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2017/12/03

チャチャチャな「キャラヴァン」

Ellaanddukeatthecotedazure








上のアルバム・ジャケット、スマホでちゃんとご覧になれるだろうか?パソコンで見たばあいの僕のブログは、文字が書いてあるベース地の色をクリーム色というか薄茶色みたいにしてあるので問題なく見えるはずだが、スマホだとどうなんだろう?(追記 〜 iPhone だと問題ないが、Mac でのほうが見えにくいじゃ〜ん^_^;;。)

 

 

っていうのはパソコン閲覧のときのこの僕のブログは、さまざまな色やサイド・バーの様子などその他デザインをちょこっとだけ工夫してあるのだが、スマホ、っていうか僕はiPhone しか持っていないので iPhoneの Safari でだが、それで見ると、そんなこんながじぇ〜んぶナシということになってしまってダメなんだ。iPhone を使うようになり、ブログのアクセス解析を見ると、読んでくださる総数の五割方以上がスマホやタブレット類であると知って、もはやデザインなんかどうでもいいや〜〜っ!

 

 

そんなことはいい。1998年にヴァーヴから出たものは CD 八枚組というサイズの大きなデューク・エリントン楽団とエラ・フィッツジェラルドの『コート・ダジュール・コンサーツ』。もとはレコードでそれら二者の共演分にのみスポットライトが当たっていたもので、それは1966年録音翌67年リリースの LP 二枚組『エラ・アンド・デューク・アト・ザ・コート・ダジュール』。

 

 

リイシュー CD でも二枚組のものがあって、それはオリジナル LP どおりのものにちょっとだけボーナス・トラックを足したもの。それら追加分はエラが歌わないエリントン楽団単独の演奏だけど、たった二曲だけだから、やっぱりあくまでエラとエリントンの共演をこそ聴くべきものだ。実際、素晴らしい内容だしね。でも今日はそれには触れない。

 

 

CD 八枚組となった『コート・ダジュール・コンサーツ』は、七枚目までが1966年7月26日から29日までのフル・コンサートの収録で、最後の八枚目には、ラストの一曲だけが27日の録音でエリントンのピアノ独奏(これはなんだろう?)であるのを除き、すべて28日の楽団リハーサルの模様が収録されている。七枚目までにはエラ・フィッツジェラルドとの共演分も当然すべてあるが、エリントン楽団単独の演奏もたっぷりすぎるほど聴けて、そのなかにはかなり面白いものがあるんだよね。

 

 

八枚全部の話を一度にするのは無理なので、一枚目、それも今日は一曲にだけ絞ってちょっと書いておきたい。二曲目の「キャラヴァン」のことだ。それはチャチャチャなんだよね。プエルト・リカンである当時のエリントン楽団員だったファン・ティゾールの書いた(版権登録名義はボスとの共作)、もとからアフロ・キューバンなジャズ・ナンバーで、初演はエピック盤『ザ・デュークス・メン』収録のコンボ編成録音。名義がバーニー・ビガード&ジャズ・ストンパーズで、1936年12月19日録音のヴァライアティ原盤(コロンビア系)。

 

 

 

これをキューバ音楽のなかに位置付けるとどういうものになるのかを言うことは難しい。はっきり言ってしまうと、あんまりアフロ・キューバンなフィーリングじゃないよね。でも1936年時点での北米合衆国ジャズとしてはエキゾティックだ。ジャズの誕生時からキューバを含むカリブ音楽要素ははっきりあるが、この1936年の「キャラヴァン」は、ちょっとそうとも言いにくい面がある。ここで長年、僕の心のなかにだけ置いてあったこと出してしまうが、このオリジナル・ヴァージョンの「キャラヴァン」には、曲名どおり隊商がサハラ砂漠を旅しているかのようなアラブ音楽テイストがある。と僕は思うけれど、どうだろう?

 

 

「キャラヴァン」という、聴き手に一瞬でチャームの魔法をかけてしまうような曲が、その後どういうさまざまな新解釈でどんなふうに展開されたのか、それもエリントン楽団だけでなく、種々のカヴァー・ヴァージョンでどうなっているかなんて話は、到底僕一人の手では扱えないことだ。どなたか「キャラヴァン」専門家(なんているの?いそうだよね、ヴェンチャーズあたりから)のかたにお任せしたいのだが、僕は僕なりにそのうち一つまとめてみようと思っている。

 

 

今日はとにかくコート・ダジュール・コンサートでの「キャラヴァン」のことだけだ。上で書いたように、この1966年7月26日のエリントン楽団がやった「キャラヴァン」はチャチャチャにアレンジされている。チャチャチャというキューバ音楽は日本でもかなり有名なので、どんなものか説明はしない。とにかくまずそのエリントン楽団のチャチャチャな「キャラヴァン」の音源をご紹介。

