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2018/02/12

屹立する孤高の誇りと自由 〜 プリンス『1999』

そのうち僕のプリンス遍歴を書こうと思っているので、詳しいことはそちらにするけれど、とにかく僕の初プリンスは1984年のアナログ・レコード『パープル・レイン』だった。しかしこの音楽家に本当に惚れたのは87年の二枚組レコード『サイン・オ・ザ・タイムズ』を聴いたときで、その後はどんどん追いかけるようになって、しかしまた中断もあったりして…、亡くなってからはもう…、って、このへんは別途書きますから。

とにかく今日言いたいことは、『パープル・レイン』以前のプリンスを僕はなかなか買わなかった。それらをはじめて聴いたのは1993年のベスト盤『ザ・ヒッツ/B サイズ』に収録されているものを耳にしたときだ。だからほんの少しのヒット曲だけ。しかし、僕はそれでも初期プリンスの CD をなかなか…、って、ホント別の機会に。

だからここにきわめて正直に告白いたしますが、『パープル・レイン』以前のプリンスの計五作を自分の財布で買ったのは、この人の2016年4月21日の没後がはじめてでした。ワァ〜、こんなやつでごめんなさい。でもってちゃんと聴いてみたらかなりいいもんねえ。昨日は1978年のデビュー作『フォー・ユー』のことを書いたけれど、同様に、今日も短めにまとめたい。

大成功作『パープル・レイン』のことについては、もはや僕なんかがなにか書きくわえることなんてぜんぜんないから、その前後をクルクルまわってみようと思っていて、だから今日は一個まえの1982年『1999』について。一個あとの85年『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』のことを明日書けたら書いてみる。

『1999』。全長71分間の CD 一枚だから、当然オリジナルのアナログ盤では二枚組だったはずだ。だが、書いたように、僕は初期プリンスを CD でしか聴いていないので、アナログ・レコードでの何面目の何曲目とかは、調べりゃわかることだけど実感ゼロだから、書いてもウソみたいなもんだ。よしておく。

1982年リリースだからなのか、そうでもないのか、う〜ん、でも『1999』を聴くと、こりゃ間違いなくプリンス本人も意識してテクノ/ニュー・ウェイヴ的なサウンド創りをしているよなあ。このアルバムから、プリンス率いる初のレギュラー・バンド、ザ・リヴォルーションが登場。名義上は1986年の『パレード』までこのバンドが続くことになる。

がしかしもちろんみなさんご存知のとおり、生涯でどんなレギュラー・バンドを率いていた時期でも、ライヴ・コンサートはそれでやるものの、スタジオ録音作品はプリンスひとりだけでの密室多重録音で完成させたか、ほんのちょっとだけほかの人が音を足したとか、そういうのがけっこうあるよね。ライヴの際はそれをバンドで再現できるよう、かなり厳しい訓練を課したらしい。

『1999』だと、表ジャケットにいちおう “and the Revolution” という文字が、それもかな〜り読みとりづらく記されているのだが、アルバムの曲の実際の演唱に参加しているのはごく一部で、全体的にはプリンス一人で仕上げたトラックが多い。クレジットを見ると、ヴォーカルでリサとか JJ(ジル・ジョーンズ)とか、ギター・ソロでデズとかがちょっと参加している程度。あとはウェンディとヴァニティが一曲とか、その程度みたいだなあ、大ザッパに言って。

しかしそれでも『1999』以前の作品群に比すると、グッとバンドっぽいサウンドになっているとは言える。基本、一人多重録音で制作しても、バンドっぽい展開やノリを重視する方向にこのころからのプリンスは向かって、しばらくのあいだ歩んだ。もう一つ、このアルバムがリリースされた1982年というと、ちょうどマイケル・ジャクスンやマドンナなんかが MTV で大ヒットしていた時期で、プリンスもたしか出演していたのを僕もチラ見したようなしなかったような、とてもアヤフヤな記憶がある。

