楽しいね、オリヴァー・ムトゥクジのスタジオ・ライヴ
2015年ベスト・アルバムの一つ、オリヴァー・ムトゥクジのライヴ・アルバム『Mukombe We Mvura (Live at Pakare Paye)』。この年の9月3日に僕はブログをはじめたので…、と思って年末のベスト・テン記事を読みなおすと、六位に選んでいる。
ムトゥクジのこれは、たしか春ごろの入荷だったよねえ。それでいままで書きそびれたまま来ていたので、今日ちょっと書いとこう。今2018年にも新作が出たみたいだけど、ちゃんと聴けていないので(CD がまだ入手できないし)、とりあえず2014年作の『Mukombe We Mvura (Live at Pakare Paye)』で。ジャケット・デザインも大好き。
その雰囲気のあるジャケットに写っている、たぶん瓢箪をボディにした?アクースティック・ギターをムトゥクジが弾いているってことなんだろうか。たぶんそうだよね。彼以外にもう一名のギタリストがいて、あとはベース、キーボード、ドラムス、パーカッション。そして女性バック・コーラス。
二名のギタリストのうち、どっちがムトゥクジなのか、僕にはわからない。コードを刻んでいるのがムトゥクジ?違うような気がする。もう一本がシングル・トーン弾きでからんだり。こっちがムトゥクジ?あるいは二本ともシングル・トーンでからんだりもするしなあ。わからん。でも曲の弾き出しなんかでシングル・トーンでイントロ創ったりしているから、そっちがムトゥクジか。
二本のギターのうち、そんなイントロ弾き出しの一本は、ギターの弾きかたそのものというよりムビラ(親指ピアノ)のそれをそのまま移植したみたいな演奏法に聴こえたりもするんで、そっちがやっぱりムトゥクジってことなんだろうと思っておくことにする。だから淡々と地味にジワジワとミニマル的に進んでいるのが、いかにもアフリカ南部の音楽っぽい。
アルバムの全十曲は、一曲ごとにフェイド・アウトしてまた次のがはじまったりするので、あるいは当日のライヴ現場そのままの曲順じゃないのかもしれないが、しかしアルバム化された『Mukombe We Mvura (Live at Pakare Paye)』の進行は、かなりよく考えられている。ジワジワゆっくりとはじまって、徐々に熱を帯び、どんどん昂まっていって、クライマックスに到達し、その後また落ち着いた余韻を残し、終わる。
僕の印象では4曲目の「Dzinga Hwema」までが序章みたいな感じに聴こえ、次の5曲目「Kumbai Manyowa」から大きく盛り上がる。グルーヴが激しくなるし、サウンドも熱を帯びている。そこまでの4曲もポリリズミックだけど、それが一層ハードになって、特にドラマーとパーカッショニストが大活躍。
あんがい(?)すごいのがキーボード奏者だよなあ。5曲目「Kumbai Manyowa」ではピアノだけど、ほかではオルガン(の音のようなシンセサイザー)なども弾き、バンド・サウンドのなかでいちばんハッキリと目立って活躍している。ソロも弾く。そのキーボード奏者を中心にバンド全員が一斉にキメを演奏し反復したりする。そのキメの反復は、5曲目以後たくさん聴ける。だから事前にしっかりアレンジされているよなあ。
そのアレンジされたキメがカッコイイんだよね。6曲目「Perekedza Waro」が、アルバム中僕がいちばん好きな一曲で、鍵盤シンセサイザーを中心とするキメのリフも多く、またそれのリピートがすんごくカッコよく気持ちいい。リズムも楽しいし、こ〜りゃいいね。四分もないからあっという間に終わってしまうような爽やかさ。
7曲目「Ndururu」も熱い。ドラマーの叩きかたなんか、いや、バンド全体のサウンドとリズムが激しいと言ってもさしつかえないほど。ムトゥクジのヴォーカルも熱っぽい。アルバム全体がクールネスに満ちたアフリカ性を発揮しているんだろうけれど、この7曲目は相当にホット。この6〜7曲目あたりで、1時間7分のこのアルバムが絶頂に達するような感じだなあ。ストン!と気持ちよく終わる。
その後の8〜10曲目は、僕にとっては余韻を楽しんでいるような感じだ。バンドのサウンドはけっこう盛り上がったりするものの、主役のムトゥクジのヴォーカルは、アルバム全体でずっと飄々とした表情で、(表面的には)決して熱くなったりしない。円熟の境地ってことなんだろうなあ。繰り返し聴いて味わいが増す一枚。
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