちがああもやってくれなかったら、なかなか大変だったんじゃないでしょうか。

今日は別に UK ロックやクラプトンの話をしたいわけじゃないのだが、フレディ・キングというアメリカ黒人ブルーズ・マンがここまで知名度があるのは、間違いなくクラプトンのおかげなんだよね。ヴォーカルはともかくギターの弾き方において、クラプトン最大の先生がフレディ・キングだった。ジョン・メイオールのブルーズブレイカーズ時代から現在までずっとそう。あのいろんな意味で有名なブルーズ・アルバム1994年の『フロム・ザ・クレイドル』なんか、一枚丸ごと録音時のスタジオで、フレディ・キングをずっと意識しながらやったような感じじゃないか。できあがりがどうなのかはともかくとして、敬意はたっぷり伝わってくる。音楽家のはらった敬意は音化されなきゃ意味ないだろうとか、まあそんな厳しいこと言わないで。

そのクラプトン『フロム・ザ・クレイドル』がリリースされた1994年の直前、93年に英 Ace が発売したフレディ・キングの一枚『ブルーズ・ギター・ヒーロー』こそが、このブルーズ・マンを知るのにもっともふさわしい格好のベスト盤なんだよね。これは1960〜64年のフェデラル・レーベル(キングの傍系)録音からのアンソロジーで、全24曲。フレディ・キングの有名代表曲はぜんぶあるし、これはしかもその後 Pヴァインが日本盤をリリースしたらしい。そっちを買えばよかったかもなあ。エイス盤を見つけるやいなや速攻で手にとってレジへ持って行ってしまったからなあ。P ヴァイン盤は、ひょっとして小出斉さんあたりが解説文をお書きなんじゃないだろうか?お持ちの方、教えてください。

フレディ・キングのフェデラル録音集『ブルーズ・ギター・ヒーロー』には多くのインストルメンタル・ブルーズがある。数えてみたらぜんぶで7曲。24個のうちの7個だから、特にギター演奏に特化しているというわけではないブルーズ・マンとしてはかなり多いほうだと言えるはず。実際、1960年代フェデラル(は、この人のばあい68年まで)時代のフレディ・キングは、インストルメンタル・ブルーズが一つの売り物、トレード・マークでもあったんだよね。

エイス盤『ブルーズ・ギター・ヒーロー』だって、録音順、発売順を無視して1961年のビッグ・ヒット「ハイダウェイ」(”Hide Away”だけど「ハイド・アウェイ」と書く気になれないんだ)を一曲目に持ってきているくらいで、このインストルメンタル・ブルーズはフレディ・キングの名刺代わりみたいなシグネチャー・ソングとなった。
しかしこれ、それにしても呑気でかる〜い感じだよねえ。むかしはこんなもん、黒人ブルーズ愛好家としては好きになっていてはイカンのじゃなかろうか?なとど悩んだり…、はウソだが、ちょっとそれに近い感情があったのは確かなことだった。まったくどこもシリアスじゃないし、ブルージーでもなく、かたちは12小節3コードの定型だけど、これはいわゆる<ブルーズ>っぽいフィーリングが感じられないよなあとか、要するに僕の音楽脳が幼稚なだけだったのであります。

もっとヒットしたのがエイス盤3曲目の、これも1961年「サン・ホセ」なんかもそうだし、あるいは12曲目のやはり61年「セン・サ・シュン」(ハウンド・ドッグ・テイラーもやったこれは、マディ・ウォーターズ「ガット・マイ・モージョー・ワーキング」のインストルメンタル・ヴァージョン)なんかもそうだけど、すご〜くかる〜い感じで、ノリはいいがブルージーさはなく、呑気だ。軽薄だとすら感じるほど。
ほかにもあるフェデラル録音でフレディ・キングがやるインストルメンタル・ブルーズ。これらは、むかしの僕は分っていなかったが、どう聴いてもダンス・チューンだよね。しかも1960年代だし、できあがりを聴いても、間違いなくあの時代のあんな空気を吸って、つまりサーフィン・ミュージックとかホットロッド・インストとか、まさしくああいったものと同調している。だからここではっきり言っちゃうが、こういったインストをやるフレディ・キングとは、すなわちヴェンチャーズなんだよね。黒人ブルーズを聴かない日本人でも、ある世代なら全員ヴェンチャーズを知っている。僕はその世代ではなく、少し下なんだけど。

