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2018/09/01

こ〜れはいい!爽やかでカァ〜ッコイイぞ、ソナ・ジョバーテ!

 

 

とにかくカッコイイ!この一言で終えてしまいたいほどカッコいいソナ・ジョバーテの2011年作『Fasiya』。今2018年になってようやく買えたが、いまのところ、これがソナの唯一のアルバムとのこと。ロンドン生まれのロンドナーだけど、ガンビア系らしい。グルーヴィでタイトなリズムを持つ音楽アルバムだ。自然と身体がスウィングする心地良いリズム。いやあ、これはすばらしいなあ!

 

 

ヴォーカルはもちろんソナ・ジョバーテだが、コラを中心に弦楽器の多くもソナひとりで多重録音。パーカッション類など、ほかにも担当していたりする。全11曲のソングライティングと、全曲とアルバム全体のプロデュースだってソナ自身。アルバム全体でいちばん目立つ楽器はコラの音で、ソナはガンビアのグリオ家系の末裔らしい。このアルバム CD 附属ブックレットの最初のページに祖父、最後に祖母の写真が掲載されている。そして、ソナはコラを弾く西アフリカ系の女性なのだ。

 

 

 

 

イギリス人がイギリスのレーベルから出した作品ということで、ブックレット記載はすべて英語。そこは助かるけれど、掲載されてある歌詞も英語だ。しかし歌っているのは英語じゃない。それも何語(四種類)から訳したと記載があるが、ぼくは聴いても理解できないので、英訳を眺めボンヤリと大意みたいなものを想像しているだけ。まあでもサウンドとリズムだな、このソナ・ジョバーテの『Fasiya』は。オーガニックなテクスチャーも聴きどころで、そこは、いかにも2010年代のブラック・ミュージックといった趣だ。

 

 

しかしこういったオーガニック・アフリカン・ポップは、ずっと前にサリフ・ケイタ(『モフー』、2002)とかユッスー・ンドゥール(『ナッシングズ・イン・ヴェイン』、2002)が先鞭をつけいてたかもなあって思わないでもないんだけど、それでも21世紀型の、なにか違うフィーリングがあるようなないような…、よくわからないんだけど、心地いいことはたしかだ。

 

 

ソナの『Fasiya』は、上で書いたように彼女自身がコラで弾き語るのを曲創りの中心に据えている。各種ギターやベースなども弾いているが、あくまで(グリオの末裔らしく?)コラでやるっていうのがソナのありようなんだろう。曲を書くまず最初もコラを弾きながら考えているかもしれないが、あるいはそこはいまの時代の若手らしく、コンピューターなど使っている可能性があるかも?

 

 

2010年代型オーガニック・サウンドとは、そういうデジタルなメディアを用いての新発想を手づくりの人力演奏アクースティック楽器で表現するという、そういったダブル・プロセスを経ているところにも特色があると思うんだけど。オーガニックとの言葉でくくられるみんなのことを考えてみて。表層的な音のああいう質感の土台には、デジタル・プログラミング的な音の重ねかたがあるような。

 

 

ソナ・ジョバーテの『Fasiya』だって、どこにもコンピューター演奏によるデジタル・サウンドはないけれど、一音一音丁寧に、細部まで厳密・緻密に組み立てられたサウンド・テクスチャーには、かつて20世紀にはあんなデジタル方式な創りかたをしていた音楽を、生演奏する新時代形を読みとることができるかと思う。結果、演奏時にはコラの生演奏を軸にコットン100%みたいなサウンドができあがっている。

 

 

個人的に特にすごくお気に入りなのが、ドラマー(ウェズリー・ジョゼフ)の叩きかたも素晴らしいアップ・ビートなハード・グルーヴ・ナンバー。1曲目「Jarabi」、4「Musow」、5「Fatafina」、7「Bannaya」(これはかなりすごい)あたりかな。いやあ、これらは掛け値なしで正真正銘カッコイイ!!ときおり入る間奏コラ・ソロのめくるめくスピーディなカッコよさ!こんなの、聴いたことないぞ。

 

 

それらも、ソナはガンビアのグリオ末裔でコラ弾き語りということだからトラディショナルな音楽なのか?と思うと、それをベースに置きつつもモダンなリズム・セクションを縦横に活用しながら、かなりファンキーかつ爽やかに、あるいは言ってしまえばアメリカン・ファンク・ミュージックに通じるものだって感じとれそうなほどグルーヴ重視型でノリ一発の音楽に仕上がっている。しかしヴァイオレンスはない。あくまでデリケートな肌触りがあるのがとてもいい。

 

 

それらとすこし違うタイプの曲だって、たぶんソナのアルバム『Fasiya』のものはぜんぶいいんだ。ゆったりめだけどビートの効いている2曲目「Mamamuso」、フルートがいい効果を出すバラード調の3「Saya」、コラなしだけど完全にソナひとりですべての音を組み立てた6「Mamake」での、じっくり聴かせる落ち着きとしっとり感。

 

 

リティ(一弦の擦弦リュート)以外はこれまたソナひとりの多重録音である8曲目「Gainaako」では、ソナの一人多重コーラスのポリフォニーも見事。リティも含め楽器の出すリズムは典型的なハチロク(6/8拍子)で、これは10「Mali Ni Ce」、11「Fasiya」でも同じ。アフリカン・ミュージックではありきたりなポリリズムかもしれないが。9「Suma」も、バラフォン奏者以外はぜんぶソナだ。ヴォーカルにも力が入っている。

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