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2018/01/04

音楽でここまでカッコイイことってあるのか? 〜 ザッパ「リジプシャン・ストラット」

Zappa_sleep_dirt


https://open.spotify.com/album/6YLmrvxSMKegzeQYnJRDGo


(この Spotify のはヴォーカルなしのですから LP どおりってこと?以下の文章は CD を聴きながら書いたものです。修正する時間なし。)

 

 



もともとは LPで発売されていたものをリイシュー CD でしか聴いていないと、やっぱりときどき問題があって、フランク・ザッパのばあいはそれがかなりややこしいことになっているらしい。「らしい」としか言えないよ、だってレコードでどんなだったかぜんぜん知らないんだもん。そのうちザッパ・オフィシャルさんはオリジナル LP 音源どおりの内容の全作品リイシューをやってくれてもいいんじゃないだろうか?まあザッパに限った話でもありませんが。

 

 

だからレコードでは1979年にリリースされたザッパの『スリープ・ダート』だって、CD でしか中身を知らない僕だから、全七曲中三曲が女性ヴォーカル入りなもんで、『ホット・ラッツ III』感がちょっと薄くなっているんだもんね。しかも、そのタナ・ハリスという歌手って、どこがいいんだろう?ちょっと安っぽいそこいらへんの場末のキャバレー歌手みたいに聴こえるんだが、しかしそれがザッパの狙いだったのかもしれないから、う〜ん…、ちょっとどうなんですか、このヴォーカルは?

 

 

しかし読みかじる情報では『スリープ・ダート』収録曲の一部は、もとからヴォーカル入りの楽曲としてプランがあったということだから、ザッパ自らが手がけた CD リイシューの際に、女性ヴォーカル(や一部のドラムス)をオーヴァー・ダブし、大元の計画通りに内容を変更、というか取り戻したというか、そういうことかなあ。だいたいザッパのばあい、 CD リイシューの際の 1993 FZ 公認マスターで、内容が LP からかなり変更されているらしく、楽器の差し替えなどもけっこうあるみたいだけど、なにぶん僕はレコードでどんなだったか知らないから、なんにも言えない。

『スリープ・ダート』に関係するところで、『レザー』関連のことは、また別の記事にするしかない。書くこと、いくらでもあるな、ザッパは。

 

 

CD で『スリープ・ダート』をはじめて聴いたときの僕の第一印象は、大雑把に言って四つ。

 

 

一つ、上でも書いたがこの女性ヴォーカルはあってもなくてもいい。

 

 

一つ、やっぱりザッパがギターを弾きまくるインストルメンタル中心のジャズ・ロック作品だ(からたしかに『ホット・ラッツ』系)。

 

 

一つ、四曲目の「リジプシャン・ストラット」が超絶カッコイイ、ってかカッコよすぎる、この世において音楽でこんなにカッコイイってことがあんのか!?

 

 

一つ、ザッパがアクースティック・ギターを弾いているじゃないか。

 

 

僕は最初から『スリープ・ダート』を買おうとして買ったのではない。だってさ、こんなジャケット・デザインだから僕の趣味じゃないんだよね。でもザッパのアルバムにはこの手のアメリカン・カートゥーン・アニメみたいなのが多いよね。中身の音楽もそれに近いような部分があって、最初しばらく僕は馴染めない部分もあったんだよね。しかし『スリープ・ダート』の中身は、基本、ジャズ・ロックなインストルメンタル・ミュージックだから、このジャケット・デザインはやめておいたほうが…、と思うと、これもリリースにまつわるザッパと会社ワーナーとのいざこざがあったらしい。メンドくさいから今日は省略だ。

 

 

とにかくこんなジャケット・デザインだから、店頭で見てもなかなか買う気になれなかった『スリープ・ダート』を買ったのは、例のザッパのクラシカル・ミュージックのベスト盤『ストリクトリー・ジェンティール:ア・クラシカル・イントロダクション・トゥ・フランク・ザッパ』に「リジプシャン・ストラット」が収録されていたからだ。ずっと前にも書いたが、僕はあの『ストリクトリー・ジェンティール』が大好きなんだよね。

 

 

『ストリクトリー・ジェンティール』は、ザッパがやった西洋クラシック音楽の管弦楽作品のベスト盤のはずなのに、『スリープ・ダート』みたいなものや、そのほかポップ・フィールドにあるアルバムからけっこう曲がチョイスされて、名実とものクラシカル・ミュージックと混ぜこぜに並んで違和感がちっともない。このことの意味を考えてほしいんだよね。今日の話題には直接関係ないので、これ以上は書かない。

 

 

と〜にかく!『ストリクトリー・ジェンティール』を聴いて二つ目に「リジプシャン・ストラット」が流れてきたとき、そのあまりのカッコ良さに KO されちゃった僕。ドラマーがタムをヘヴィな音で連打するのに続き(フロア・タムは曲中ずっと使われている)、金管楽器群がブワ〜ッと入ってきて、エレベがぶんぶん鳴って、その後トロンボーンがソロで吹き、マリンバがからむ。その間もタムがずっと鳴っている。アクースティック・ピアノもキレイに聴こえて、も〜う!そのあたりで降参するしかない。

 

 

いやホント、音楽でここまでカッコイイってことがあるのか?!ただでさえほぼぜんぶカッコいい曲ばかりのザッパだけど、そのなかでも「リジプシャン・ストラット」の颯爽感、爽快感って、一、二を争う素晴らしさじゃないか。なんども同じことばかり言ってもうしわけないが、音楽でここまでカッコイイものって、ほかにあるんですか?

