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2018/04/29

きれいなものはきれい 〜 エディ・コンドンの戦後録音盤

エディ・コンドンのコロンビア盤『ジャム・セッション・フロム・コースト・トゥ・コースト』(1954)。かつて大の愛聴盤だった LP ジャケットはこれだけど、いまはたぶんこの、下の二枚組しかないんだよね。この CD しか見かけたことがないから、僕もこれで聴いている。2 in 1じゃなく二枚組だけど、バラで売ってくれたらもっとよかったのになあ。

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この二枚組の一枚目『ジャム・セッション・フロム・コースト・トゥ・コースト』が本当にいいんだよ。きれいだ。特に最初の3トラック(2トラック目は三曲メドレー)が本当に素晴らしいと、心からそう思う。アルバム題は、この LP の A 面が東海岸ニュー・ヨークでのセッション、B 面が西海岸ハリウッドでのものだということから来ている。演奏メンツも全員異なっていて、戦前からの大立者エディ・コンドンはニュー・ヨーク・セッションにしか参加していない。

それでもフル・アルバムがエディ・コンドンひとりの名義でリリースされたのは、やはりそれだけの大物だからだ。コロンビアのジョージ・アヴァキャン(東海岸)とポール・ウェストン(西海岸)という二人のプロデューサーの雑談から誕生した企画もので、最初、ポール・ウェストンが、ハリウッドで腕利きのディキシーランド・ジャズ・メンでセッションさせて録音しようと思っているんだとアヴァキャンに話すと、アヴァキャンも、実はこっちもニュー・ヨークで同じことをしようと考えていたんだよと応じ、結果、アルバム『ジャム・セッション・フロム・コースト・トゥ・コースト』ができあがった。

中身を聴くと、こりゃもう断然(CD だと4トラック目までの)A 面が段違いに楽しくおもしろい。特に最初の3トラックが素晴らしい。録音時期が判然としないが、あるいは1953年?という情報をネットでチラ見した。レコード発売が1954年3月15日となっているので、うん、53年末ごろかもしれないね。

1953/54年には、ディキシーランド・ジャズなんて、時代のスポットライトは完全に当たっていなかった。古臭く、時代遅れ。でも、そういうことと音楽の楽しさ、美しさとは関係ないんじゃないかっていうのが僕のいつもの考えかたなので。いろいろ理屈こねたいわけじゃなくって、『ジャム・セッション・フロム・コースト・トゥ・コースト』A面3トラックを聴いたら、マジ楽しいんだもん!これは掛け値なしだ。時代遅れでも(僕は)抗えない。

このアルバムのトップからの3トラック「ビール・ストリート・ブルーズ」「エマライン/ドント・ウォリー・バウト・ミー/アイ・キャント・ギヴ・ユー・エニイシング・バット・ラヴ」「リヴァーボート・シャッフル」は、本当に美しいって僕は思うよ。特に2トラック目のバラード三曲メドレーなんか、最高の一言。なんてスウィートでラヴリーなんだ。

「エマライン/ドント・ワリー・バウト・ミー/アイ・キャント・ギヴ・ユー・エニイシング・バット・ラヴ」。一曲目の「エマライン」はトロンボーンのルー・マクギャリティ、二曲目「ドント・ワリー・バウト・ミー」はクラリネットのエドモンド・ホール、三曲目「捧ぐるは愛のみ」はトランペットのワイルド・ビル・デヴィスンがフィーチャーされている。

この三人が、アド・リブ・ソロもなく、美しいメロディをほぼそのままストレートに吹いて、どんどんバトンタッチしていくだけ。きれいなものはきれいだと、僕は素直に認めたい。素直に今日、人生ではじめて告白するけれども、このバラード・メドレーが美しいなあと大学生のころから毎度聴き惚れていたにもかかわらず、戦前が流行期だった音楽なんだからもはや時代遅れの戦後録音なんて…と考えて、僕はみんなの前で認めてこなかった。

僕が愚かだった。間違っていた。このバラード三曲メドレーは美しい。聴きながらいつもそう感じてウットリしていたのに、こんな古いものなんか…と、聴くのにちょっとした罪悪感すら持ちつつ、みんなの前ではこの美を称えてこず、ほぼ黙ってきた。今日までね。なんてバカな僕。

だから、エディ・コンドンの3トラック「ビール・ストリート・ブルーズ」「エマライン/ドント・ウォリー・バウト・ミー/アイ・キャント・ギヴ・ユー・エニイシング・バット・ラヴ」「リヴァーボート・シャッフル」は、本当に素晴らしいと、今日は心から声を大にして言いたい。

なお、「ビール・ストリート・ブルーズ」は W. C. ハンディに版権がある曲で、「リヴァーボート・シャッフル」はホーギー・カーマイケルの書いた曲。前者は有名曲だし戦前からどんどん演奏されていて、まあハンディの曲だしスタンダードだから。後者はビックス・バイダーベックがフランキー・トランバウアーといっしょにやったレコードがあるからエディ・コンドンのレパートリーに入っているんだろうと想像できる。

最後に。今日はご紹介しなかった4トラック目「ジャム・セッション・ブルーズ/オール・ミス」(の途中で作詞家ジョニー・マーサーが入ってくる)も含め、エディ・コンドンのギター演奏がかなり聴こえる。コードをジャカジャカ鳴らすだけだけど、ここまで鮮明なのはほかにないはず。

もう一点。「ジャム・セッション・ブルーズ/オール・ミス」も含めれば、エディ・コンドンによるバンドへの指示の声も鮮明に聴こえる。「ジョージ、どう思う?」とか言っているのは、もちろんプロデューサーのアヴァキャンとしゃべっているんだろう。演奏前にも、ここをこうやって、何コーラスずつソロをやれ、その後こうやって…、とか言っている。こんな部分も、僕には楽しい。

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