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2018/01/25

前田敦子は麻薬である

 

 


うまく言えないんだが、前田敦子のヴォーカルを聴くと、心がヒリヒリしたりザワザワしたりする。っていうかあっちゃんの声そのものがヒリヒリザワザワしているように聴こえる。しかしそれは、だからといって聴いている僕の気持ちを不安にさせるものではなく、その正反対に癒されて、慰撫されて、なんだか落ち着いてリラックスできて、その反面、ウキウキした気分にもなったりするっていうものだ。

 

 

不思議な声の持ち主だなあ、前田敦子って。声そのものはどう訓練しても変えられるものじゃないから、天賦の才なんだろうね。つまり天才ヴォーカリストだ、あっちゃんは。純技巧的な意味では決して上手いとはいえないあっちゃんで、だから AKB48関連の歌手たちのなかで僕が最も高く評価する岩佐美咲とはタイプが違う。美咲は超上手いもん。

 

 

そんなわけで前田敦子か岩佐美咲か、それはタイプが違うんだから、同じ線の上に並べて論じるのは意味のないことだ。どっちが No.1 でどっちが二線級だとかいう言いかたは、個人的にはあまり感心しない。まぁあれだ、僕は美咲ちゃんにゾッコンなわけだから、そりゃあ美咲ちゃんを上に置いているんだけど、それは絶対に変わらないんだけど、あっちゃんの声にも惚れちゃったいま、もうどうしたらいいのかわからない。麻薬なんだよね、あっちゃんの声そのものが。

 

 

みなさんがいろいろとおっしゃるけれども、僕に言わせりゃ(クラシック音楽の声楽家とは違って)ポピュラー音楽の歌手の魅力の99%は声そのもので決まる。声は持って生まれたものだ。訓練で上達する部分、すなわちこう「なる」というものと、どうにも育てられない部分、すなわちこう「生まれる」というものがあるだろう。スポーツ選手だって、どんなに優秀な指導者をもってしても教えられない、変えられない、成長させられない能力ってものがあるだろう。同じことだ。

 

 

ポピュラー音楽の歌手のばあい、そういった訓練では成長させられない生得的資質の最大のものが、声そのものに宿るチャームだ。前田敦子はそれをたっぷり持って生まれてきた女性。言い換えれば、歌ってみんなを慰めたり癒したり、励ましたりする、つまり一言で表現すれば、魂を揺さぶるために生まれてきた天才歌手。それがあっちゃん。その声が持つ麻薬成分。

 

 

まだご存知ないみなさんもじっくりと耳を傾けていただきたいのだが、特に楽器伴奏があまり派手じゃなく、抑えたバックで歌うものだと、前田敦子の声がどんなものなのか、わかりやすいと思う。ソロ・アルバム『Selfish』なら、たとえば「やさしいサヨナラ」「冷たい炎」「Flower」「頬杖とカフェ・マキアート」「右肩」などかなあ。

 

 

楽曲の魅力と前田敦子の声の魅力が一体化したチャーミングさなら、ほかにも「タイムマシンなんていらない」とか「君は僕だ」なんかも素晴らしい。僕の好みだけならほかにも「コンタクトレンズ」「壊れたシグナル」「I'm free」なんかもイイネ。またアルバムには未収録だけど、EP『Flower』収録の「夜明けまで」はとてもいい。

 

 

もっとも「夜明けまで」は、そのオリジナル・ヴァージョンもさることながら、僕が本当に降参しちゃっているのは、たとえば次のようなライヴ歌唱だ。本当に素晴らしい。これはピアノ一台だけの伴奏で歌ったもので、その意味でも、ヴォーカリスト前田敦子のどこらへんに魅力があるのか、わかりやすいと思う。

 

 

 

そのほか、YouTube にたくさんある前田敦子の歌から、本当に少しだけ紹介しておくと

 

 

「Flower」

 

 

 

「Flower」神戸夜公演

 

 

 

「愛しすぎると」 (Accoustic ver.)

 

 

 

「右肩」with 高橋みなみ 

 

 

 

僕の聴くところ、前田敦子の声には独特のカスレがあるようだ。ふつうに声を出して歌っているだけなんだけど、そのとき歌声と同時にちょっとしたノイズ成分もいっしょに出ているように思う。カスれてハスキーでザワッとしたような混じり気が、あっちゃんの声というかヴォーカルにはあるんだよね。

 

 

三味線のサワリだとか、世界にいろいろある楽器の出すビリビリいうノイズ成分は、<本来の>楽器音と同時に鳴ることで、僕たちポピュラー音楽ファンにはたまらない快感を与えてくれるものだよね。これはもう、理屈じゃない。シンプルに気持ちいいんだ。聴いていて心が落ち着いて慰撫されるような楽器サウンド。それがちょっとしたノイズ混じりの音じゃないかなあ。

 

 

楽器奏者じゃななくても、声にそんなような混じり気を持っていて、歌うと、リスナーに快感と脳の安らぎを与えてくれる歌手だっているよね。ここ最近の20代日本人歌手なら前田敦子はそんな歌手だろう。繰り返しになるが、こういった声は訓練してこうなれるというようなもんじゃないよ。もとから持って生まれるしかないものだ。だから、あっちゃんは天才だっていうんだよ。

 

 

そしてやっぱりこれがサイコーだ。

 

 

前田敦子「タイムマシンなんていらない」

 

 

 

なお、AKB48の楽曲で前田敦子がソロで歌うとか、部分的にソロ・パートがあるとかってものは、今日はとりあげなかった。まだそこまではちゃんと聴けていない。もっともっと時間が必要だ。ものすごくのんびりと待っていてください。そのうちなんとか…。

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コメント

とんちん、前田敦子のこと評価するなんてうれしいね。ぼくも同じように思うよ。そして気に入ってるのは2013年にテレビ番組で秦基博とデュオで歌ったアイだ。当時ひそかにダウンロードして毎日聴いて癒されていたよ。今でもたまに聴く。決して上手じゃないのにツンとくる声だ。

そのダウンロードしたやつを、ワシにもくれ!

ひでぷ〜の言うのは、これ?
https://www.youtube.com/watch?v=08W0j6isJcE

これだったら、いまからダウンロードしようっと。

これだよ、懐かしいね。バックでたかみながハモってる。前田敦子が秦基博の歌が好きでどうしても歌いたいと言っていて、これが実現して喜んでたね。

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