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2018/06/11

沸騰前夜のネヴィルズ・ライヴ

 

 

ネヴィル・ブラザーズが大人気になってアメリカ国内外で広く認知されるようになったのは、1989年3月リリースのアルバム『イエロー・ムーン』から。その前夜ともいうべき同年2月27日に西海岸サン・フランシスコで行ったライヴを収録した CD 二枚組『オーソライズド・ブートレグ:ウォーフィールド・シアター、サン・フランシスコ、Ca、フェブラリー、27、1989』がすごくいい。Hip-O からのリリースは2010年だった。

 

 

これ以外に三つあるネヴィルズのライヴ・アルバム(『ネヴィライゼイション』『同 II:ライヴ・アット・ティピティーナズ』『ライヴ・オン・プラネット・アース』)と比較しても、断然『オーソライズド・ブートレグ』の内容がすぐれているもんね。これぞ最高のネヴィルズ・ライヴだ。1989年2月27日なら、『イエロー・ムーン』はすでに完成していた。その発表直前なんだから、いちばん脂が乗っていたタイミング。だから充実していてあたりまえではある。

 

 

ところで、この『オーソライズド・ブートレグ』という名のライヴ・アルバム・シリーズは、ほかにもマディ・ウォーターズのとか、いくつかあって僕も持っているが、それらはすべてウォルフガングズ・ヴォールトのアーカイヴからのもの。ってことはつまりビル・グレアム管理のものってことかな?

 

 

ネヴィルズの『オーソライズド・ブートレグ』は、「ファイア・オン・ザ・バイヨー」「ヘイ・パッキ・ウェイ」という、いきなりのセカンド・ライン・ファンク連続攻撃で幕開け。もうこれだけでノック・アウトされてしまう。演奏メンバーはリアル兄弟四人に、ほかは『イエロー・ムーン』を録音したメンツがそっくりそのまま参加している。これは1980年代末当時、アメリカ最高のリズム&ブルーズ〜ファンク・ライヴ・バンドだったよねえ。

 

 

「ファイア・オン・ザ・バイヨー」「ヘイ・パッキ・ウェイ」という、ネヴィルズにとって初期の古典的な楽曲でも、バンド円熟期のサウンドに変貌していることに注目してほしい。サウンドとリズム、そしてヴォーカル陣の歌など、深みと陰影が増し、色彩感が多様になり、しかもグルーヴがより強力になっている。

 

 

5曲目「ウェイク・アップ」が終わり6曲目「ヴードゥー」に入る前に曲紹介のおしゃべりが入り、いまから二週間後にリリースされる予定の新作『イエロー・ムーン』…云々と言っている。この新作からも、それらの曲にくわえ、当然「イエロー・ムーン」をやり、また CD2冒頭に「マイ・ブラッド」「シスター・ローザ」がある。

 

 

『イエロー・ムーン』にはサム・クックやボブ・ディランのカヴァーもあって、上記のオリジナル・ソングとあわせ、かなりメッセージ性の強いアルバムではあった。シスター・ローザとは、公民権運動の旗印みたいだったローザ・パークスのことだしね(モンゴメリー・バス・ボイコット事件)。

 

 

しかしあまりそういうことを意識しすぎないほうがいいのかも。もっとこう、たとえば曲「イエロー・ムーン」でも、このリズムを聴いたらいいんじゃないかな。『オーソライズド・ブートレグ』ヴァージョンでもはっきり出ているが、このパーカッション+ドラムス+ベース+ギターの刻む細かいビートのぶつかり合いは、まさにニュー・オーリンズ音楽だという魅惑的なもので、さすがはアフロ・クリオール文化首都らしいというか、アフリカ〜カリブ(中南米)からもらってきて、この国で花開いたブラック・ミュージックだというのがよくわかる。

 

 

『イエロー・ムーン』からの曲でも、(ミーターズ〜)ネヴィルズ自身の古典曲でも、「ブラザー・ジョン/アイコ・アイコ/ドゥー・ユー・ワナ・ダンス/バナナ・ボート」とか、プロフェッサー・ロングヘアの「ビッグ・チーフ」とかの有名スタンダードにしても、このライヴ・アルバムでのネヴィルズ・ヴァージョンでは、そんな混交文化的で密でコクのあるグルーヴが色濃く表現されているよね。

 

 

そんな感じは、これ以前のネヴィルズにもこんなに強くはなかったし、このあとはライヴ・アルバムのリリースがないし、スタジオ・アルバムでもこの前後、どうだろう?見いだせるのだろうか?僕個人としては、なかなかむずかしいように感じているので、ってことは、だから僕にとっての最高のネヴィルズがこの『オーソライズド・ブートレグ』だということになるのかも。

 

 

しかしながらそれでも、この二枚組の個人的クライマックスは、二枚目後半のロックンロール・メドレーだ。チャック・ベリー、ラリー・ウィリアムズ(ニュー・オーリンズ人)、リトル・リチャード、バディ・ホリーが、速射砲のようにどんどんつながって流れてきて、こ〜りゃ楽しいね。バディ・ホリーだけ白人でほかは黒人だけど、ちょっと聴いてほしい。ネヴィルズはリズム&ブルーズ・フィールというより、あくまでロックンロール・ナンバーとして扱っているように思う。

 

 

ってかまあそれらおんなじもんだから、あんまりそのへん区別しなくてもいいよなあ。『オーソライズド・ブートレグ』ではロックンロール・メドレーはアンコール的な位置付けだけど、それも終わると、もう一回アンコールがあって、定番の「アメイジング・グレイス」とボブ・マーリーの「ワン・ラヴ」をやる。その最終盤でシンセサイザーが、映画『スター・ウォーズ』のメイン・テーマを弾いているのも個人的ニンマリ事項。

 

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