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2018/04/30

ア・タイム・ゼイ・コール・ザ・シックスティーズ

ポール・マッカートニーの二枚組ライヴ・アルバム『トリッピング・ザ・ライヴ・ファンタスティク』から抜き出して並べたのが上のプレイリストだ。いちおう曲目だけ以下にも記しておく。だれのどんな曲で、オリジナルはどのアルバムに、なんて書いておく必要はない。

1) The Long And Winding Road
2) Crackin' Up
3) The Fool On The Hill
4) Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
5) Can't Buy Me Love
6) Got To Get You Into My Life
7) Things We Said Today
8) Eleanor Rigby
9) Back In The U.S.S.R.
10) I Saw Her Standing There
11) Twenty Flight Rock
12) Let It Be
13) Ain't That A Shame
14) Get Back
15) Golden Slumbers / Carry That Weigh / The End
16) Matchbox

パーソネルは以下の通り。

ポール・マッカートニー(ヴォーカル、ベース、ギター、ピアノ)
ヘイミッシュ・ステュワート(ギター、ベース、ヴォーカル)
ロビー・マッキントッシュ(ギター)
ポール・ウィケンズ(キーボード)
クリス・ウィットゥン(ドラムス)
リンダ・マッカートニー

『トリッピング・ザ・ライヴ・ファンタスティク』は、僕のいちばん好きなポールのライヴ・アルバムだ。上記編成のバンドで行なった1989/90年の世界ツアーからの収録で、アルバムのリリースは1990年。ポールにとっては、なんとウィングズ時代の1976年『ウィングズ・オーヴァー・アメリカ』以来のコンサート・マテリアル。

しかもウィングズ時代とはかなり大きな違いがある。上の曲目一覧を一瞥していただければ説明不要だが、ビートルズ・ナンバーがかなり多い。主にそんなものばかり僕が抜き出したというのもあるけれど、『トリッピング・ザ・ライヴ・ファンタスティク』二枚組全体のトータル37曲で、そもそも多いのだ、1960年代ものが。

お聴きになればおわかりのように、僕がこのセレクションのトップに持ってきた「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」の歌本編に入る前に、ポールがしゃべっているよね。そこから今日の記事題も拝借した。ポール自身、この<1960年代再訪>に、この1989/90年ツアーの力点を置いたはずだ。

ポールにとっての1960年代とはすなわちビートルズだから、こういったセレクションになるわけなのだ。僕が入れなかったもののなかにも、『トリッピング・ザ・ライヴ・ファンタスティク』には、「バースデイ」や「ヘイ・ジュード」「イエスタデイ」など、いくつかある。

むろん、まだまだジョンやジョージの曲を歌うことはできないので、自分で書いてビートルズでも自分で歌ったものだけ。でも、これはかなり大きな心境の変化じゃないだろうか。ライヴ・アルバムは1976年以来と書いたけれど、そのあいだ、89年までに、なんらかの、まあ老成かもしれないが、違いが生じたんだと思う。

それを最も強く感じるのが「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」だ。ウィングズ時代のヴァージョンと比較してほしい。今日ここにいれたヴァージョンでは、アルバム『レット・イット・ビー』収録のビートルズのそれに忠実なアレンジでやっている。フィル・スペクターの施したオーケストレイションをあんなに嫌っていたポールなのに。だからウィングズ時代には、オリジナル・ヴァージョンどおりの簡素なアレンジで披露していたのに。

『トリッピング・ザ・ライヴ・ファンタスティク』では、キーボード・シンセサイザー担当のポール・ウィケンズがストリングスやホーンズなどのサウンドを出しているようだ。セレクション4曲目の「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」でも、曲冒頭のサウンド・エフェクトや、その後の管弦楽もシンセサイザーで再現している。

また、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」では、1967年のレコードにあったオリジナル(1曲目)とリプリーズ(12曲目)を合体させ、そのあいだにポールとロビーのギター・バトルをはさみこんでいる。それも楽しい。

これの前、3曲目の「フール・オン・ザ・ヒル」のエンディング部では、マーティン・ルーサー・キング Jr. の演説を挿入してある。ビートルズのオリジナルに、もちろんそれはない。これを録音した1990年1月13日、英ウェンブリーのコンサートでも、やはりポールは<あの時代>をいまに伝えなくちゃ、僕はそれを肌身で体験し、音楽を創ってきたんだからと、あのシックスティーズがどんなものだったのかを端的に表現しようと、キング牧師のスピーチを入れたんじゃないかなあ。

今日の僕のこのセレクションは、基本、もとのアルバム『トリッピング・ザ・ライヴ・ファンタスティク』での登場順に並べてあって、また曲のチョイスも、基本、ビートルズ楽曲を、ということなんだけど、彼らと関係の深い、先行するロックンロールやリズム&ブルーズ・スタンダードもすこし入れた。

つまり、ボ・ディドリー(2)、エディ・コクラン(11)、ファッツ・ドミノ(13)だ。16の「マッチボックス」もカール・パーキンスの曲だけど、これはビートルズ時代にやっている。リンゴをリード・ヴォーカルに立ててシングルでリリースされたものが、いまは『パスト・マスターズ』で聴ける。それに、そもそもカール・パーキンスよりずっと前からの歴史のある曲だ。以前書いた。
ところでこの1990年1月21日ウェンブリー公演の、ライヴ本番前のリハーサルから収録した「マッチボックス」。ものすごくカッコイイんじゃないだろうか。ここはオリジナルのアルバムから大幅に曲順を変更し、セレクションのラストに持ってきた。オリジナルはリハ音源でも、ここではちょうどいいアンコールに聴こえる。

この「マッチボックス」でポールとツイン・ヴォーカルをとるのが、アヴェレイジ・ワイト・バンドで有名なヘイミッシュ・ステュワート。いい味のヴォーカリストだね。ピアノ・ソロはニュー・オーリンズ・スタイル(がポール・ウィケンズは得意らしい)。左チャンネルでスライド・ギターでソロを弾くのが、ロビー・マッキントッシュ。こんなにシビレる「マッチボックス」、聴いたことないよ。

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