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2018/05/08

これは遠い過去からやってきたものなのだろうか?

おもしろく楽しい曲がいっぱいあるフランク・ザッパ。そのなかでも特に「インカ・ローズ」か「ピーチズ・エン・レガリア」か、というくらいこの二曲は大好きなんだけど、今年春にリリースされた七枚組『ザ・ロキシー・パフォーマンシズ』の二枚目に、なかなかチャーミングな「インカ・ローズ」がある。

それは1973年12月9日のセカンド・ショーのオープニングを飾っている8分28秒。上のプレイリストで1曲目に置いたので、ぜひお聴きいただきたい。まずザッパが曲紹介をしている。UFO だとか、アンデス地域に降り立ったとかいうことなど、その中身は聴けばわかることなので。そのおしゃべりの最後で「ジョージ・デュークさんのラヴリーな声をフィーチャーしたこの歌の名前は 'インカ・ローズ'、やってくれ、ジョージ」となって、「インカ・ローズ」がはじまる。

そのイントロと歌が入ってきてしばらくのあいだが、本当に楽しいと思うんだよね。ジョージ・デュークはフェンダー・ローズを弾きながら歌っているが、こりゃ完全に第二次大戦前のオールド・ジャズ・ソングだ。雰囲気があるよね。ボスもそうしゃべっている。

2:31でルース・アンダーウッドのマリンバがインタールードを弾くけれど、そのままオールド・ジャズ・ソングは続く。約三分目までね。ザッパのおしゃべりにはじまるこの約三分間の「インカ・ローズ」が、本当に大好き。これはたんに僕の趣味嗜好というだけのことだ。こんな雰囲気のある古〜いナイト・クラブ・ジャズみたいなのが、大好きなんだ。

その三分間、ジョージ・デュークが弾くフェンダー・ローズだって、いかにもなジャズ・ピアノで…、ってジョージはジャズ畑出身の人だ。でもファンキーなソウル・ジャズ寄りの鍵盤奏者なんだからなあ。さらにプロとして歌うつもりなんかもなかったらしい。ザッパの作品で聴けるジョージの歌は、やっぱりイマイチかなと僕は思うんだけど、この「インカ・ローズ」での声は魅惑的だ。口笛もジョージかな?

そのあいだ、トム・ファウラーのベースは2/4拍子を刻み、ラルフ・ハンフリーかチェスター・トンプスンか(このロキシー・ライヴはツイン・ドラムス体制)どっちかがブラシを使い、ハイ・ハットとの二つでやさしくそっと撫でているのもいい。

ナポレオン・マーフィー・ブロックのフルートとブルース・ファウラーのトロンボーンがオブリガートをつけて、雰囲気を盛り上げている。特にトロンボーンのほうの音量は小さく控えめだけど、よく聴くと最高にいい雰囲気をつくりだしているよね。

小さなナイト・クラブでやる1920年代のポップなジャズ・ソングふう「インカ・ローズ」。その三分間が好きで好きで、この、本来はプログレッシヴ・ジャズ・ロックみたいな曲が、この1973年12月9日のロキシーでこうなっていたなんてなぁ。はじめて聴いたけれど、うん、マジでホント、楽しくてしかたがない。

こういった雰囲気の歌が僕はだ〜いすきなんですよ。こういった古〜いジャジーな流行歌が。あるいはそれふうな(新しめの)楽曲がね。

このロキシーのときの「インカ・ローズ」。3:03 からザッパ・ミュージックではお馴染みの変態変拍子の連続攻撃になっていくまで、この古い戦前の流行歌ふうは続く。それが終わる三分過ぎからも、『ワン・サイズ・フィッツ・オール』などで聴けるようなああいう感じにはなっていない。かなりジャジーだ。しかもラテン調も漂う。

こんな「インカ・ローズ」、あえて探せば『ザ・ロスト・エピソーズ』にあったヴァージョンに似ている。それは1973年4月3日のスタジオ録音で、メンツもジャン・リュック・ポンティ(ヴァイオリン)を外せば『ザ・ロキシーパフォーマンシズ』や『ワン・サイズ・フィッツ・オール』のとほぼ同じ。この曲の録音順なら、『ザ・ロスト・エピソーズ』→『ザ・ロキシー・パフォーマンシズ』→『ワン・サイズ・フィッツ・オール』となる。

しかし『ザ・ロスト・エピソーズ』にはヴォーカルはない。完全なるインストルメンタル楽曲だった。御大 FZ のギター・ソロも、ロキシー・ヴァージョン同様存在しない。しかしそれでもそのほかの楽器によるかなりジャジーなソロが続くんだよね。その部分の前にあんな戦前のジャズ流行歌みたいな歌を入れればロキシーの「インカ・ローズ」みたいなものに近づく。

考えてみたら「インカ・ローズ」は、いや、これ "も"、キメラみたいなツギハギでできている楽曲で、ヴォーカル・パートとインストルメンタル・パートは、まるで独立しているかのように聴こえる部分もある異種のものだよね。ひとつながりでスムースに聴こえるのが、そう考えたら不思議な気がしてきたが、そこがコンポーザー、フランク・ザッパの力量の高さなんだろう。

「インカ・ローズ」が、まず最初インストルメンタル楽曲として思いつき録音しておいて、その後にあのうねうねしたラインに歌詞をつけて、そこから派生したようなメロディの、独立したヴォーカル・パートもつくり、それらをつなぎ合わせた結果ああなっているのだとか、そんなことかどうかはもちろん僕にわかるわけがない。『ワン・サイズ・フィッツ・オール』などで聴ける "完成品" の「インカ・ローズ」では、楽器ソロのあとに歌がもう一回出てきて曲が終わるけれど、ロキシー・ヴァージョンでもそこはだいたい同じだね。

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