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2018/02/25

なかなかいいぞ、プリンスの『ラヴ・シンボル』

プリンス本人はずいぶんと意気込んで制作にあたったらしい1992年リリースの『ラヴ・シンボル』(と呼ぶんだよね、ふつう?)。意気込みのわりには大した出来じゃないよなあ。だいたい音楽だってなんだって、送り手が力を入れすぎると失敗し、評価が得られないばあいも多いというのが実情みたいだ。ビビりながらおそるおそるやったもののほうが警戒心が働いて、その結果、客観性みたいなものにつながるってことかなあ?

プリンスの『ラヴ・シンボル』のばあいも、まあホント全体的にはどうってことないアルバムかもしれないが、なかにはかなりおもしろく楽しめる楽曲が散りばめられている。それらはオール・タイム・ベストにだって選びたいほどすぐれたもので、やはり天才は天才の作品を産む(ことが多い)。

『ラヴ・シンボル』のなかにあって、たいへんすぐれていると思う個人的フェイヴァリットは、2曲目「セクシー M.F.」、9「スウィート・ベイビー」、11「ダム U」、14「7」、15「アンド・ガッド・クリエイティッド・ウーマン」の五つ。特に「セクシー M.F.」と「7」は文句なしに素晴らしい。

2曲目「セクシー M.F.」はあんな歌詞なのでそのままでは公共放送で流せないが、カッコイイ JB スタイルのファンク・チューンだ。終始エレキ・ギターのワン・ノート・カッティングが鳴っているのが気持ちいい。あのカッティング・サウンドだけでごはんおかわりできる僕だけど、リズム・セクションにくわえ、すぐに分厚いホーン・セクションのリフ、オルガンなどが流入。ちょ〜キモチエエ〜!ホーンがお決まりのフックを演奏するあいだだけ、ギター・カッティングが止む。

たぶんエリック・リーズだよね、(フルートではなく)バリトン・サックスでリフを吹き、ソロはオルガンに続き、プリンス自身がクリーン・トーンのエレキ・ギターで弾く。それが終わると、放送禁止用語を乱発しながら「ケツを振れ、ケツを振れ」の連続。分厚いホーン陣。その後、これもエリック・リーズだろう、テナー・サックスのソロになって、そのまま終了。いやあ、ナスティでグルーヴィで、いいなあ、これ。

9曲目の「スウィート・ベイビー」と11「ダム U」はほぼ同系のフォーキー・バラード。どっちもかなりジャジーで、プリンスはファルセットできれいに歌い、演奏も軽い味でポップ。こういう路線が、1978年のデビュー作『フォー・ユー』のなかにすでにあったのだと、僕はついこないだようやく気づいたばかり。すなわち「クレイジー・ユー」。
その後もメチャメチャ数の多いプリンスのファルセット・バラード。どんどんセクシーさと粘度を増していやらしくなっていったのかと思うと、ある時期以後サッパリした感じに変貌したというか、デビュー期のようなアッサリ感を取り戻したみたいになっている。『ラヴ・シンボル』の「スウィート・ベイビー」も「ダム U」もふつうに綺麗なだけで、いいよなあ。僕は前者のほうが好きだけど、後者は名曲だ。

あっ、そうだ、初期の感じに戻っているといえば、16曲目「3・チェインズ・オ・ゴールド」もそう。クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」みたいに曲想がコロコロ変わる曲だけど、基本、シンセサイザー&エレキ・ギターのサウンドで組み立てたポップ・チューン。途中、クラシック音楽みたいになったりもする。

また4曲目「モーニング・ペイパー」は爽やかなアメリカン・ギター・ロックみたいなもので、「3・チェインズ・オ・ゴールド」同様、どうってことない音楽だとは思うんだけど、アクが抜けて、プリンスの音楽としてはいいのやらよくないのやら、でも聴きやすい。ギター・ソロもなかなかいい。

その前の3曲目「ラヴ・2・ザ・9ズ」はカーティス・メイフィールドのパターンを使った軽いソウル・ポップみたいなもんかな。これも爽やか路線で、こざっぱりと洗練されている。アクなんかどこにもぜんぜんないなあと思っていると、二分目あたりでパッとチェンジしてネチこいハード路線に変貌。そこでしゃべっている女声はマイテかなあ。トニー・T のラップとのかけあいで。

ラップ/ヒップ・ホップみたいなもので、アルバム『ラヴ・シンボル』のなかではいちばん出来がいいのが、上でも触れた14曲目の「7」。これこそこのアルバムのハイライトに違いない。ビートの創りかたと感触はデジタルで、その上にプリンスの一人多重録音ヴォーカルが乗り、アクースティック・ギターとエレキ・シタールが彩りを添えるのがかなり楽しい。

しかも「7」では、ブルーズ・マン、ロウエル・フルスンの「トランプ」をサンプリングして使ってあるじゃないか。ヒップ・ホップのサンプルとしては定番ネタではあるだけに、プリンスも時代に対応しようと苦心していたんだなとうかがえて、ちょっと微笑ましい気分。サウンドもノリも爽やかな曲だし、エレキ・シタールの音が効果的で、僕は大好き。このアルバムからのシングル・ナンバーとしてはいちばんのヒットになったらしいのもうなずける。いやあ〜、カッコイイですね。

その次の15曲目「アンド・ガッド・クリエイティッド・ウーマン」はラテン香味をふりまくファンク・テイストな曲で、ほとんどのプリンス・ファンは見向きもしないのかもだけど、いいと思うよ、僕は。以前から繰り返すように、ラテン・タッチなジャズ・ファンクみたいなものが、ある時期以後のプリンスに増えていくようになって、その結果、『ザ・レインボウ・チルドレン』とか『3121』みたいな21世紀の傑作につながったと思うから。

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