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2018/04/19

ザヴィヌル・プロデュース・サリフ

1987年『ソロ』でソロ・デビューって、カタカナ書きだとややこしやサリフ・ケイタ。solo デビュー作が『Soro』ってことだけど、そうかといってアルバム名を『ソーロー』って書くともっとヤな感じで困っちゃう。ところで、昨日も触れたけれど、サリフをジョー・ザヴィヌルがプロデュースしたのが、もちろんマンゴ盤の1991年『Amen』。ワールド・ミュージック・リスナーでザヴィヌル嫌いはけっこういそうだから敬遠されているかもだけど、それでも一部で評価は高いらしい。僕は好き。

『Amen』は、『Soro』以来のサリフ・ミュージックの基本路線をほぼ引き継いでいるように思う。あの声があるからゆえ、それが強靭なままだったあいだは変わりようもなかったんじゃないかな。アクースティック・サウンド路線に転向したのは『Moffou』だっけな。あのころユッスー・ンドゥールにも『ナッシングズ・イン・ヴェイン』があった。

だから『Amen』のザヴィヌルも、サリフの音楽の基本は尊重したサウンド創りをしているように僕には思えている。1曲目「Yele N Na」はちょっとキューバ音楽っぽいようにも聴こえるよね。アフリカのポップ・ミュージックにキューバン・ミュージックの影響はたしかにあるので、不思議なことじゃないんだろう。「Yele N Na」でもリズムの感じや、ホーン&ストリングスのリフの使いかたなんか、明らかにキューバン・スタイルの痕跡がある。

「Yele N Na」でギュイ〜ンと入るシングル・トーンのエレキ・ギターが、ザヴィヌル・コネクションで参加したカルロス・サンタナってことかなあ。エレキ・ギターではサリフの盟友カンテ・マンフィーラもクレジットされているが、カンテはカッティングでサウンドの中心をかたちづくる役割を果たしているんだろう。

2曲目「Waraya」は昨日書いたので、詳しいことは省略。この6/8拍子のポリリズムが、いかにもアフリカ音楽(由来のアメリカン・ミュージックとか)だというもので、大好き。ザヴィヌルが選択したシンセサイザー音や弾きかたには、そのまんまウェザー・リポートだという部分もあって、気に入らないひとは気に入らないはず。サリフ本人だってそうだったかも。

3曲目「Tono」も6/8拍子で、しかもこの女声が大きく聴こえるバック・コーラスの雰囲気は、『Soro』からすでにあるものと同じだ。このギター・カッティングもカンテ・マンフィーラなんだろうか。バラフォンが聴こえるのがケレティギ・ジャバテ(Kélétigui Diabaté)ってことだね。

アルバム『Amen』がすごいことになるのは、たぶん次の4曲目「Kuma」からじゃないかなあ。この大きくゆったりうねるグルーヴの上で、おそろしさすら感じるサリフの声が咆哮する。ソプラノ・サックスが聴こえるのが、これまたザヴィヌル人脈のウェイン・ショーター。でもウェインはいてもいなくてもよかったように僕は思う。サウンド上の必然性を感じない。

個人的にアルバム『Amen』がマジでとんでもないなあと感じるのが、続く5曲目「Nyanafin」。最初ナイロン弦ギターがやさしくバラード調で弾きはじめ、そこにコーラス隊が参加し、だからふつうの気分で聴いていると、ドラムスとエレベなどバンドが入ってきてからのリズムの躍動感、グルーヴの強さがハンパじゃない。サリフの叫び声もとんでもない。こりゃすごい。僕はこの「Nyanafin」がものすごく好き。

またしてもバラフォンや、カルロス・サンタナかな?と思えるギター・サウンドが聴こえるこの「Nyanafin」の、そのリズム・アレンジを、サリフではなくザヴィヌルがやったのだとすれば、立派な仕事じゃないか。ウェザー・リポートに同系の曲はあるので、可能性はあると思うなあ。うん、素晴らしい。むろんサリフのヴォーカルがいちばんすごいんだけど。

僕のなかでは「Nyanafin」がピークなので、6曲目以後はまるで余韻みたいな感じに聴こえるが、ハイ・クォリティな曲が並んでいるには違いない。英語とフランス語も出る7曲目「N B'l Fe」で聴こえるギターもカルロス・サンタナかなあ?それにしても、サンタナって、こないだの2018年のシェウン・クティ新作『ブラック・タイムズ』にも呼ばれてたけれど、長いあいだひろく活躍しているよなあ。

アルバム・クローザーの8曲目「Lony」は、『Soro』のラストが「Sanni Kegniba」だったのと同じ締めくくりかただ。ミドル・テンポでゆったりとノる大きな曲。女声バック・コーラスも大きくフィーチャーされ、サリフは落ち着いた雰囲気で、なだめすかすように歌うが、やはりときおり強く刺すようなトーンで声を張る。コンガの音も気持ちいい。ザヴィヌルが「バディア」(ウェザー・リポート『幻想夜話』)で使ったシンセ音を挿入するのは余計だった。

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