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2017/12/04

ジョージア・ブルーズの一方の雄、バーベキュー・ボブ




特にアメリカ黒人音楽好きというわけではないふつうの日本人、いや、アメリカ人にとっても、南部ジョージア州アトランタのイメージは、たぶんコカ・コーラ、デルタ航空、そして CNN の本社がある都市ということになるんだろう。僕を含む音楽愛好家にとっては、戦前からのジョージア・ブルーズの世界、そして戦後のサザン・ロックの世界ですっかりお馴染み。そしてこれら二つは、オールマン・ブラザーズ・バンドらが結びつけた。

オールマンズで最もよく知られているかのフィルモア・ライヴ一曲目「ステイツボロ・ブルーズ」は、もちろんブラインド・ウィリー・マクテルの曲だ。オールマンズは、直接的にはタジ・マハールの解釈を参考に、っていうかそのまま下敷きにしたのだとはいえ、米南部ジョージア州アトランタという街を代表するブルーズ・マンであるマクテルをとりあげるのは、サザン・ロックのバンドなんだぜ!っていう自認と誇りの表現でもあっただろう。「ホトランタ」っていう曲もあるよね。

でも今日はブラインド・ウィリー・マクテルの話ではなく、ジョージア・ブルーズのイメージをマクテルと二人で代表したもう一人、バーベキュー・ボブのことについて書きたい。しかしそれにしても、マクテルのほうはオールマンズがやったり、1990年代にボブ・ディランもやったり(『奇妙な世界に』)したし、そうでなくたってブルーズ名人だしで、いまでもかなり聴かれている(よね?)と思うんだけど、同じく戦前のジョージア・ブルーズを象徴したバーベキュー・ボブのほうは、一曲を除き、ほぼ忘れられてしまっているかもしれないよなあ。

その例外的一曲とは「マザーレス・チャイル・ブルーズ」で、どうしてこれだけ?かっていうとエリック・クラプトンがやってくれているからだ。1974年の『461・オーシャン・ブールバード』の一曲目も「マザーレス・チルドレン」という曲名だが、ややこしいことにそれは別の曲で、1993年のブルーズ・アルバム『フロム・ザ・クレイドル』の11曲目に「マザーレス・チャイルド」がある。以下にそのクラプトンのアルバムの Spotify にあるやつをご紹介するので、上の Spotify にあるアルバムでのバーベキュー・ボブのものと聴き比べてみてほしい。YouTube にもあるが、権利関係がクリアされていて音楽家にお金が行く正規音源のほうがいいでしょ。
クラプトンのはバーベキュー・ボブのヴァージョンそのまんまだと分るよね。『フロム・ザ・クレイドル』というアルバムはどの曲もそうで、悪いく言えばモロパクリで、しかもかなりの劣化コピーなんだけど、まあまあいつもそんな悪口ばかり僕も言わないで、こうやってオリジナルそのままでカヴァーしてくれたおかげで、もとのアメリカ黒人ブルーズ・メンも注目されることだってあったかもしれないから、クラプトンには功績もあると認めないといけないよなあ。少なくともバーベキュー・ボブだなんて、このクラプトンのカヴァーがなかったら、完全に人びとの記憶から跡形なく消えていたかもしれないんだし。

いちばん上で Spotify にあるのをご紹介したバーベキュー・ボブのアルバム『チョコレイト・トゥ・ザ・ボーン』を、僕は CD で持っていて、まったく同じものなんだけど、それは Yazoo 盤。1992年のリリースと記載がある。僕がこの戦前ジョージア・ブルーズ・マンをはじめて知ったのがこの92年で、だからクラプトンのカヴァーはそのすぐあとだったみたいなイメージ。しかしヤズー盤(でも Spotify にあるのでも)『チョコレイト・トゥ・ザ・ボーン』は全20曲で、「マザーレス・チャイル・ブルーズ」以外にも面白いブルーズがたくさんあるんだよね。

