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2018/06/05

楽しいね、マンハッタン・トランスファー

 

 

Spotify で聴けるマンハッタン・トランスファー入門というと、この『アンソロジー:ダウン・イン・ザ・バードランド』になる。1992年のライノ盤二枚組。僕はこれをフィジカルでは持っていない。僕の持つこのヴォーカル・グループの CD アンソロジーは2008年のライノ盤二枚組『ザ・ディフィニティヴ・ポップ・コレクション』だ。

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どっちでもいい。だいたい同じような内容なんだから。みなさんとシェアできたほうがいいので、(自分ではフィジカルを)持っていないが、今日は『アンソロジー:ダウン・イン・ザ・バードランド』に沿って話を進めたい。

 

 

ところで同様の内容だとはいえ、『ザ・ディフィニティヴ・ポップ・コレクション』は曲のリリース順に並んでいるので、マンハッタン・トランスファーの変遷はわかりやすい。『アンソロジー:ダウン・イン・ザ・バードランド』のほうは聴いて楽しめるように並べた、ってことかなあ。一枚目と二枚目のラストがそれぞれ「トワイライト・ゾーン/トワイライト・トーン」と「バードランド」になっているのはわかりやすい。

 

 

やっぱりこの二曲こそがマンハッタン・トランスファーのシグネチャーってことなんだね。それで間違っていない。だからいいんだけど、以前から数回繰り返してきているが、昨日書いたキャッツ&ザ・フィドルとか、嚆矢だったミルズ・ブラザーズとかインク・スポッツ、また1930年代にたくさんあったジャイヴ・ヴォーカル・グループとか、第二次大戦後のドゥー・ワップ・グループなど 〜〜 そういったあたりを1970年代に復興したのがマンハッタン・トランスファーだってことを言いたいんだ。それが僕の見方。

 

 

ヴォーカリーズ路線もあるんだけど、それでもってやったジョー・ザヴィヌルの「バードランド」(歌詞はジョン・ヘンドリクスがあつらえた)がヒットして、ウェザー・リポートと共演する機会もあったけれど、あくまで僕の個人的な考えでは、すこし別なところに力点を置きたい。別ではないのかもしれない。ヴォーカリーズ手法は、ジャイヴ・ヴォーカルと一体だから。

 

 

『アンソロジー:ダウン・イン・ザ・バードランド』にも、古い(ジャイヴ・)ヴォーカル・ナンバーや、第二次大戦後にドゥー・ワップ・グループなどで歌われた曲や、新しいものでもジャジーなポップ・コーラス・ソングがたくさんあることにお気づきのはず。一枚目にある「トリックル・トリックル」「グローリア」「ハーツ・ディザイアー」「ジャーヴァ・ジャイヴ」「キャンディ」などなど。

 

 

マンハッタン・トランスファーはジャイヴ・ヴォーカルそのものはあまりやらない。ナンセンス・シラブルでわっ〜わ〜っとかどぅ〜わ〜っとか、そんなに頻繁には歌わないよね。キャブ・キャロウェイが大流行させ、その後の少人数ジャイヴ・バンドに引き継がれたああいったやりかたはあまりしない。ほぼいつもきれいな意味のある歌詞を歌う。

 

 

だけど、1970年代にジャズ界隈で本格デビューしたヴォーカル・グループとしては、かなり珍しいポップさと、一種の猥雑さ(があるかどうかはひとによって判断が分かれるかもだけど)というか、ユーモラスでコケティッシュな味があって、決してシリアス一直線ではないおふざけフィーリングを聴きとることができると、僕は思うんだけどね。そこが好き。

 

 

なかでも一枚目収録の「ジャーヴァ・ジャイヴ」がいい。インク・スポッツのヒット曲(1941)だけど、これを1975年にふたたびとりあげて、しかもこの冒頭のギターのパターンはインク・スポッツ・ヴァージョンをそのままやって、これはたんなるコーヒーLOVEを綴っただけの他愛のない歌詞で、しかも架空の日本人スパイ(ミスター・モト)も登場し、作詞の1940年当時のスラングもそのまま使って 〜〜 そんなこんなで再演しているのが、僕にはスペシャルなんだ。インク・スポッツのあのフィーリングも表現できている。

 

 

『アンソロジー:ダウン・イン・ザ・バードランド』二枚目収録の、デビュー・シングルだった「タキシード・ジャンクション」。アースキン・ホーキンズ楽団の曲(1939)だけど、マンハッタン・トランスファーは翌1940年のグレン・ミラー楽団ヴァージョンを下敷きにしている。これは早くから歌詞がついたので、いわゆるヴォーカリーズとは違う。1975年のマンハッタン・トランスファーは、あの1930年代末ごろのあんなビッグ・バンド・スウィングを再現できているよね。

 

 

1970年代以後の時代の感覚に合うようにモダンにアップデートしてあるかどうかは、僕にはよくわからない。たんなるレトロ趣味なだけかもしれないが、マンハッタン・トランスファーがあれだけ支持を集め人気ヴォーカル・カルテットになることができて、メンバー変更してなお2018年現在も存続していることを考えれば、いまでもウケる現代感覚があるのか、あるいは<あの時代>のあんなジャイヴィー・スウィングは、そのままやれば、いまも楽しい、おもしろい、たんにきれいだから、ということなのか、どうだろう?

 

 

三巻ある大部な『ザ・ドゥー・ワップ・ボックス』にだって収録されているマンハッタン・トランスファーだけど、このグループのやるドゥー・ワップ・ソングのことについて書いておく余裕がもうないね。ヴォーカリーズ・ナンバーだってラテンだって楽しいマンハッタン・トランスファーなんだけど。また別の機会に。あっ、このグループ名の由来がアメリカ人小説家ジョン・ドス・パソスの同名長編から来ていることの意味が書けなかった。

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