フレディ・キング=ヴェンチャーズみたいなことを言うと、熱心な黒人ブルーズ愛好家のみなさんには絶対に怒られるんだけど、間違いないように僕は思う。がまあしかしやっぱりヴェンチャーズではないフレディ・キングのことも書いておこうっと。ヴォーカルもとっているフェデラル録音だど、有名なやつはことごとくクラプトンさんがやってくれちゃっているので、あまり書くことないのだが、エイス盤だと例えば四曲目の「アイム・トア・ダウン」、八曲目の「ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」あたりはあまりにも有名すぎて、やっぱり書くことないや。
しかし、例えば後者「愛の経験」をクラプトン・ヴァージョンでお馴染のみなさんは、フレディ・キングのヴォーカル表現をお聴きになって、ギターは確かにこの二名、似ているというかソックリだけど、歌のほうはだいぶ違うじゃないかと感じるはずだ。そう、UK ブルーズ・ロッカーにしろほかのどこの国のだれにしろ、声と歌い方だけは真似できないもんね。ひょっとしてクラプトンもほかのみんなも、声で歌ったら絶対に敵わないと諦めて、ギター演奏のコピーに精を出したってことなんだろうか?

エイス盤五曲目「シー・シー・ベイビー」は、曲題で察しがつくように、古くからあるブルーズ・スタンダード「シー・シー・ライダー」の改作だ。しかしこれもアップ・テンポで呑気で愉快にジャンプして、これ、パートナーに浮気されて悶々としながら問い詰めては悩み苦しむ曲だったはずなのがあまりの変貌ぶりで、音楽って解釈次第でどうにでも化けうるっていう好例だよなあ。
ギター・インストルメンタルではないフレディ・キングのフェデラル録音は、だいたい2パターンに分別できる。やはりダンス用であるアップ・テンポで軽快な調子のいい輪郭のはっきりしたジャンパーか、そうじゃなければ6/8拍子のスロー・テンポで、三連パターンに乗って、歌もギターも思いのたけを吐き出すかのようなもの。後者はややドロドロかというと、この人のばあいあんがいそれほどでもない一種の軽みが持ち味なんだよね。

ただ三連バラード(やその他苦悩するスローもの含む)・ブルーズでも、ヴォーカルは軽いフィーリングがあって、このあたり、本当に B.B. キングの影響下にある人なのかと疑いたくなってくるほどで、うんまあ確かにそれは間違いなく BB の影響下にはあって、例えば歌のワン・フレーズのあいまあいまに「イェ〜〜ッス!」と絞り出すようにシャウトするあたりとか、そのほか諸々ソックリそのままだ(でも、B.B. にあるゴージャスな重みがないけれど)。

でもギター・プレイのほうは、三連バラード(ふうなテンポのもの)でもかなりの迫力があって、ためてためてためこんだ情念を、瞬時に思い切りぶつけるかのような情熱的なスタイルで弾く。熱い。本当に熱い。ヴォーカルのほうはやっぱり B.B. キングとは比較できないと思う僕だけど、ギター演奏なら匹敵しうる極上品だ。

という具合に僕は考えているので、小出斉さんはどこでだったかどこかで、エイス盤の『ブルーズ・ギター・ヒーロー』というアルバム・タイトルは1993年のリリースとしてはちょっとどうか?とおっしゃっていたはずなのだが、僕にはこれこそフェデラル・レーベル時代のフレディ・キングにぴったり似合っている題名じゃないかと思えるのだ。

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