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2018/05/30

ストーンズ『スティッキー・フィンガーズ』をちょっと

 

 

ローリング・ストーンズの『スティッキー・フィンガーズ』(1971)。この Spotify リンクは2015年のスーパー・デラックス・エディション三枚組。同じときにデラックス・エディション二枚組も出ていて、僕はそっちを買った。どっちにも二枚目トップにエリック・クラプトンがスライド・ギターを弾く「ブラウン・シュガー」が収録されているのがこのときのリイシューの目玉に違いない。ファンのあいだでは伝説化していた音源で、僕は寺田正典さんの案内で前からネットで耳にしていた。

 

 

だけど、今日はそんな「ブラウン・シュガー」別ヴァージョンの話をたくさんはしない。今日の話題は、1971年のオリジナル・アルバムに限定してすこしだけ。英国ハード・ロッカーならストーンズじゃなくてレッド・ツェッペリンのほうが、UK&アイルランドのトラッドやバラッドなどフォーク・ミュージックとのかかわりあいが深いんだろうけれども、ツェッペリンのそこいらへんもそのうち掘り下げて聴いてみようと思っている。プレイリストならもうできていて、すでにみなさん聴けます。今日はストーンズ『スティッキー・フィンガーズ』。

 

 

えっ?ストーンズでそれだったら前作『レット・イット・ブリード』のほうが向いているだろうって?そうだけど、うんまあでも今日は『スティッキー・フィンガーズ』の気分なんだ。それにカントリーとかフォーク・ミュージックとかの関連をストーンズにかんしてあまり掘り下げる力もいまの僕にはない。だから『スティッキー・フィンガーズ』についてちょっとだけダラダラと。

 

 

まずハード・ロック・ナンバーに触れておこう。レコードの両面トップだった1曲目「ブラウン・シュガー」と6曲目「ビッチ」。どっちもすごくカッコイイなあ〜(歌詞はどっちもひどい)。キース・リチャーズが弾くこんな感じのギター・リフは、1968年のシングル「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」からストーンズの代名詞になって、も〜うホ〜ント、気持ちいいったらありゃしない。アクースティック・ギターが控えめに聴こえるのもいい隠し味で、いかにもなストーンズらしさ。これ以上言うことはない。

 

 

エリック・クラプトンがスライド・ギターを弾くほうの「ブラウン・シュガー」には、アル・クーパーもギターで参加しているとなっているが、しかしどのギターがアルなのか、僕には聴解できない。クラプトンのスライドのまろやかな味が、ストーンズが持つコクのあるバンド・サウンドにうまく溶け合っていてイイネ。これ以上言うことはない。

 

 

ストーンズ、1972/73年のライヴにおける「ブラウン・シュガー」は、間違いなくこのクラプトン参加ヴァージョンを参照している。公式には『ザ・ブリュッセル・アフェア』のオープニングになっているやつだけかな。たんにミック・テイラーがスライドで弾くというだけではない。はじまりのキースの弾き出しも、メイン・リフの頭にちょろっと音が余計にくっついているでしょ。それはオリジナルにはなく、クラプトン入りヴァージョンがそうなっている。それにしてもこのテイラーのスライド、かっちょええなあ〜!終盤はバーを捨てて指で押弦し、エンディングに向けてグングン高揚するのも最高だ。

 

 

 

『スティッキー・フィンガーズ』4曲目の「キャント・ユー・ヒア・ミー・ナキング」のこともすこしだけ。ふつうのロック・ナンバーとしてはじまるが、途中からがらがらとラテン・ジャズ・ロック・ジャムに突入する。そこからがマジ楽しいよね。その部分ではミック・テイラーがカルロス・サンタナになり、ボビー・キーズがマヌ・ディバンゴへと変貌している。特にテイラーのサンタナ化は間違いない。これ以上言うことはない。

 

 

アルバムに二曲あるストレート・ブルーズ楽曲。5曲目、フレッド・マクダウェルの「ユー・ガッタ・ムーヴ」と、7曲目「アイ・ガット・ザ・ブルーズ」。後者は定型12小節ではないが、間違いないブルーズ・フィールだ。「ユー・ガッタ・ムーヴ」では、まるで重い足枷を引きずるかのごときヘヴィなノリ。後者は米南部カントリー・ブルーズのフィーリングを持ちつつ同時にホーン群やオルガン(ビリー・プレストン)を使ってシティ・サウンドにも聴こえるアレンジ。ちょっぴりサザン・ソウルふう。

 

 

8曲目「シスター・モーフィン」の作詞者にはマリアンヌ・フェイスフルも名を連ねている。実際、彼女のための歌だったが発売できず、ストーンズはアルバム『レット・イット・ブリード』のためのセッションで録音した。そんなわけでライ・クーダーが参加。聴こえるエレキ・ギターがライ。さすがのうまさだ。歌詞どおり全体的にダルな雰囲気の曲調。これ、ちょっと UK トラッドっぽい部分もあるような?

