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2018/05/19

Músicas de PALOP(1)〜 アンゴラ、カーボ・ヴェルデ

PALOP とは Países Africanos de Língua Oficial Portuguesa(African Countries of Portugese Official Language)。つまりポルトガル語圏アフリカ諸国のことで、ルゾフォニア・アフリカと言い換えることもできる。アンゴラ、カーボ・ヴェルデ、ギネア・ビサウ、モザンビーク、サントメ・プリンシペの五か国。

その五カ国の音楽の概観的アンソロジーというか、いつまでも植民地支配に固執したポルトガルの罪滅ぼし的なものなのか、2008年に Differenece がリリースした CD 四枚組『メモリアズ・ジ・アフリカ』。一枚ずつそれぞれ、アンゴラ(CD1)、カーボ・ヴェルデ(CD2)、ギネア・ビサウ(CD3)、モザンビークとサントメ・プリンシペ(CD4)の音楽が収録されている。

これら五カ国はポルトガルのカーネーション革命を受けて独立したので、それは1974年か75年。音楽アンソロジー『メモリアズ・ジ・アフリカ』には、1960〜70年代の録音を中心に、80年代初期ごろのものまでが収録されているとされている(が個別に記載はない)。アンゴラとカーボ・ヴェルデ音楽についてかなりの初心者で、ギネア・ビサウ、モザンビーク、サントメ・プリンシペについてはなにも知らない僕だから、ザッとした感想だけ書いておこう。今日は一枚目と二枚目のアンゴラとカーボ・ヴェルデ篇。

さて『メモリアズ・ジ・アフリカ』はオーディオブックみたいな側面もあって、というかたぶんブックとして読ませる目的のほうが大きいのか?と思うほどブックレットが充実している。上記五カ国のことをあまり、なにも、知らないひと向けの入門案内文のように思える。葡英二か国語。

実際、それぞれまず最初に各国の各種基礎情報(国家名、国旗、首都名、使用言語、独立年、通貨、人口など)が書いてあり、そのあとその国の歴史、ポルトガル支配時代、独立、地理など、やはり概観解説が続く。音楽については、五カ国分ともラストにちょこっと触れてあるだけで、CD 収録の音楽家や曲の具体的なことはほぼ書かれていない。

だから、四枚の CD は、ブックレットを読んでその国のことを知る際の一種の BGM みたいなものとして、ちょっと付属させてあるだけだという、そんな位置付けなのだろうか?そんなわけで、綿密に書いておく必要などあるのかないのかわからないが、そうしようとしても、いまの僕にその知識も能力もない。

CD1のアンゴラ篇。1曲目からいきなり(ブラジルでいう)ビリンバウの音ではじまり、そのほか擦弦楽器の音が聴こえるが、あくまでビリンバウびんびんに乗せての男性ヴォーカルとコーラス隊のコール&レスポンスで構成されている。素朴な印象を持つ。2曲目もバラフォン合奏+男性ヴォーカル。

僕のばあい、パウロ・フローレスというセンバ新世代でアンゴラ音楽に入門したのでそういうのが出てくるかな?と思っても、CD1のラストまでそれはなし。パウロの世代を考えたら、1980年代初期までしか収録されていないこの、現地の音楽のベースみたいなものだけ示そうとした(?)『メモリアズ・ジ・アフリカ』にないのはあたりまえか。

その後、やはりアコーディオン一台+ヴォーカル(3)とかあるけれど、でも4曲目「ゾン・ゾン・2」(エリアス・ディア・キムエゾ)がかなりモダンなポップ・グルーヴで、これってセンバってこと?わからないがグルーヴィだ。男性リード・ヴォーカル+アクースティック・ギター+打楽器+コーラス隊。ビート感が現代的。

