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2018/07/08

ウェザー・リポートの熱帯地上舞踏音楽トリロジー(1)〜『幻想夜話』

 

 

1975年の『幻想夜話』(テイル・スピニン)から、あからさまにウェザー・リポートの音楽性が変化した。それまでのスペイシーでユートピア志向みたいなサウンドから脱却し、地底探検とまではいかないが(それはマイルズ・デイヴィスがやった)、大地の上で笑いながらダンスしているような熱帯志向へと激しく様変わりしたよね。

 

 

そこになにがあったのかは、またジックリ考えてみる。『幻想夜話』の前作『ミステリアス・トラヴェラー』(1974)から、一部、その傾向はあった。「ヌビアン・サンダンス」なんかはモロそうだし、ほかにもある。もう一個前の『スウィートナイター』(1973)1曲目の「ブギ・ウギ・ワルツ」あたりが、こういったファンキー路線の最初かなあ。しかしアルバム全体で鮮明になったのは、やはり『幻想夜話』からだ。

 

 

その後はポップさも増し、この路線をグングン進んだウェザー・リポートなので、だからたとえばジョー・ザヴィヌルが「バードランド」(『ヘヴィ・ウェザー』)みたいな曲を書いても意外じゃない、とぼくなら思うのだが。ウェザーのばあい、『幻想夜話』『ブラック・マーケット』(1976)『ヘヴィ・ウェザー』(1977)の連続する三作で、ポップ/ファンキー路線のトリロジーだったとぼくはみなしているので、今週から一枚づつとりあげていくつもり。

 

 

『幻想夜話』のばあい、たぶんいちばん有名な曲は B 面トップだった「バディア」だよね。なぜかといえば、その後のライヴでの定番レパートリーとなって実に頻繁に披露され、しかも「ブギ・ウギ・ワルツ」とのメドレーだった。しかし、この「バディア」っていう曲はおもしろいのだろうか?ぼくには退屈だけどなあ。ちなみにウェイン・ショーターは不参加の一曲。

 

 

「バディア」じゃなくて、ウェザー・リポートのメロディ、サウンド、リズムがポップ/ファンキー/タイトになっていったというトリロジー視点からすれば、A 面トップの「マン・イン・ザ・グリーン・シャート」、B 面2曲目の「フリージング・ファイア」がすごくいいっていうことになる。A 面のほかの二曲「ルジタノス」「ビトゥウィーン・ザ・サイズ」も似た傾向の楽曲で、『ブラック・マーケット』以後に近い。

 

 

やはり「マン・イン・ザ・グリーン・シャート」「フリージング・ファイア」の二曲が抜きに出てすばらしく、またカッコよく、しかもかなりダンサブルでポップで楽しいよね。ホントいきなりどうしたんだろうなあ、こんなキャッチーな曲がウェザー・リポートのなかに出てくるなんて、って思っちゃうよね、ずっと聴いてきていたたみなさんなら。

 

 

しかし、ぼく(らの世代)のばあい、こういった路線の「ブラック・マーケット」「バードランド」やなんかから先に聴いている。だからウェザー・リポートとはこういった楽しいバンドなんだなというイメージが最初に焼きついたので、すこし経ってから聴いたデビュー作から『スウィートナイター』あたりまでは、実はいまでもあんまりちょっと…、まあその〜……。『ミステリアス・トラヴェラー』からはなんとかそのねえ〜〜。

 

 

熱帯地上舞踏音楽と繰り返しているが、熱帯と言えないまでも、ラテン・アメリカやアフリカ志向が出てきたおかげでこんな路線に進めたというのが実際のところなんだろう。ジョー・ザヴィヌルとウェイン・ショーターのワールド・ミュージック傾倒がこのころから顕著になってきた。ひとつには1974年にウェインがソロ作『ネイティヴ・ダンサー』をやったのも大きなことだったんだろう。ジョーやウェザー・リポートの音楽に還元された。

 

 

「マン・イン・ザ・グリーン・シャート」を聴いても「フリージング・ファイア」を聴いても、そこにラテン・アメリカン、というかブラジリアン・ミュージック要素、またそれと関係のあるアフロ・ポップ要素などはハッキリ聴きとることができるはず。躍動的で色彩感に満ちている。こんな音楽は、それまでこのバンドはやらなかった。こうなってからのほうがぼくは好きだ。

 

 

「マン・イン・ザ・グリーン・シャート」も「フリージング・ファイア」も、スピーディで迫力満点、グルーヴの疾走感だって強い。しかもタイトでシャープだ。最大の要因はベーシストの全面交代にあったかもしれない。前作『ミステリアス・トラヴェラー』の途中でミロスラフ・ヴィトウスがやめ、アルフォンソ・ジョンスンになった。アルフォンソはファンキーなオスティナートを弾けるひとだから、彼の貢献も大きい。

 

 

ドラマーも『幻想夜話』ではヌドゥグ・レオン・チャンクラー。特に「フリージング・ファイア」ではヌドゥグの活躍が目立つ。1960年代的フリー・ジャズ・ドラミングの痕跡がしばらく残っていたこのバンドから、それをサッパリきれいにこそげ落とし、手数も控え、シンプルでタイトなリズムを叩き出しているよね。

 

 

つまり、リズムもサウンドも整理されたのが『幻想夜話』以後。整理できたので、色彩感はシンプルだけど、より原色を鮮やかに際立たせる方向へと向かえたんじゃないかなと思っている。そう、原色そのままの輝きを表現する 〜 これが1975年からのウェザー・リポート・トリロジーではっきりしている熱帯地上ダンス音楽の目論見だった。

 

 

今日特筆している「マン・イン・ザ・グリーン・シャート」と「フリージング・ファイア」のふたつも、1975年ごろのライヴではよく演奏されたので、公式盤だと2002年の『ライヴ&アンリリースト』の一枚目にどっちも収録されている。それは75年11月のロンドン・ライヴで、ベースはアルフォンソだが、ドラムスがチェスター・トンプスンなのがいいんだよなあ。最高にカッチョイイぞ!

 

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