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2018/08/25

ヴィンテージ・パームワインのお祭りビート 〜 個人メモ

 

 

 

 

 

深沢美樹さんによるエル・スール盤二枚組『パームワイン・ミュージック・オヴ・ガーナ:フロム・パームワイン・ミュージック・トゥ・ギター・バンド・ハイライフ』。ちゃんとしたことはこの CD セットをお買いになって、音をお聴きになって、深沢さんの解説文をお読みいただきたい。それになにかつけくわえることなど、だれにもできない。

 

 

ぼくはぼくなりに、自分用の私的な感想メモを書いておきたい。なにかちょっとは記して残すだけ残しておかないと、自分の気持ちが解決しないという、いまごろになってそういう気分になってきている。書かないと重大な過失になるとかなんとか、そういうしかめ面したシリアスなことじゃない。ただプライヴェイトの楽しみなだけ。手短に。まだお求めでないみなさんには、ぜひこの CD セットを!と強くオススメしておきたい。楽しいですよ。

 

 

ぼくにとって二枚目がより楽しいと感じる『パームワイン・ミュージック・オヴ・ガーナ』。いちばんグッと来る、マジですんごくいい、楽しいのが、ディスク2の冒頭四曲。すべて E.K.’s Band の曲で、5曲目、Kakaiku & His Band の「Ghana Land」もそうだけど、お祭りのお囃子ビートなのだ。ダンサブル。お祭りといっても、ガーナのことをぼくはなにも知らない。日本の夏祭り、盆踊りに近い感覚があるなと思うんだよね。でもパームワイン・ミュージックはダンス用のものではないらしい。

 

 

日本の盆ダンスがラテン・ミュージックに近かったり(ばあいによってはアフリカンだったり)するのと同様に、『パームワイン・ミュージック・オヴ・ガーナ』CD2 冒頭に収録されている E.K.’s Band の音楽にもラテンなリズム・ニュアンスがある。とぼくには聴こえる。E・K・ニヤメ(とK・ジャシなど数名)は、このアンソロジーの、よくわからないがある意味、中心人物なんじゃないだろうか?CD1も含め、そう聴こえる。

 

 

 

CD2の10曲目、K.Gyasi's Band の「Menya Medofopa」もかなりいい。アクースティック・ギターで弾くリズム・パターンが、これまたまるで盆踊り…、ではなく、なにか日本の流行歌で聴ける一定のノリによく似ている。う〜んと、思い出そうとしても具体的な曲名、歌手名があがらないが、ある時期、1970年代前半ごろかな?日本のいわゆるフォーク系歌謡バンドにこういうのがあったと思うなあ。この K・ジャシのもかなりポップで軽く、コミカルですらある。楽しいぞ、このノリが。

 

 

CD2はマジでぜんぶ最高に楽しいんだけど、 F. Micah's Band の二曲、Boateng's Guitar Band の二曲、K.Gyasi's Band の三曲も最高にすばらしいし、23、24曲目の Kakaiku も完璧だ。ダンス・ミュージックとしてつくられ演奏されたたものじゃないのだといくら説かれても、こ〜れは踊っちゃいますよ、ぼくは。愉快でダンサブルだもんね。

 

 

CD2の18曲目、Boateng's Guitar Band の「Nni Awerehow」。これもまた曲全体のノリ具合やエレキ・ギターのカッティングがですね、特に曲後半部かな、なんだかお囃子ビートというか、ギターがジャジャジャッ、ジャジャジャジャ〜って(これでは伝わらん)このカッティング・スタイルは、日本の歌謡曲ファンにもおなじみのものだ。わかりやすく、踊りやすい。

 

 

それに CD2では CD1と比ーべても、ラテン・ミュージック由来の、というかはっきり言えばキューバ音楽から流入したリズム表現がくっきり刻まれていると思う。これはたぶんぼくだけの個人的感想じゃない。聴けばみんなわかることで、解説文で深沢さんもご指摘なさっている。クラーベをクリップ(の音はクラベスのそれにそっくり)がやったり、ボンゴなど打楽器も使われているものが多い。曲のグルーヴ感全体もキューバ音楽っぽいばあいがある。

 

 

こんなところにもキューバ音楽の全世界的で強烈な拡散力を痛感してしまうのが、ヴィンテージ・パームワイン音楽を聴いても持つぼくなりの個人的感慨メモ。だいたいですね、硬い拍子木みたいな音がカンカンとクラーベのパターンをやっていると、どんな音楽だろうと無分別に反応してしまうぼく。つまらない曲だってそれが聴こえるだけで気持ちいいくらいなんだから(そんな麻薬成分があのビート・パターンにはあると思っている)、ましてや深沢さんのベスト・セレクションで聴けるんだから、即、昇天ものの快感だ。

 

 

そんなところから CD1もふりかえると、いちばんグッと来るのがたとえば13曲目、Abaye Blonya の「Okde Nikoi's Band」。解説文で深沢さんも「まるで日本のお祭りのような感じがする」とお書きで、たしかにぼくにもそう聴こえる。夏だけというよりも、秋の獅子舞のお囃子なんかに近い部分もあるかもなあ。

 

 

そんな視点で(日本で言う鳴り物を中心に)聴くと、たとえば4曲目、Kwesi Agyeman Singing Band の「Sapoma」や、9曲目、Kwabina Mensa の「Odonso No, 3」や、それからなんたって10曲目、Boateng の「Moko No Ye Nyon」などがお祭り模様なビート感で楽しいったらありゃしない。

 

 

ところでパームワイン・ミュージックやいろんな音楽と関係ない話題になっちゃうけれど、その CD1、10曲目の Boateng というひとは、CD2 に収録されている同名のひととは別人らしいが、ぼくたちサッカー好きならオオッ!と反応してしまう名前だ。バイエルン・ミュンヘン所属のドイツ代表で世界のトップ・フットボーラーに Jérôme Agyenim Boateng という選手がいる。ジェローム・ボアテングとカナ書き表記されるこの男性は、ガーナ人とドイツ人のハーフ。異母兄弟は同競技のガーナ代表選手。

 

 

関係ない話だった。

 

 

まあとにかくこんな具合で、上で書いたような、日本の夏のお祭りビート、盆踊りグルーヴ、あるいは河内音頭的なノリが、(特にディスク2で、でもディスク1の音源にも内在する)『パームワイン・ミュージック・オヴ・ガーナ』の大きな部分をかたちづくっているように、ぼくには聴こえる。そんなところが、個人的な聴きどころ、楽しみのプライヴェイト・ポイントとして最高地点。

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