The Beauty 〜 原田知世と伊藤ゴローの世界(7)
この Spotify のプレイリストは自作の原田知世ベスト・コンピレイションだが、伊藤ゴローのプロデュース作に限定せざるをえなかった。それ以前の知世の歌はほぼないに等しいというほどなんだもんね。本当だったら鈴木慶一が手がけたものも入れたかったのだが、う〜ん、残念だ。
だから僕の iTunes にある原田知世ベスト・セレクション・プレイリストでは、鈴木慶一プロデュースのものも五曲入っている。『ガーデン』から三曲、『エッグ・シェル』から二曲。そして、Spotify のやつには七曲入れた洋楽カヴァー集のほうの『恋愛小説』からは、 iTunes のほうには一つもなしなんだよね。入れたかったが長くなりすぎてしまうし、それにやっぱり知世は日本語で歌ったもののほうが僕は好き。
しかしながら、みなさんと少しでもこの原田知世という歌手の美しさをシェアしたいと、それができれば素晴らしいことだと、そう考えて上掲のような Spotify プレイリストができあがった。1曲目を、リリース順や英語/日本語を無視して「September」(竹内まりや)にしてあるが、知世ヴァージョンのあの出だし、あれがオープニングにぴったりな雰囲気じゃないだろうか?グルーヴィだしね。
それで幕を開けたあと、洋楽カヴァー集の『恋愛小説』から続けて並べてある。個人的にはハイ・サウンド・ソウルになっている3「ドント・ノー・ホワイ」と、ボサ・ノーヴァな4「ナイト・アンド・デイ」、もとから官能性の強い曲だからそう仕上がっていることの多いバート・バカラック・ナンバーだけど色気をグッと抑制したアレンジと歌いかたでやっている7「恋の面影」(The Look of Love)あたりが僕好み。
あとは5「イフ・ユー・ウェント・アウェイ」は、聴くとつらいので入れておいた。つらいと同時にすごく美しくて、だから嬉しい音楽だ。6「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、僕だとジャズ・スタンダードとして馴染があるものだけど、若いみなさんだと1995~1996年放送のテレビ・アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディング・テーマに用いられたのでご存知のかたが多いと思って、やっぱり入れることに。それもちょっぴりボサ・ノーヴァふうなアレンジだ。
ほとんどハープ一台だけというに近い伴奏で曲題と歌詞内容どおりゆったりおだやかにやるエルヴィス・プレスリーの「やさしく愛して」で洋楽カヴァー・パートはおしまい。その後続いて歌謡曲カヴァー篇とオリジナル楽曲篇の順番で持ってきた。まず『恋愛小説 2 - 若葉のころ』から、僕が特に大好きでたまらない三曲だけを。
もちろんこのアルバムにある「木綿のハンカチーフ」が、曲じたいとしてはいちばん好きなんだけど、あの原田知世ヴァージョンのアレンジと歌いかたはしっとりしすぎているように僕は感じる。あの曲は太田裕美がやったように、もっとアッサリと心的距離も置いて突き放して軽いフィーリングで歌ったほうがもっといいと思うんだよね。
もちろんこのアルバムにある「木綿のハンカチーフ」が、曲じたいとしてはいちばん好きなんだけど、あの原田知世ヴァージョンのアレンジと歌いかたはしっとりしすぎているように僕は感じる。あの曲は太田裕美がやったように、もっとアッサリと心的距離も置いて突き放して軽いフィーリングで歌ったほうがもっといいと思うんだよね。
歌謡曲カヴァー篇三曲のなかでいちばん好きなのが「年下の男の子」。年上女性に歌ってほしいナンバー・ワン楽曲で僕好みだ。キャンディーズの三人もみんな僕より年上だったから本当に素晴らしかった。原田知世は僕より年下の女性だけど、そこをメイク・ビリーヴさせてくれているように聴こえるのが、歌の、芸の、言い換えればフィクションの、持つ力なんだろうね。いやあ、「♩あいつはあいつは可愛い、年下の男の子♪」なんてのを眼前で、それもこんなふうに知世さんみたいに歌っていただけたら素晴らしいことじゃないですか。
松田聖子の「SWEET MEMORIES」もつらくてとっても美しい内容なので入れておいた。う〜ん、いやあ、マジで美しいよなあ。ここまではほかの歌手の持ち歌を原田知世がカヴァーしたものの話。続いてオリジナル楽曲篇は、プレイリスト・ラストの「時をかける少女」を2007年『music & me』から取ったのを除き、それ以外はすべて今2017年の新作『音楽と私』ヴァージョンを入れておいた。いずれにせよぜんぶ伊藤ゴローと組んで解釈しなおして歌いなおしたものばかりだ。
それが12〜17までの全六曲だけど、も〜う、どれもこれも美しすぎて、言葉が出ない。なにも書くことなんてないだろう。このプレイリストでの曲順にはちょっぴりだけ気を配ったが、中身の音楽、すなわち曲そのものの良さ、伊藤ゴローのアレンジ&プロデュース・ワーク、主役女性歌手のヴォーカル表現、これら三者があいまって、いまの僕にはこの世のものではない天上美にしか聴こえない。あぁ、なんて美しいんだろう…。いったい僕はどうしたらいいんだろう…。言葉を失い、意識も失いそうになって、ただただその美しさに身も心もくねらせるだけだ。
詳しいことは昨日までの文章で書いたつもりなので、あまりつけくわえることもない。ただ聴いてほしい。そういうわけで、なかでも特にこれら五曲が美しすぎる、あまりの美しさで、聴いていたらなにもできず(マジです、やっていることの手をハッと止めてしまっています)ボ〜ッとするしかないっていうものだけ五曲で、もう一つの Spotify プレイリストを作っておいた。こんなにも美しい、そしてそれゆえにおそろしい世界がこの世にあったんだなあ。困っています。
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