 

 

ラスト10曲目「ムーンライト・マイル」は、結局録音には参加していないキースのアイデアにはじまった彼言うところの Japanese thing だけど、日本ふうか中国ふうか、あるいは東南アジアふうか、はたまた中近東アラブ音楽ふうだったり?、そのあたりがよくわからないゴタ混ぜの無国籍ロック。本人たちもわかっていなかったかもだけど、そんなニセモノ(フェイク)っぽさが音楽などの魅力につながるばあいもあるよね。

 

 

さてさて、『スティッキー・フィンガーズ』3曲目の「ワイルド・ホーシズ」と9曲目の「デッド・フラワーズ」。この二曲の、アクースティック・サウンドをメインに据えたフォーキーなカントリー・ソングこそが、僕にとってのこのアルバム最大の聴きどころでありチャームなんだよね。どっちも当時深い交流があったグラム・パースンズ関連で誕生した。

 

 

グラム・パースンズがアメリカン・ロック・シーンに果たした役割・貢献度は大きいものがあったと思うんだけど、英国でも彼を媒介して1968年ごろからストーンズがこんな方向へ傾いて、その後この UK ロック・バンドも現在までずっと一貫して米南部ふうなカントリー・テイストを失っていない。それだけ大きな存在だったグラムのことを、彼が亡くなってなお、いま2018年でも、ミックもキースも忘れないんだ。

 

 

「ワイルド・ホーシズ」も「デッド・フラワーズ」ものちのちまで(前者は最新ツアーで今年もやった)ライヴ再演しているが、公式盤では1995年の『ストリップト』収録ヴァージョンがおもしろい。公式 CD などで聴けるこの二曲のストーンズ自身による再演はこれだけのはず。『ストリップト』はアルバム丸ごとぜんぶが再演とカヴァーだけどね。真ん中に「レット・イット・ブリード」をはさんでの三曲メドレーみたいになっている。

 

 

 

いやあ、『ストリップト』におけるこの三曲の流れは見事だね。この1995年ヴァージョンの「ワイルド・ホーシズ」が特に素晴らしい。当人たちもそう思っていたからなのか、1996年にシングル CD でも発売されたのを僕は持っている。同じ音源なんだけど、シングルのほうには「タンブリング・ダイス」のスペシャル・ヴァージョンが入っているからだ。

 

 

 

この「タンブリング・ダイス」は、お聴きのとおり前半が楽屋みたいなところでやるピアノ・ヴァージョン。途中からそのまま切れ目なくライヴ・ヴァージョンにつないである。ピアノ・ヴァージョンもライヴ・ヴァージョンも1995年のヴードゥー・ラウンジ・ツアーからのもののようだ。

 

 

このヴァージョンの「タンブリング・ダイス」の初出は、アルバム『ストリップト』の CD エクストラ(だっけ?)とかエンハンスト CD(だっけ?)とかいっていた CD-ROM 部分にあったもの。あの当時流行っていたよね、CD をパソコンに入れたら、音楽本編以外にオマケが入っているのを QuickTime で再生できるってやつ。『ストリップト』のエンハンスト CD に、この「タンブリング・ダイス」があったのだ。

 

 

このヴァージョンの「タンブリング・ダイス」が ふつうの CD に収録されて発売になったのが、1996年の春ごろ(だっけな?)リリースのシングル「ワイルド・ホーシズ」の3曲目だったのだ。それがほしくてこのシングルを買ったんだよね。1995年仕様のエンハンスト CD のその部分なんていまや再生できないから、いまでは貴重だ。シングルで聴いてみた「ワイルド・ホーシズ」は、同じもののはずなのにアルバムで聴くより音がいいけど、そういうもん?

 

 

それから、『ストリップト』ヴァージョンの「ワイルド・ホーシズ」で弾くキース(右チャンネル)のギター・チューニングがどうなっているか、おわかりのかたは教えてください。レギュラーじゃないと思うんだけど。『スティッキー・フィンガーズ』ヴァージョンではナッシュヴィル・チューニングだったけれど、それと同じに聴こえたり聴こえなかったりで、よくわかりません。ぜひお願いします。

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コメント

ストリップドバージョンのワイルドホース、東芝スタジオの映像を見る限りキースは5弦でセットしているので、オープンGのような...Am含むだけにオープンG?と思わなくもないですがっ

ありがとうございます。ちょっとやってみますね。

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