 

 

そんなわけでベスト盤『ストリクトリー・ジェンティール』で「リジプシャン・ストラット」が大好きになった僕は、それはアルバム『スリープ・ダート』からの選曲だと記載があるのを見て、はじめて CD ショップであの気乗りのしないジャケット・デザインのやつを買ったんだよね。持って帰って聴いたら、四曲目の「リジプシャン・ストラット」があいかわらず何曲目に入っていても素晴らしく聴こえるが、ほかにもすごい曲があって、な〜んだ、いいアルバムじゃ〜ん、こんなジャケットじゃなけりゃあなぁ、って気持はやっぱり持ったのだった。

 

 

「リジプシャン・ストラット」以外で『スリープ・ダート』にあるもののうちいちばん印象的だったのは、六曲目のアルバム・タイトル・ナンバーだ。フランク・ザッパってアクースティック・ギターはあまり弾かない、というかひょっとしたら少数の例外を除きぜんぜん弾いていないかもしれないよなあ。あれほどのギター名人にしては珍しいことじゃないだろうか?その数少ない例外がの一つが曲「スリープ・ダート」なんだよね。

 

 

曲「スリープ・ダート」もインストルメンタル・ナンバーだけど、ザッパとジェイムズ・ユーマンとのアクースティック・ギター・デュオ演奏。約三分程度と短いが、これもキレイな曲だ。しかもこれは完全即興だよなあ。はじまる前にザッパが「エ〜〜フ」と言っているので、キーの F だけ決めて二人で即興アコギ・デュオをやったんだろう。終了後にもちょろっと会話が聴こえる。スタジオでの息抜き的演奏だったのかもしれないが、うまいし美しい。ブルーズのようにも西洋クラシック音楽のギター・ピースのようにも聴こえる。

 

 

アルバム一曲目「フィルシー・ハビッツ」(はたしか来日公演時の一曲目じゃなかったっけ?)、ラスト七曲目「ジ・オーシャン・イズ・ジ・アルティミット・ソリューション」の二つにはヴォーカルもなく、完璧に『ホット・ラッツ』系のジャズ・ロック・ナンバー。ザッパが弾きまくるギターが最大の聴きものだ。いんやあ〜、うまいよねえ。

 

 

いちばんカッコいい「リジプシャン・ストラット」ではザッパはギターを弾かず、パーカッションとのクレジットだけどそれも演奏しているのかいないのかわからないから、コンポジションの素晴らしさを聴くべきもの。それ以外は、女性ヴォーカルが入るものでも、それは LP 発売時にはなかったものでインストルメンタルだったんだし、やっぱりボスがカッコよくギターを弾いていていいぞ。

 

 

ただそれでもヴォーカルものとインストものとのコントラストみたいな部分が少しだけ面白く聴こえたりするのも事実。上で書いたようにタナ・ハリスの持つ場末のキャバレー感、安っぽい歌手みたいな感じが、オールド・ジャズふうな雰囲気をかもしだしていて、そのせいかどうか関係ないのか、それら三曲では演奏全体も古臭いジャジーさがあって、なかなか悪くない…、かもしれない。

いっぽうインストルメンタル曲では、1970年代のプログレッシヴ・ジャズ・ロッだから、この1920〜30年代ジャズふうなのと70年代ジャズ・ロックふうなのが混在することで、う〜ん、うまく言えないが、なんとなくの素敵な感じが出ている…、のかもしれない。

 

 

ヴォーカルの入る古臭いジャズがこの上ない大好物である僕だけど、でもそれでもやっぱりザッパの『スリープ・ダート』は、御大がギターをカッコよく弾き倒す「フィルシー・ハビッツ」「ジ・オーシャン・イズ・ジ・アルティミット・ソリューション」とか、御大がギターは弾かない「リジプシャン・ストラット」の、曲としてのもんのすごいカッコ良さを聴くべきアルバムだなあ。カッコイイあいだは、マジで鳥肌立つほどカッコイイので。なんども言うが「リジプシャン・ストラット」のブラス群とトロンボーン(はぜんぶブルース・ファウラーの演奏)とリズム、これを書いたザッパの筆がカッコイイんだもんなあ。

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