5曲目、マリオ・ルイ・シルヴァ「ゼカ・カマラオ」は、まるでカーボ・ヴェルデ音楽にそっくりだけど、相互影響みたいなものがあるんだろうかなあ。アクースティック・ギターの刻むリズムとかヴォーカルの乗せかたなど、これもアンゴラ音楽ってことか。
そんな感じのアフロ・クレオール・ミュージックがずっと続き、ホントどこまでがポルトガル由来で、どこまでがアンゴラ現地の(ってなにも知りませんが)っていうか大陸部アフリカのもので、どこからが島嶼部カーボ・ヴェルデ音楽の流入で、あるいはブラジル音楽から来ているものがあるのか?とか、わからない。がまあたぶんミクスチャーってことなんだろう。

しかしこれなら僕でもわかるサウダージ。あの独自の翳った哀感。それはもとはポルトガルから流入したフィーリングなんだろうから、ブラジル音楽にもあるし、PALOP ミュージックにもあるってことなんだろうね。『メモリアズ・ジ・アフリカ』全体にそれが流れている。アンゴラ篇にだってあるわけで。

サウダージって、哀感とか翳りとか、あるいは暗いとかいうのとは違うと思うんだけど、そこいらへんはあまり考え込まず、適当にサウダージと言って済ませておくことにする、今日は。ブラジルのショーロなんかにもある、あんな明るさと翳りの相反同居みたいな、あるいはアメリカ合衆国のブルーズ・スケールの持つ、長調か短調かわかりにくいようなどっちつかずの曖昧フィーリングにも似ている?

CD1アンゴラ篇の8曲目、アナンゴーラの「プーシャ・オデッテ」がかなりいい。モダン・センバっぽいが、でも南海の音楽みたいな(カリブふう?)感じもある。グルーヴは強烈だ。『メモリアズ・ジ・アフリカ』CD1アンゴラ篇のなかで僕のいちばんの好みがこれだ。ジャンプするリズムがとてもいい。パブリック・ドメインなのかな?
10曲目がルンバ・コンゴレーズみたいだったり、12曲目がハワイ音楽みたいだったりするが、11曲目はやはりアンゴラのダンス・ミュージックであるセンバかな。こういったハードなダンス・ナンバーが、僕はやっぱり世界のいろんな音楽のなかでもいちばん好きだなあ。ファンキーなハード・グルーヴが僕にとっての癒しだ。以前、シスター・ロゼッタ・サープ関連でもそう書いた。こういうので溶けるんだ、心が。

CD2、カーボ・ヴェルデ篇。1曲目はブラック・パワーという演者名になっているが、曲もアメリカ黒人音楽みたいだ。っていうか、アメリカン・ブラック・ミュージックのあんな感じがそもそもアフリカン・ルーツなのかもしれないから、言及順序が逆か。でもアメリカ音楽から入ってきたものもあったかもだよね。

2曲目で典型的なモルナになって、これは女性歌手が歌っている。3曲目が、今度はこっちがアンゴラのセンバみたいだが、本当はコラデイラってことかな。ホーン・セクションがスタッカート気味の細切れリフ・フレーズを入れるあたりは、ほんとセンバみたいな、あるいはキューバ音楽みたいな、そんな感じだ。ピアノもちょっぴりキューバン・スタイル?

4曲目以後もモルナみたいな歌謡と、コラデイラみたいなダンス・ナンバーが交互に連続する。聴いているのもいいが、踊ってもいい。7曲目、アナ・フィルミーノ「オ・ベルナルド」がかなりいい。サウダージがあって、しかもゆったりと大きくノるミドル・テンポのダンス・ナンバー。これも一種のコラデイラかな?ナンシー・ヴィエイラにもこういうのたくさんあるよね。
モルナを管楽器でやっているみたいな8曲目とか、おもしろいけれど、その後はまた打楽器+ギター+ヴォーカル(&コーラス)で、しっとりしながらダンサブルで、メロディの動きはやっぱりポルトガル由来のものがあるんだなとわかりつつ、リズムのこんな混交フィーリングは、やっぱりアフリカ音楽なんだなと実感する。9、11と二曲あるマリーノ・シルヴァがかなり素晴らしい。

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