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2018/09/03

オーガニック・アフロ・ポップの走り?(2)〜 ユッスー篇

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こっちも2002年リリースのユッスー・ンドゥール『ナッシングズ・イン・ヴェイン』。英語のアルバム題は、たぶん『アイズ・オープン』(1992)以来なんだっけ?そっちと同様にこのオーガニック・テクスチャーな2002年盤のほうもワールド・マーケットを意識したということかな。リリースに際しての契約関係のことをぜんぜん知らないが、音楽内容として『アイズ・オープン』に相通ずる部分と、そうでない部分とがある。

 

 

簡単に結論から言ってしまうと、ぼくは高く評価している『アイズ・オープン』の音楽の、外へ向いた開放性というか、アフリカに根ざしつつ、というかそれがあるからこそ世界にアピールしているという強いメッセージ性、前向きなサウンドの肯定感は、『ナッシングズ・イン・ヴェイン』の全体をも貫いている。ここは、たぶん、ユッスーという音楽家の一貫して変わらぬ信念なのだろう。

 

 

でも、サウンドの質感はもちろんかなり異なっている。『セット』『アイズ・オープン』を代表作とするような、電気・電子楽器をにぎやかで派手に使って声を張る躍動感に満ちたハイ・テンションぶりは、『ナッシングズ・イン・ヴェイン』では影を潜め、代わって落ち着いて耳あたりやわらかめなアクースティック・サウンドが中心になっているよね。

 

 

ユッスーの『ナッシングズ・イン・ヴェイン』で目立つ楽器の音は、主にコラだ。それとリティやアクースティック・ギター、くわえてパーカッション群などが中心になってアルバムのサウンドを織っている。バラフォンもけっこう聴こえる。それらとバック・コーラスと主役男性ヴォーカリストの声が自然と混ざり合っている。

 

 

でもサリフの『Moffou』で感じる一種の哀感というか、ちょっとこう、諦観?みたいなものなのか?そこまでのものじゃなくても、ちょっぴりロー・ダウンなフィーリングが、ユッスーの『ナッシングズ・イン・ヴェイン』にはない。もっと明るく、やはり跳ねている。これは音楽家としてのキャリアの違いか、スタンスとかアティテュードの違いか、ぼくにはわからない。

 

 

サリフの『Moffou』ではいっさい使われていないいわゆるドラム・セットもユッスーの『ナッシングズ・イン・ヴェイン』ではどんどん使われている。さらに二つの曲でコンピューター・プログラミングもクレジットされているし、鍵盤シンセサイザーの音みたいなものだってかなりたくさん聴こえる。

 

 

それらもぜんぶひっくるめた上で、それでもなお、ユッスーの『ナッシングズ・イン・ヴェイン』のサウンドはオーガニックだと聴こえるんだよね。石油から精製したような製品ではない、有機的な「ナマの」感触がある。なんだかんだ言ってやっぱりアクースティク楽器演奏が中心になっているし、電気・電子楽器などの音も、人間の息吹を感じるような生命感、肉体感を持っているよね。

 

 

アルバム・ラストの曲「アフリカ、ドリーム・アゲン」は、まあいつものユッスー節だなという曲題と内容で、しかもデジタル・サウンド・メイクが中心になっているようだけど、『アイズ・オープン』で聴けた、たとえば「ニュー・アフリカ」「ザ・セイム」などと同主題でありながら、伴奏サウンドもユッスーのヴォーカルも落ち着きと静けさを増し、音楽(家)の成熟を感じる内容だ。心地良い有機質感で聴き手の心にやさしく触れるから、いっそう深い感動を得ることができる。

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