 

 

 

僕が自分で勝手にアップロードしたこれをお聴きになれば、なにが行われているのかは説明不要だ。エリントンの紹介をともなって、(ベースもあるが基本は)打楽器ばかり一個ずつ入ってくるその順序どおりにパーソネルも上から書いておいた。ドラムス、(ベース、)マラカス、クラベス、ギロで、後半の三つは管楽器奏者たちが管をおいて、代わりに叩いたり刻んだりしているものだ。彼ら三人は、この「キャラヴァン」では本来の管楽器に戻ることなく最後までパーカッションを担当しているのが、はっきりと聴こえる。

 

 

演奏終了後にエリントンが紹介する声が入っているので説明不要だけど、クラリネット・ソロはジミー・ハミルトン、トロンボーン・ソロはローレンス・ブラウン。ボスもピアノ・ソロを弾く。がしかしこの「キャラヴァン」では、そんなソロ演奏内容は大事なことじゃない。大事なのはリズム演奏のスタイルとフィーリングなんだよね。

 

 

ジミー・ハミルトンのクラリネット・ソロのあとに出てくる、二回目のローレンス・ブラウンのソロの途中で少しだけ4/4拍子になってしまうのがいまの僕は残念だ。曲全体をこのチャチャチャ・リズムでやってくれていたら完璧な一曲となっていたところ。ドラマー以外の三人の打楽器奏者のなかでは、特にバスター・クーパー(は本来ヴァルヴ・トローンボニスト)の刻むクラベスのサウンドがかなりクッキリと目立っていて、演奏の最後まで、基本、3・2クラーベのパターンをやっている。ちょっとのあいだの4ビート部分でだけそれが消えているので、やっぱりもったいなかったよなあ。

 

 

全米でのチャチャチャの流行って、何年ごろだったんだろうなあ?ちゃんとしたことは調べてみないと言えないが、やっぱり北米大陸上陸は1950年代半ば以後だったんじゃないかなあ?どうやらもとはヴェネスエーラ発祥のものらしいと読んだけれど、僕はその時代のことは知らないし聴いたこともない。知っているのはマンボの亜種としてキューバで演奏されるようになって以後だ。

 

 

マンボは1940年代末ごろに誕生日があるみたいだし、ダンソーン・マンボの一形態としてチャチャチャが発生したのは、だから50年代初頭あたりか?1958年のキューバ革命完遂後は、この国と北米との関係は冷えてしまったので、それ以前にやはり流入していたはずだ。エリントンの南仏コート・ダジュールでのコンサートが1966年なわけだけど、そのころにはアメリカでもあたりまえのものになっていたんだろうね。

 

 

なんだっけ?、日本の歌謡曲にもあったよな。え〜っと…、「黒猫のタンゴ」じゃなくって、え〜っとえ〜っと、あっ、そうそう、「おもちゃのチャチャチャ」だ!何年だっけとネット検索し、1962年の眞理ヨシコのレコードらしいと知り、翌63年の日本レコード大賞童謡賞をもらったとあるが、えっ、それって僕がまだ一歳のときじゃないか。

 

 

僕の記憶が芽生えるあたりの時期までテレビ番組などで流れたり、(ほかの歌手も?)歌ったりしていたんだろうね、「おもちゃのチャチャチャ」を。間違いない。そう記憶している。ってことは、日本でも1960年代前半にヒットしたくらいなんだから、1966年のアメリカ合衆国の音楽家、それも戦前からずっとアフロ・キューバンを熱心に取り入れているようなエリントンにとっては、だいたいがカリビアンなフィーリングのジャズ楽曲である「キャラヴァン」を、1966年にチャチャチャにアレンジするくらい、朝飯前だったのかもしれない。

 

 

だから、いまでも聴けるような音源として商品化はされてなくても、「キャラヴァン」をいろんな中南米音楽ふうにアレンジして実際に演奏していたんじゃないかと、僕は想像している、というか信じている。もちろんその根拠は、今日音源もご紹介した公式盤『コート・ダジュール・コンサーツ』で、チャチャチャな「キャラヴァン」が聴けることだ。リリースは1998年になったとはいえ、1966年の演奏としてこういうのが残っているんだから、ホントマジでいろんな「キャラヴァン」をやっていたはずだよ、デュークはね。

 

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コメント

キャラバンという曲の魅力というのは、あの嘘から出たまこと的なんちゃってエキゾチシズムだと思うんですが、初演にもそういうなんちゃって感を感じます。
でもエリントンも演奏していくにしたがって、曲自体の内包している世界の大きさに引っ張られていったのかなという風にも思います。大胆な解釈による現代的キャラバンを聴いてみたいんですけど。

言い換えれば、モンドってやつですよね。

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