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2018/05/16

三つ子の魂 〜 ルイス・ペルドーモ

1971年生まれのルイス・ペルドーモ。ベネスエーラはカラカス出身にしてアメリカ合衆国で活動するジャズ・ピアニストだけど、2012年作『ジ・'インファンシア’・プロジェクト』は、そんなルーツがあらわになった一枚。どこからどう聴いても明快なラテン・ジャズ作品だ。アフロ・キューバンと言っていいかな。

だがしかしそんな作品を「幼少期」プロジェクトと名付けているのはなんでかなぁ〜と思って CD 附属のリーフレットを開きルイス・ペルドーモ自身の書いた案内文を読んで、はじめて意味がわかったのだった。彼は安直に自己のルーツを出してイージーなラテン傾向の作品を創ることをずっと22年間も避けてきたのだそうだ。

シンプルにカテゴライズされる結果になってしまうことを嫌ってということらしいんだけど、レーベル Criss Cross Jazz のヘッドのプッシュと、信頼できるサイド・メンを起用できるので、ということでようやく母国はカラカスでの幼少期に(主に父のレコード・コレクションなどで)聴き育ったインファンシーを音楽化する気になったそうだ。

そんないきさつはともかく、できあがりで判断すると、ルイス・ペルドーモ本人には申し訳ないんだけど、2012年1月26日のブルックリン録音である『ジ・'インファンシア’・プロジェクト』は、わりとティピカルなラテン・ジャズ作品だと僕には聴こえる。編成はピアノ・トリオ+テナー・サックス+パーカッション。パーカッショニストのマウリシオ・エレーラはアルバム全編で大活躍。ラテン・ジャズはリズムの色彩感にこそ命があることを鮮明に示している。ドラマーのイグナシオ・ベローアも、いかにもキューバ出身だけあるという叩きかた。特にスネアとシンバル。

テナー・サックスのマーク・シムは、やはりジョン・コルトレイン・スタイルで吹きまくり、前から僕も言っているが、ある時期以後のコルトレインのサックス・サウンドはラテン・リズムと相性がいいんだよね。またオーネット・コールマンの曲である4曲目「ハッピー・アワー」ではスケール・アウトするフリー・ブロウイング。作者への敬意なのか、この曲ではルイス・ペルドーモもフリーに弾く。

ラテン・ジャズ・アルバムだけど、そのなかにある元からのラテン・ナンバー、5曲目「コメディア」(J. A. エスピーノ)は、しかしどこにもラテン臭がない4ビートのジャズ・バラードで、ルイス・ペルドーモもビル・エヴァンズふうにリリカルに攻めているっていうのがおもしろい。エクトール・ラボーのヴァージョンでは、やはり後半サルサ・タッチになっていただけに、ラテン・ジャズ・アルバムに唯一あるそんな由来の曲でだけラテン・スタイルじゃないなんて。ルイスの「コメディア」ではサックスとパーカッションはおやすみ。

いや、ラテン・ナンバーはもう一曲あった。アルバム6曲目の「ウン・ポコ・ロコ」。バド・パウエルのこの曲だって、もとからアフロ・キューバン・ソングだったね。バドはルイス・ペルドーモの、メインストリームなジャズ・ピアノの先生のひとりなんだそうだけど、「ウン・ポコ・ロコ」ではラテン・タッチをそのまま受け継いで拡大表現している。

残りの曲は、3「ソーラー」がマイルズ・デイヴィス作、9曲目「メイジャー・ジェネラル」がルイス・ペルドーモも共演歴のあるジャック・ディジョネット作で、ほかはぜんぶルイスのオリジナル。ルイスの自作曲は、ちょっとセロニアス・モンクを思わせるところもあるユニークなメロディの動きかたで楽しい。それをラテン・リズムでやるから、僕は好きだなあ。

上で書いた5「コメディア」以外はすべての曲がラテン・ナンバーと化していて、たとえばマイルズの「ソーラー」がこうなるのかと思うとかなり意表を突かれる思いだけど、ホント音楽って料理法次第だよなあ。いまふうなジャズ・ドラマーのスタイルを知っていると物足りなく聴こえるかもしれないイグナシオだけど、僕にはこれくらいでちょうどいい。っていうか、なかなかすごいぞ、「ソーラー」も、特にシンバルが。

ルイス・ペルドーモは、いちばん上で書いたようにラテン・アメリカ圏出身のジャズ・マンがやったふつうのティピカルなラテン・ジャズ作品と安易にみなされるのを嫌って避けてきたということなんだけど、こんな感じでストレートに表出される<ふつうさ><わかりやすさ>、悪い言いかたをあえてすると <安直さ>と聴こえるかのようなものが、まさに幼少期に刻み込まれたものってことじゃないかな。

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