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2018/06/19

感じろ!(考えずに)〜 ロニー・スミス

 

 

現在はドクター・ロニー・スミスと名乗っているこのオルガン(ハモンド B-3)奏者の1968年盤『シンク!』。超カッコイイもんなあ。これ、きっかけはルー・ドナルドスンの1967年『アリゲイター・ブーガルー』かな。むろんその前からのジョージ・ベンスン・カルテット、の前のジャック・マクダフ・バンドと、さかのぼることができるもので、その究極発展系が『シンク!』だ。いやあ〜、あまりのカッコよさにションベンちびりますね〜、これは。

 

 

とにかく!ロニー・スミスの『シンク!』は、オープナーの「サン・オヴ・アイス・バッグ」(ヒュー・マセケラ)がとんでもなくカッコイイ!ジャズでここまで超絶カッコよくグルーヴィなものって、ほかに聴いたことないぞ。と言ってしまいたいくらいぶっ飛んでいるじゃないのさ〜。いやあ〜、これをションベンちびらずに冷静に聴くなんて不可能だね。

 

 

「サン・オヴ・アイス・バッグ」では、ドラマーのメアリオン・ブッカー Jr のサウンドが音量も特に大きく聴こえるし、また曲演奏じたいの肝になっている。こんなにカッコいいファンク・ドラミングだからこそ、録音時かミックス時にヴォリュームを上げたんだろう。スネアの叩きかたなんか、も〜うホント、マジで、たまらん!

 

 

ホーンの二管はリー・モーガンとデイヴィッド・ニューマン。サックス奏者のほうはレイ・チャールズの録音でも有名なはず。ヒュー・マセケラの書いたぐるぐる回転するようなテーマ・リフを二人できっちりキメているが、ヒューのヴァージョンよりもノリとタメが深くなっているよね。これ以上にディープなジャズ・ファンクって、ほかにあるんだろうか?

 

 

その二管リフのあいだもメアリオンのドラミングが、あ、いや、ギター(メルヴィン・スパークス)、テナー・サックス、トランペットのソロのあいだもずっとドラミングが、あまりにもファンキーでカッコよすぎる。なんなんだこれは?!それら三人のソロ内容もいいんだけど、ぼくはずっとドラミングばかりに耳が行く。いちおうはジャズ・フィールドにある音楽で、ここまでのファンク・ドラミングって聴けるのだろうか?きっとこれ以上のものはないよなあ。

 

 

あ、ところでベーシストは例によっていないんだ。オルガン・ジャズだから。1曲目の「サン・オヴ・アイス・バッグ」では聴こえないが、必要なときに聴こえるベース・ラインはロニー・スミスのフット・ペダルに違いない。「サン・オヴ・アイス・バッグ」では、ギターと2ホーンズのソロが終わるともう一度ぐるぐる回転リフになって、それがインタールードとなってリーダーのオルガン・ソロに突入。そのソロもドープだ。しかもチルアウト。

 

 

オルガン・ソロのあいだはドラマーとのデュオ演奏になっているんだけど、なんのなんの、とんでもなくグルーヴィだ。それも終わると回転リフを最終テーマとして二管で演奏。なお、ロニー・スミスのオルガンは、もちろん終始小さな音でずっと鳴っているのもクール。そんで、曲全体で一貫したこのメアリオンのドラミング!

 

 

アルバム『シンク!』2曲目「ザ・コール・オヴ・ザ・ウィンド」はロニーの自作で、これはほぼサルサ・ジャズ(・ファンク)。最初ふわ〜っとヴェールがたれ込めるような静かな演奏が聴こえるから気を抜いていると、パーカショニスト三名が派手にやりだして、メアリオンもくわわってのカルテット打楽器アンサンブルでラテン・リズムの祝祭になっていく。ギター・カッティングもはじまる。

 

 

そこからはずっとワン・コードでチェンジしないままソロ・リレーが続くんだけど。その時間が2曲目「ザ・コール・オヴ・ザ・ウィンド」の聴きどころ。三名のパーカッショニストのうち、ティンバレスを担当しているのはパンチョ・ブラウンだよ。ほかの二人はぼくは知らないひとたちです。

 

 

ロニー・スミス、リー・モーガン、デイヴッド・ニューマンとソロが続く。メルヴィンのギターがずっとファンキーに刻んでいる。コードが一個で、ソロ内容に旋律展開のヴァリエイションは乏しいが、それを求めるようなものじゃない。豊穣なラテン・リズムのカラフルさとグルーヴのカッコよさと、そこに三人のソロイストがどう乗っているかを聴けば、もう、最高なんだよね。

 

 

ラテン・グルーヴ・パートが終わると、もう一回最初と同じくオルガンを中心とする静寂パートになって「ザ・コール・オヴ・ザ・ウィンド」は終わる。ってことはスタティック・テーマでアクティヴ・ソロ・パートをサンドウィッチしているわけで、この1968年7月23日の録音時点で、翌69年7月発売のマイルズ・デイヴィス『イン・ア・サイレント・ウェイ』B 面を完璧に先取りしていた。それも連続する生演奏で。

 

 

しかもこんなサルサ・ジャズだなんてなあ、その当時まだなかったはずだ。アメリカ合衆国黒人音楽におけるファンクネスとは、イコール、ラテン要素のことだということも、これまた鮮明に示しているし、そんなことよりなにより生理的に、皮膚感覚として、あまりにカッコよすぎるし、いやあ〜、ここまでの作品であるロニー・スミス『シンク!』を、人生56年目にしてはじめて知ったとはあまりにも遅すぎだけど、これから楽しむぞ!!

 

 

3曲目以後は〜、まあその〜、いやカッコイイんですけれども、1、2曲目みたいに脳天ブチ抜かれるほどカッ飛んではいないような…。「シンク」はアリーサ・フランクリンのやつのほう。「スリー・ブラインド・マイス」はマザー・グース(伝承童謡)のファンキー・ジャズ化。「スロウチン」はもう一個のロニー自作。これにも2曲目同様のラテン・パーカッショニストたちが参加している。

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