どっちなんだかわからない僕の記憶はともかく、プリンスも MTV に出演したのは間違いないはずだ。あの1980年代にはみんな出ていたんだから。あのころから音楽の売りかたが大きく変化した。だからプリンスとしてもちょっとイメチェンして、(見せかけだけでも)バンドでやってるぜ〜みたいな(MTV 中心の)プロモートをしなくちゃなというのがあったかもしれない。あるいはワーナーがそう圧力をかけたかも。

たとえばアルバム『1999』のなかで僕がいちばん好きな2曲目の「リトル・レッド・コーヴェット」。コルヴェットはアメリカ産自動車の名前で、一般に馬とか車とかは女性の隠喩で、だから要するにつまりそれにかんする歌は性行為のことなんだけど、しかしちょっと聴く感じ、いかにもプリンスのセックス・ソングだといういやらしい粘着性はない。ポップでキャッチーで親しみやすいファンク・チューンだよね。

そして「リトル・レッド・コーヴェット」の曲創りや展開が、いかにもバンドでやってます的なものだと聴こえるんだよね。サイド・ヴォーカルにリサとデズがいて、あのキャッチーな「♪り〜る、れっ、こ〜ゔぇっ♫」のフックをプリンスと合唱し、ギター・ソロをデズが弾くっていう、オ〜〜、バンドっぽい!

アルバム1曲目「1999」は、出だしでヴォコーダーでも使ってあるのか、あるいはテープ回転速度を落として実現しているのか、低音男声で「心配するな…」としゃべりはじめるイントロ部に次いでビートが効きはじめるっていう、これも P ファンク(っていうバンドというか集団があります)っぽいやりかただ。しかもプリンスはなかなか歌わず、まず女声(リサ?)が出て、その後三人の合唱含めマイク・リレーみたいになっているあたりはスライ&ザ・ファミリー・ストーンにも似ている。つまり、どっちもまさしくバンドでやってます的な。

しかもその曲「1999」がニュー・ウェイヴ的なダンス・チューンだよね。エレキ・ギターのくちゅくちゅっていうカッティングはやっぱりプリンス本人だろうけれど、ちょっとしたサイケデリック風味もある。4曲目「レッツ・プリテンド・ウィア・マリード」なんかだって、いかにも1980年代のニュー・ウェイヴふうなサウンドじゃないか。

その後も6曲目「オートマティック」、7「サムシング・イン・ザ・ウォーター」、10「オール・ザ・クリティックス・ラヴ・U ・イン・ニュー・ヨーク」(”U” が初登場)なんかはエレクトロニックなニュー・ウェイヴ・ポップといった趣全開だ。「オートマティック」のビートがモータウン・サウンドふうだとかいうのはちょっとおいておこう。

5曲目「D.M.S.R.」や9「レイディ・キャブ・ドライヴァー」などは、セクシーで肉感的なファンク・ミュージックで、この当時らしくペラペラなシンセサイザー音を中心に組み立てたチープなサウンドだけど、肉感ファンクはこのあとしばらく経ってプリンス・ミュージックで最も美味しい要素になっていくので、その走りみたいなもんかなあ。

アルバムにある二曲のバラード、8「フリー」と11「インターナショナル・ラヴァー」。後者のほうは、前作『コントロヴァーシー』にあった「ドゥー・ミー、ベイビー」系の官能ソングで、曲全体をファルセットで実にネチっこくいやらしい感じで歌う。プリンスの本領発揮みたいなもんで、ご存知のとおり、このあとにもたくさんありすぎるほどあるよね。

しかし僕にとっては8曲目「フリー」の、アクースティック・ピアノのサウンドを活かした、ハートブロークンな孤独をあつかっていながらも、気高い毅然とした誇りと自由を掲げるっていうバラード、こっちのほうがだいぶ好きだなあ。毅然とした気高いスタンド・アローンの誇り。それは歌詞内容というよりもこのサウンドにある。堂々と屹立しているような、そんな曲調と音創りに聴こえないだろうか?

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