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2018/02/10

初期フェイルーズのエキゾティック歌集を聴く

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渋谷エル・スールかオフィス・サンビーニャで『アーリー・ピリオド・オヴ・フェイルーズ』(2011)を買うともれなく付いてくる非売品の無料特典 CD-R『初期フェイルーズ・エキゾティック歌集』。これがかなりいいぞ。
ひとによっては、本編の『アーリー・ピリオド・オヴ・フェイルーズ』よりも附属品の『初期フェイルーズ・エキゾティック歌集』のほうがいいっていうくらいで、僕もそんな声にちょっとだけなら賛同したいような気分。同時期の録音らしいんだけど、『エキゾティック歌集』のほうは非売品の無料特典ということで、曲名以外の一切のデータが当然ない。

だがまあサウンドを聴けば、録音音質とフェイルーズの声で、だいたい1950年代なんだろうなというのは素人の僕だって推測できる。『初期フェイルーズ・エキゾティック歌集』CD-R のほうは全10曲で、トータル再生時間たったの31分間。短い…。もっともっとほしい…。

日本でもエル・スールかオフィス・サンビーニャで『アーリー・ピリオド・オヴ・フェイルーズ』を買ったのではない多くの人たち、またあるいはひょっとして海外のフェイルーズ・ファンがこれを読む可能性があるのか?わからないが、少なくともおひとかた、前からお読みで反応してくださっている(ローマの)フェイルーズ・マニアがいらっしゃることだけはわかっている。そのかたが(機械翻訳だとはいえ)僕のフェイルーズ関連の文章を英語などに訳して拡散してくださっていることも知っている。

だからまあ、先々週のも書くべきだったといまごろ気づいたがもう遅いので、今日のこれはたったの10曲だし、アルバムの曲目を以下に記しておくとしよう。

Fairuz  “Exotic Songs”

1. Hala La Laya
2. Ya Hilou Ya Amar
3. Kaif Halak Ya Jar
4. Ya Mayla
5. Macheyet Habibi
6. Marmar Zamani
7. Azzoroura
8. Alzainu Al-Zainu
9. Ya Ghozayel
10. Ummi

エキゾティックとの形容詞が付いているのは、端的に言えばラテンふうということだと思う。もちろんこれはレバノンやアラブ音楽世界から見ての異国情緒ということであって、僕たち日本人からしたらアラブ音楽もラテン音楽もエキゾティックに響くんだから…、と書いてしまったが、しかしラテン音楽はそうでもないのか。

みなさんご存知のとおり、第二次世界大戦前から日本の音楽のなかにだってラテン、というか正確にはキューバン・ミュージックかな、それがかなり流入していたし、その後現在までも日本のポップ・ソング(呼び名はなんだっていい、歌謡曲でも演歌でも J-POP でも)のなかにだってすっかり根付いている。

ところでフェイルーズとは関係ない話だが、日本でのいわゆる「ラテン音楽」という言葉は、中南米音楽というよりも、そのものずばり、キューバ音楽を指しているばあいがかなりあるように見えるんだけど、僕の思いすごしかなあ?まあちょっとわかりませんが、あるいはそれくらいキューバ音楽が(広義の)ラテン音楽に色濃く強く影響し存在しているということかなあ?

フェイルーズの『エキゾティック歌集』。やはりラテンなサウンドやリズムであるからしてこのタイトルになっているのは間違いないようだ。しかし、直前で指摘したようなキューバン・ミュージックだけを踏まえたようなセレクションにはなっていない。バイヨン(ブラジル)の楽器やリズムを大きくとりいれた曲だってある。

しかもだいたいどの曲でもパーカッションが賑やかで派手だ。やっぱりラテン・パーカッションを使ってあると聴こえるが、1950年代録音であるならば、あたりまえのことだろうなあ。キューバやラテンの楽器や音楽は世界に広く行き渡っていたはずだし、当時のレバノンで、世界の音楽の最新潮流を逃すまいとしていたラハバーニ兄弟なら、流行しはじめたばかりのバイヨンだって意識しただろう。

『エキゾティック歌集』。ラスト10曲目「Ummi」だけが静かなバラード調で、しかもピアノ一台だけの伴奏で、賑やかさはない。だけどこれもアラブ歌謡ふうではなく、う〜ん、こりゃなんだろう?アラビアン・バラードにも聴こえないが、ラテン・バラードでもないような…。ちょぴりサンバ・カンソーン(ブラジル)みたいな感じもするが、1950年代初期なら、ブラジル本国のサンバ・カンソーンも出現したばかりだもんなあ。

この静かなバラード調の10曲目「Ummi」以外の九曲は、すべてリズムが強く刻み、ビートが効いていて、しかもいかにもラテン音楽ふうにシンコペイトしたりもする。ドラム・セットはラテン音楽にでもまだ存在しない時期だけど、コンガとかボンゴとか、あるいは金属製のものでもくっきり聴こえて楽しい。

しかもキューバン・リズムかなと思って聴いているなかにそのままバイヨンふうなアコーディオンがからんできたり、楽器そのものはアラブのものであるウードが、しかしラテン音楽ふうのリズムでラテンふうなフレーズを刻んだり、それが皮や金属の打楽器とからんで、そこにネイが入ったりなどなど、異国性というよりトランス・ワールドな音楽みたいになっているのが、最高におもしろい。

肝心の主役歌手フェイルーズのヴォーカルには、そんなサウンドを向こうに廻して破綻がまったく聴かれない。それどころか余裕綽々で軽く歌いこなしているもんね。まったく驚異の歌唱柔軟性というしかない。しっかりした強い声なのにシルク・スムースで、そのなかに内なる炎をゆらめかせて、それでいて軽いソフト・タッチでラテン・ソングを見事に歌う。

まるで薄衣のように、絹というか麻というかそんな声と歌いかたで、着る人のボディ・ライン(素材の音楽)のかかたちにフィットして違和感なく、ラテン・タッチで賑やかなビートが快活に跳ねるものなら、そのかたちにヴォーカルの薄衣がぴったりまとう。本当に素晴らしいことだ。

約30年近くあとに息子のジアード・ラハバーニのプロデュースで、アラビアン・ボサ・ノーヴァ、アラブ&ジャズ・フュージョンみたいな曲もふわりとこなす素地が、フェイルーズのこの1950年代にすでにしっかりあったということだなあ。ってことで、来週からはジアード・プロデュース作品群に戻ります。

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コメント

 『アーリー・ピリオド・オヴ・フェイルーズ』を戸嶋さんがコメントされた5曲だけに絞って繰り返し聞くと、これまであまりピンとこなかったフェイルーズの良さが凄くよく分かり感謝。
 「日本でもエル・スールかオフィス・サンビーニャで『アーリー・ピリオド・オヴ・フェイルーズ』を買ったのではない多くの人たち」の一人である私が、『初期フェイルーズ・エキゾティック歌集』を入手するにはどうすればいいのでしょう。もう一枚エル・スールで買うしかないのか?

cleanheadさん

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