たとえば四曲目「ミシシッピ・ヘヴィ・ウォーター・ブルーズ」は、例の1927年ミシシッピ大洪水が題材。同じ題材だと、二年後にメンフィス・ミニーがやったレコードが有名なはず。それをもとにレッド・ツェッペリンが四枚目のアルバムでやったし、だからロック・ファンもみんな知っているものだ。この題材だとベシー・スミスがやったのがいちばん早かったんだよ。やはりああいった1920年代の北部の都会派女性ブルーズ歌手と、南部のカントリー・ブルーズと、ロック・ミュージックは連続しているよなあ。

バーベキュー・ボブのアルバム八曲目には「聖者の行進」がある。もちろんいろんなニュー・オーリンズ・ジャズ・メンもやっている超有名黒人宗教歌。曲じたいがあまりにも有名であるがゆえに、かえってバーベキュー・ボブのオリジナル・スタイルがよく分るのではないだろうか?特にギター。叩きつけるように、というか強くはじくようにパーカッシヴで、しばしばスラッピングを入れる弾きかたは独特だ。そのリズムは強靭で、グイグイ進むような迫力がある。低音弦でそのスラップを使ってボンボンとベース・リフを弾くのもイイ。

その「聖者の行進」のコードの響きを聴くと、たぶん普通の6弦ギターだと思うんだけど、バーベキュー・ボブは6弦も弾くものの、12弦ギターこそがトレード・マークなんだよね。この12弦ギターを頻用するのはブラインド・ウィリー・マクテルも同じだったから、これはジョージア・ブルーズの特色の一つだったのかもしれない。バーベキュー・ボブのほうの低音弦ベースはジョージア・スタイルではなく、おそらくミシシッピ・デルタ・ブルーズから吸収したんだろうと思えるスタイルだ。

アルバム一曲目の「マザーレス・チャイル・ブルーズ」や、また五曲目「カリフォルニア・ブルーズ」なんかで特に12弦だとクッキリ分るコードの響きがしているよね。特に「カリフォルニア・ブルーズ」でのリズム表現、グルーヴ感は鮮烈、強烈で、しかもまったく戦前ブルーズとは思えないほどモダンなフィーリングだ。それからこの曲は “How long, how long, how long my train’s been gone” と歌い出しているけれど、何年録音なんだろう?ヤズー盤 CD ではどこにも記載がないのが残念。バーベキュー・ボブの初録音は1927年。リロイ・カーのそれは28年のレコードなんだけど…。関係ないふつうの言いかたではあるけれど。

三曲目の「ヨー・ヨー・ブルーズ」が、バーベキュー・ボブのアルバム『チョコレイト・トゥ・ザ・ボーン』のなかでは最も素晴らしい圧巻の出来だと僕は思うんだけど、いやあホントすごいよなあ。ザクザク刻みながら低音弦でスラッピング・ベースを入れつつ、高音弦で繊細微妙なスライド・プレイを聴かせ、しかもデルタのサン・ハウスみたいなよく響く声でモーンする。影響関係はあるだろう。スライド奏法にだってサン・ハウスっぽい要素は聴きとれることだし。

しかしバーベキュー・ボブのばあい、そのブルーズはあまり重くなりすぎず引きずらず、全体的にはどっちかというと軽妙な味で、陽気でポップなんだよね。いわばホウカム調だ。ギターもヴォーカルもうまいけれど、そんなに超絶技巧ではなく、わりと親しみやすい身近さがあって聴きやすいのが、この人の特長じゃないかなあ。そんなところを Spotify でも CD でも『チョコレイト・トゥ・ザ・ボーン』で聴きとっていただけると思う。

実際、サイド・ギターとハーモニカをくわえたトリオでやる11曲目「ディドゥル・ダ・ディドゥル」なんか、タンパ・レッドのやるパターンにそっくりだ。この曲名と同じフレーズが歌詞に出てくるが、それもダーティ・ダズン的な言葉遊びで、ルイ・アームストロングらニュー・オーリンズ(出身)のジャズ・メンや、その影響下にあったキャブ・キャロウェイあたりにもつながっているよねえ。

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